2004年 2月7日の放送

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  金曜日にひさびさ106円台をつけたドル円だが、需給では相変わらずドル売り円買いが根強い展開となっている。上は昨年1月から11月までの経常収支と資本収支の推移。承知のように、従来の“資本輸出国”日本の姿は消え、いまや経常黒字も資本収支も黒字という異常事態となっている。このような事態がいつまで続くかは不明だが、当局がほぼ毎日ドル買い介入を続けざるをえない背景のひとつになっているのは間違いないようだ。

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  資本収支が流入超になっている理由としては、「外人投資家が日本株を買っているから」というのが一般の定説になっている。これは本当であろうか。上は資本収支のなかの「証券投資」と「その他投資」の流出入を見たもの(ほかに直接投資もあるが、こちらは2000億円前後の“流出超”で最近は比較的安定的な動きとなっている)。見ると証券投資における流入超はそれほど多くなく、1月から11月までの累計では、実は11.1兆円の“流出超”になっている。つまり非居住者の対内投資より、日本の投資家が海外の株や債券を買う資金のほうが多く出ているということだ。では「その他投資」はどうか。 1月から11月までの累計を見ると、なんと19.8兆円の流入超となっており、実はこっちのほうがはるかに資本収支の流入超に大きな影響を与えていることがわかる。その他投資の項目でもっとも変動の激しいのが短期の貸付・借入取引動向。短期の資本取引が全体の資本収支の動向に大きな影響を与えている。

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  結局、これらの2つの黒字は国際収支上は外貨準備増減で全て調整されるわけだが、上のグラフにあるように1〜11月で累計19.2兆円の流出超が見られている。一ヶ月平均1.7兆円の計算だ。だが現状のようなハイペースでの介入は決して“sustainable”ではなく、いずれ財務省も撤退せざるを得ない時期を迎えることになるだろう。

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  財務省のEXIT戦略はふたつある。ひとつはこのまま介入を続けているうちに、ドルの需給に変化が芽生え始め、自然にドル高円安方向に市場の流れが変わるというものである。これが当局にとってもっとも望ましいものであることに疑いはない。もうひとつは、いったん介入を中止し、市場が円高に振れるのを許容すると言うものである。この場合は一時的に100円割れを示現する可能性も高いが、ある程度自然な動きを与えることで、市場が自発的にドル買い円売りに反転する可能性を高めることができると言えよう。そして市場の潮目が変わったときに再度市場に参入、ドルの押し上げ介入を行う、というものである。長期的に介入をワークさせるには、戦略2も有効なオプションと思われるが、当面はやれる所まで介入を続けるというのが当局の戦略のようだ。

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  ドル円は静かな取引が続くなか、3日には海外勢によるドル売り円買いが活発化したことから、一時105年25銭近辺までドル安円高が進んだ。しかし当局は1兆円と見られる積極的な円売り介入を実施、その後は投機筋の損失覚悟のドル買い戻しもあり、現在は106円近辺での推移となっている。中長期的にはドル安トレンドは不変と見られるが、短期的にはドルの戻り高値を試す展開もありそうだ。ヘッジファンドを中心に105円から下の水準ではドル買戻し意欲も強いと見られていること、当局の積極介入姿勢に大きな変化は今のところないこと、等を勘案すると、107〜108円程度までドルが買い進まれる展開も見られるかもしれない。
 G-SECインデックス速報は55.6とひさしぶりにドル高円安派が優勢。