2003年 2月8日の放送

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  日本経済はなかなか出口の見えない茨の道が続いている。上は今週発表された指標のうち、ふたつを取り上げたもの。日銀がコントロールするマネタリーベース(民間部門の保有する現金と民間金融機関の日銀預け金の合計)は日銀が積極的な量的緩和に踏み切った2001年暮れから大きく増加に転じ、昨年4月には前年比36%の伸びを記録するにまで至った。しかしその後は90兆円前後で落ち着くようになり、伸び率は徐々に低下してきている。景気の現状を示す景気一致指数(0から100の間で動き、50を下回ると景気が下向きであると解釈される)も昨年5月に100でピークを打ち、特に11月と12月はそれぞれ30.0、44.4と低迷している。鉱工業生産指数や百貨店販売額、中小企業売上高(製造業)などの指標が減少に転じていることが要因。ほかにも、7日に総務省が発表した12月の家計調査によると、全世帯の消費支出額(実質)は前年同月比マイナス0.8%となり、2ヶ月連続で減少している。マクロの指標では、なかなか良いものが出ていない。

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  だが街に出ると、高級店が人で一杯になっている光景も良く見かける。一流ホテルのレストランなども、昼は女性客を中心に賑わっている。マクロの指標は決して良くないが、ミクロ面では、景気が悪いと言われる割りには、首を傾げたくなる現象も多い。上に示したルイ・ヴィトンの売上げもそのひとつ。最近5年間のLVジャパンの売上はウナギのぼり状態で、あの金融危機の起きた98年から売上げは8割近くも伸びている。企業が苦しんでいる割りには、個人は比較的元気な状態が続いているとも言える。

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  だが肝心の株式市場はマクロ指標に反応しやすいため、この1年さっぱり上がらない状態が続いてる。昨年初こそ空売り規制で盛り上がったものの、逆に規制の強化で市場は活気を失いつつある。慣れとは恐ろしいもので、一時は9000円割れで大騒ぎとなった株価も、最近ではすっかり8000円台に安住、あまりニュースにもならなくなってしまった。

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  為替の方もすっかり120円前後のレンジで落ち着いている。117円台のドル買いが異常に強いことが為替ディーラーの間で注目されていたが、先月31日、ついに当局が覆面介入したことが判明した。介入は1月24日と27日の2回に分けて行われたと見られており、金額は7000億弱と小規模。しかし当局の以外な手法に市場は一段のドル売りに慎重になりつつあり、とりあえず溝口新財務官のデビュー戦は成功したと言えよう。また、このところの国内金利の大幅低下もドル買い円売りを誘っており、機関投資家や個人の海外債券投資が活発化していると言う。

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  31日(金)の海外市場は119円台前半で取引開始後、財務省が覆面介入を明かしたことなどにより、総じてドル堅調の展開となり、結局119円90銭で越週した。3日(月)の東京市場は119円89銭でオープン、前週末に発表された日銀の覆面介入などを材料にドル買い円売りが進み、一時121円近辺までドルは上昇した。しかし海外では、米ISM景気指数が一部の予想を下回ったためドル売りが優勢となり、120円台前半に軟化して引けた。4日(火)の東京市場は120円28銭で寄付き後、120円を挟んだ小動きが続いた。海外では米株の下落を受けユーロ買いドル売りが進んだため、円も連れ高となり、119円70銭で引けた。5日(水)の東京市場は119円80銭でオープン後、パウエル国務長官による国連安保理事会出席を控えドル売りが先行し、ドルは119円台前半に下落した。海外では、大口のユーロ売りドル買いが出たことによりドルは対円でも堅調な展開となり、120円05銭で引けた。6日(木)の東京市場は120円18銭で寄付き後、あまり動意なく、120円を挟んだ動きが続いた。海外では、対ユーロでのドル売りの影響を受けやや円高が進み、119円台の取引が中心となった。7日(金)の東京市場も119円台での静かな動きとなっている。
 弱含みに推移する世界株価動向、不透明なイラクや北朝鮮情勢、拡大する米国の双子の赤字等、材料はあるものの、どれもある程度折込み済みでドル円は動きにくい展開が続いている。特に意表をついた覆面介入の実施で、ドルは売り込みにくくなっている。しばらくはレンジ相場継続か。
 介入効果で、市場では一段の円高を見込む向きはなくなった。ほとんどがレンジ内の動きを想定。