2004年 10月16日の放送
< 1 >
最後に、中国による柔軟な為替制度の導入に関しては、米国では、数年以内にそれが実施されることを期待している向きが多かった。これは、おそらく、culture gapの産物であろう。すなわち、アジアの政府高官が、時間軸を限定せずに何らかの政策の実施について努力するとか、検討するとか、調査するというときは、少なくとも数年間は実施する意思はないことを意味するのに対して、米国人は、数年以内に実施されると期待するのである。1980年代の日米貿易交渉においても、このculture gapに起因する誤解がたびたび生じ、それが政治的な摩擦に繋がったことは記憶に新しい。
< 2 >
第二に、原油価格に関しては、まず、現状の価格水準を正当化するために、需給見通しを修正する動き(mark to the market)がみられた。すなわち、それまでは、潜在的な需給見通しから判断すると1バレル=35ドル前後がフェア・バリューであり、1バレル=40ドル以上の価格水準は極めて投機的であるとい説明がコンセンサスであったが、原油価格が50ドル超に上昇したことを受けて、それを正当化するために、潜在的な原油需給はそれまで考えられていたものより逼迫しているという趣旨の説明修正がなされていた。
したがって、原油価格は今後も高止まりするというのが彼らの間のコンセンサスに思えた。ただ、彼らの多くは、原油価格の上昇が米国経済に与える悪影響を比較的軽微なものとみていることが強く印象に残った。
< 3 >
第三に、これは、今回の出張において、私の最大の驚きであったのであるが、GDP比で年率6%に迫る米国の経常収支は長期的に維持不可能であり、したがって、米国経済にとって問題であり、しかも、ドルの下落が経常収支赤字の削減にある程度寄与すると主張する人々があまりにも多かった。これは、米国の政策担当者やその周辺の人たちの間に、弾力性セオリーが明らかに復活した証拠であり、したがって、まさに、Back to the 1980s現象と呼ぶことが出来よう。換言すれば、経常収支赤字の削減は、米国の内需成長率の引き下げという痛みを伴うものではなく、価格調整(為替レート)で行うべきとの考え方である。
< 4 >
最後に、中国による柔軟な為替制度の導入に関しては、米国では、数年以内にそれが実施されることを期待している向きが多かった。これは、おそらく、culture gapの産物であろう。すなわち、アジアの政府高官が、時間軸を限定せずに何らかの政策の実施について努力するとか、検討するとか、調査するというときは、少なくとも数年間は実施する意思はないことを意味するのに対して、米国人は、数年以内に実施されると期待するのである。1980年代の日米貿易交渉においても、このculture gapに起因する誤解がたびたび生じ、それが政治的な摩擦に繋がったことは記憶に新しい。
< 5 >
外為市場では、先週金曜日の雇用統計発表以降、米国経済に対するネガティブな見方に支えられたドル安観と、原油価格上昇に伴う円安観が交錯し、ドル円相場はこう着状態を継続している。また、11月2日の米大統領選挙では、ブッシュ、ケリーともほぼ互角な戦いとなっており、どちらが勝ってもおかしくない。そのような中、少なくとも、大統領選挙までは、レンジ相場が維持されるとみている。来週のレンジは、1ドル=108円から111円。GSEC指数もちょうど50.0%と、ディーラー達の見方も中立となっている。