2003年 5月10日の放送

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  今週の為替市場は荒れたが、ユーロの強さを再確認する週でもあった。上のグラフは、イングランド銀行が発表している米ドルとユーロの実効為替レート(=ある国の通貨について、関係の深い複数の貿易相手国との為替相場をその貿易量で加重平均して算出したレート)の今年1月からの推移(1月2日=100)。この4ヶ月ほどで米ドルは6.7%下落したが、ユーロは逆に6.9%上昇した。財政赤字と貿易赤字が巨額なため、ドル安懸念を市場が払拭し切れないことや、ドルからユーロへの国際的なポートフォリオシフトの動きがユーロ買いを加速しているようだ。

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  金利面からの影響も大きい。6日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)のミーティングでは、FRBは政策金利を据え置いたものの、当面の政策運営姿勢を「景気重視型」とすることを発表、市場では利下げ期待が高まり、ドル売り材料となった。
  さらに、この声明でFEDが将来的なデフレリスクに言及したことは注目される。景気判断については、やや楽観的な見通しを示しているにもかかわらず、FRBはインフレ見通しにわざわざ言及、「すでに物価は充分下落しているにもかかわらず、インフレ率が今後さらに大幅下落するという、好ましくない可能性が残っている」と述べている。これは明らかに米国がデフレ入りすることへの警戒感を示したものであり、もしその懸念が表面化すれば、当然通貨安誘導というオプションも将来的視野に入って来る。このことも潜在的なドル売り要因となるだろう。

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  一方欧州中央銀行(ECB)の理事会も行われたが、予想通り金利据え置きとなった。為替市場では利下げを警戒していたため、ユーロは弱含みで推移していたものの、理事会後はユーロが急騰、再び1ユーロ=1.15ドル台へ乗せる展開となった。しかしドイツをはじめ、欧州の景気が米国より悪化しているのは明らかであり、市場では6月頃には利下げが実施されるとの見方が支配的になっている。このため、中長期を中心に欧州金利は低下トレンドが続いている。

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  国際的なポートフォリオシフトの観点から見ると、今後注目されるのはオイルマネーの行方であろう。イラク攻撃を短期で終結させた米国は、現在シリアへの圧力を強めている。中東では“Who is next?”を警戒する動きが高まっており、これは米国からの資金流出を加速させる要因となろう。今後はオイルマネーの流出が一段のドル安圧力となる可能性がある。上のグラフは最近7年間のOPEC諸国の対米投資収支動向(=OPEC諸国による米国への直接投資、証券投資などの合計)。ITバブルの影響もあり、2000年は300億ドルのカネが米国に流入したが、2001年以降は2年連続して流出超となっている。特に増加しているのが公的部門で(=オレンジ色の棒グラフ)、2002年は81億ドルの流出超だったが、これは前年の17億ドルの流出超から5倍近い増加となっている。
  デフレを警戒して金利を低位安定させたいFRBだが、米国は日本と異なり世界最大の債務国。通貨安誘導は金利上昇を招きかねず、グリーンスパン議長の舵取りは一段と難しくなっている。

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  2日(金)の海外市場は118円台後半の動きだったが、米雇用統計での非農業部門雇用者増加数が予想ほど減少しなかったことを理由にドルが買い進まれ、119円台にのせて越週した。
  5日(月)の東京市場とロンドン市場は休場。NY市場では118円台後半での静かな動きとなった。
  6日(火)の東京市場は118円台半ばで取引が始まったが、その後は118円台半ば近辺で動意の薄い展開。海外でも静かな動きとなっていたが、引け際に米銀からドル売り円買いが入り、117円50銭での引けとなった。
  7日(水)の東京市場は117円台半ばでオープン、その後は同レベルでのもみ合いが続いた。しかし海外に入ると、本邦勢のユーロ売り円買いが活発となり、また米銀のドル売り円買いも加わって、ドルは116円07銭まで下落する展開となった。引けは116円45銭。
  8日(木)の東京市場は116円台半ばでの神経質なもみ合いとなった。海外では、ECBが金利据え置きを決めたためユーロ買いドル売りが活発化、ドルは対円でも116円割れ寸前まで値を下げたが、覆面介入と見られる大量のドル買いによりドルは反発、結局117円05銭で引けた。
  9日(金)の東京市場は、117円台前半でのもみ合いとなっている。
  ドルは対円で明らかに値を下げたがっているが、当局はこれまで以上に積極的な覆面介入を行っていると見られ、ドル円は116円割れ寸前で踏みとどまった。投機筋はこれを見てドル買いを優先させようが、119円より上のレベルでは実需のドル売りが持ち込まれるだろうから、ドルの本格的な反発は難しいと思われる。当面は上記レンジでの神経質なもみ合いが続こう。
  G-SECインデックス速報は60.0と上昇。相場観は交錯しているが、覆面介入と思われるドル買いの動きを受け、円安予想が支配的。