2004年 1月3日の放送

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  昨年は株式下落が春に底を打ち、米国の驚異的な景気回復に引っ張られて他国の景況感も大きく改善した1年であったとも言えるが、今後の経済見通しはどうか。上は昨年11月にOECDが発表した国別の経済見通し。2004年の見通しを見ると、米国は4.2%(昨年は2.9%)、日本が1.8%(同2.7%)、イギリスが2.7%(1.9%)、ドイツが1.4%(0.0%)となっており、日本を除いてはそれぞれ前年より若干成長率が高まると予想されている。米国については経済見通しそのものは楽観的なトーンとなっており、今後製品・労働需給が改善してくれば利上げが必要、と述べている。また政府赤字がかなり悪化している点に言及、今後是正に向け政策を調整する必要があるとしている。

  日本は03年、04年ともに1年前の予測に比べ、1%ポイントほど上方修正された。しかし景気の“持続性(”Sustenability”)については懐疑的。円高や悪化する財政がリスク要因として挙げられている。ドイツは足元景気は良くないが、景気先行指標が改善していることを評価している。もっとも問題がなさそうなのがイギリス。いまや経済成長は潜在成長率に近い水準にまで来ているとし、“住宅(バブル)が不安定要因として降りかかる事態を避けられれば、潜在成長率を上回ることも可能”と言う。

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  国内の民間シンクタンクはどう見ているのであろうか。上は13機関の今年度および来年度の実質経済成長率見通しである。今年度については実質で2%〜2.4%の予想ゾーンが6機関あり、もっとも多くなっている。1年前の当番組で紹介した際、03年度の実質経済成長率見通しはほとんどが0〜0.5%のゾーンに集中していたから、今年度は予想を2%ポイントほど上回ったことになる。原動力は外人による日本株買いが景況感を大きく改善したことと、米国やアジア向けの輸出が好調だったことであろうか。来年度を見ると、現在のような好調さが持続されるとの見方が強く、予想は大体2%近辺に集中している。各社のレポートを見ると、「海外景気のテンポが予想以上」とか「企業の投資マインドが予想以上」と言った声が多い。ただし好調な業種がハイテクや輸出企業等一部のセクターに集中していることから、やや慎重にはなっている。また公共投資による景気刺激も期待されていない。円高進行や年度後半の米景気失速懸念等も考慮して、来年度は今年度より若干景気成長が鈍ると見ているようだ。

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  実質GDP成長率はまずまずといった感じだが、名目成長率の予想を見ると印象は一変する。今年度のみならず、来年度についてもデフレ傾向は続くとの見方が圧倒的に多い。「デフレ脱却は容易ではない」「需給ギャップはやや縮小しても解消にはほど遠い」「最近の物価下落幅の減少は一時的要因によるもの」と言った表現が各機関のレポートで目に付く。10月のコアの消費者物価指数は前年比プラスとなったが、「医療費自己負担割合の引上げやたばこ・発泡酒の増税、足元では冷夏による米価の上昇といった特殊要因」(UFJ総合研究所)といった見方が強く、景気回復に伴う物価上昇を予想するところはあまりない。どうやら今年も「物価は下落、実質はプラス」と言った基本的傾向は変わりそうもない。

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  市場参加者が予想する今年のドル円のレンジはどれくらいか。上のグラフは東京やロンドンなどで為替取引に携わる関係者23名にアンケートしたもので、緑色のグラフは円高に動いた場合の下限目処を、オレンジのグラフは円安に振れた場合の上限目処を示している。円高の下限目処は85円から105円台まで幅広い分布となっているが、中心は95円から99円の領域にある(平均値は97円91銭)。財務省による介入は予期されているものの、ゆるやかな円高トレンドは続くとの見方が多い。

  一方、円安に振れた場合の上限目処は105円から125円に渡り分布しているが、おおむね115円から120円の領域が円安の上限目処となっている(平均値は117円61銭)。昨年の円高は9月のドバイG7で鍵となる115円を切って加速された感があり、市場参加者は115円をかなり強く意識している。115円を下回った水準で推移する限り、円高圧力は続いてると見ておいたほうが良さそうだ。