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2003年 6月14日の放送
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11日、米FRBはベージュブック(地区連銀経済報告)を発表した。注目のヘッドラインは「Conditions remained sluggish in most Districts」で、まだ景気は弱いといったトーンである。イラク戦争終結が消費者のコンフィデンスを改善するとの期待もあったが、効果は今のところ「not dramatic」だと言う。他の内容はほぼ予想通りで、まず個人消費については「soft」と表現。多くの地区で小売売上高は前年比マイナスだったが、見通しについては「cautiously optimistic」としている。製造業・サービス業共に全般にまだら(mixed)模様。ただし、居住用不動産の販売や建設は相変わらず好調で、地区によっては売上げが前年比10%増とか、「前例のないレベル」で売れ行き好調だという。このため銀行の貸出しは住宅ローンの借換えが中心。今のところ貸倒れ率に大きな変化はないようだ。労働市場に改善は見られず、レイオフの動きはまだ続いており、企業は新規雇用に慎重という。このため賃金に上昇圧力は見られない。物価全般の動きはまちまちで、インフレもデフレもない状態が続いてるという。
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ベージュブックはサプライズのない内容だったが、市場は今月のFOMCでグリーンスパン議長からの“みやげ物”を期待している。現状のフェデラルファンド(FF)金利は1.25%であり、もし今月50BPの利下げがあれば、いよいよ0%台突入となるが、25BPの利下げに止まるとの観測も根強い。だが、先物の世界ではもはや0%台の金利は当たり前になってきている。上はCBOTが上場しているFF金利先物の9月限推移。9月限ということは、“今年9月のFF金利は、月間平均にして何%で推移するか”に対する予想を示している。グリーンスパンのデフレ懸念発言を受け、5月20日にいったん0.925%まで低下したものの、その後しばらく1%前後で推移していた。しかし、今月3日から恒常的に1%を下回るようになり、12日は0.835%で引けている。市場はとっくに0%台の金利到来を確信しているのだ。たとえ今月の利下げ幅が25BPでも、“8月12日と9月16日のFOMCがあるさ”ということか。
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景気低迷をうたうベージュブックの中でも、唯一好調ぶりを報告されているのが居住用不動産業界(注:商業用不動産は不振が続いている)。その屋台骨を支えているのが、ファニーメイ(連邦抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅金融抵当公社)の2兄弟である。ファニーメイは1938年に政府機関として設立、その後1970年に民営化された株式会社であり、フレディマックは1970年に米国議会によって設立された株式会社。米国の住宅モーゲージ(不動産担保ローン)資産の2割はこの2機関によって保有されている。
2兄弟のうちの弟分にあたる、フレディマックの株価が9日に急落した。総裁兼COO(最高業務責任者)の解雇、会長兼CEO(最高経営責任者)の退任、さらにCFO(最高財務責任者)の辞職と、最高職の3ポスト全てを事実上更迭したことが原因。同社は監査法人が新しくプライスウォーターハウスクーパーズに替わったことを受け、今年1月に過去3年間の決算修正を行う方針を発表していた。しかしその過程で重要書類の提出などで“不適切な行為”があったとされており、これが今回の更迭劇につながった模様だ。
今のところ市場関係者の反応は冷静。新経営陣の評価が高いことや、格付け会社が長期無担保債務についてトリプルAの格付けを確認したことも事態の沈静化に貢献している。だがこの2兄弟の財務内容をめぐり、以前から情報開示が不十分との指摘があり、本件の処置を持ってこの巨大金融機関の問題が落着するとは到底考えにくい。
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2兄弟金融機関の特徴は、その異常な負債構造にある。上の図は、フレディマックの2001年アニュアルレポートに掲載された連結ベースのバランスシート。2001年現在で総資産額は6173億ドル(約73兆円)あり、この5年間で3倍に急増している。資産の大半はモーゲージ証券の保証であるが、それを可能にしているのが大量の債券発行による資金調達で、現在6000億ドルほど(約71兆円)ある。株主資本として掲載されている金額はわずか153億ドル、総資産の2.5%に過ぎず、ヘッジファンドもびっくりのレバレッジ構造だ。このような資金調達を可能にしているのが、組織としての高い信用力と、米国債より若干高い債券金利である。兄貴分であるファニーメイは、この5年間で債券発行を倍増させ、現在8000億ドル近い残高(円換算でほとんど100兆円!)がある。そしてその債券は、まさに世界中の機関投資家がこぞって購入していると言ってよい。中央銀行やファンドマネジャー、銀行に保険会社、州政府や地方自治体だって買っている。日本の機関投資家も例外ではない。
“米国の住宅はバブルだ”と、マスコミを含め日本人はよく指摘する。だが、その一端を担っているのは日本の貯蓄でもあるのだ。そして、バブルなのは米国の住宅価格ではなく、その裏にある、投資家の “熱狂的なファニーメイやフレディマックの債券買い”であることを認識した方が良い。
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6日(金)の海外市場は117円台後半で寄付き後、発表された5月の米雇用統計が予想より良い内容だったことからドル買いが進み、118円65銭で越週した。9日(月)の東京市場は118円台後半でオープン。日経平均が堅調なことなどからドル売り円買いが進み、ドルは118円台半ばへ下落した。海外では、フレディマックの不正会計疑惑にドル売り優勢となり、118円25銭で引けた。10日(火)の東京市場は118円を挟んだ小動き。海外はユーロ売り円買いの動きが出たため、ドルは対円で値を下げ、117円75銭で引けた。
11日(水)の東京市場は117円台後半で動意の薄い展開。海外市場も同レベルで引けた。12日(木)の東京市場は、スノー財務長官がTV番組のインタビューで、最近のドル下落に特に懸念を見せなかったことから、ややドルの頭の重い展開となった。海外でも117円台での取引が中心となった。13日(金)の東京市場は117円台後半でのもみ合いとなっている。
ドル円は動意の薄い展開が続いている。財務省の過去に例を見ない大口の円売り介入の割りには、ドルの頭が重い。が、円高地合いでは介入が予想されるため、市場は積極的なドル売りを控え様子見を決め込んでいる。しばらくは上記レンジ内での活気のない相場が続きそうだ。
G-SECインデックス速報は66.7となり、かなり円安センチメントが強い。強力な介入を受け、117円を割り込むのは難しいと見ているようだ。
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