2002年 7月6日の放送

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株価下落で揺れる米国市場だが、発表されるマクロの経済指標はそれほど悪くない。上は米供給管理協会(ISM)が発表した米製造業と非製造業それぞれの景気指数(季節調整済み)。7月の製造業景気指数は56.2となり、生産活動の拡大・縮小の分かれ目となる50を5ヶ月連続で上回った。内訳では、生産状況を示す生産指数が61.4と99年6月以来の高水準を記録、指数全体の改善に貢献した。新規受注指数も60.8で高水準を保っている。

非製造業の景気指数は57.2となり、こちらも分岐点である50を5ヶ月連続で上回った。ISMによると、非製造業全体のトーンは一言で言うと“cautiously optimistic”とのこと。

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また、住宅も好調だ。上は新築住宅販売と中古住宅販売の戸数推移(いずれも季節調整済み年率換算)。5月の新築住宅販売は前月比プラス8.1%の102万8000戸となり、過去最高を記録した。昨年の新築一戸建て住宅販売は90万8000戸で過去最高だったが、今年はそれを上回るベースだと言う。中古住宅販売も好調である。5月は575万戸(季節調整済み年率換算)で、月間としては過去4番目の水準となった。

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しかし、個別企業動向(ミクロ)は見かけ(マクロ)とはやや状況が異なっている。上は、NYダウ工業株30種の企業株価推移。この3ヶ月間で、30企業中株価が上昇したのは、3社(インターナショナル・ペーパー、コカコーラ、3M)のみ。あとは軒並みマイナスである。上の表は下落率トップ5を並べたもの。インテルは4-6月期の売上高予想を下方修正したことが原因。欧州でのパソコン向け半導体需要が落ち込んだことが理由という。AT&Tは、1ー3月期の純損益が9億7500万ドルの赤字となっている。競争激化に伴う採算の悪化、会計基準変更を受けた償却費計上の拡大などが背景。IBMは、米系証券アナリストが、売上高が低迷しているため第2四半期の業績見通しを下方修正した。GE(ゼネラル・エレクトリック)は、1-3月期決算によると、会計基準変更に伴う資産償却額の拡大を反映し、純利益は前年同期比マイナス2.7%と、1994年第4四半期以来の減益となった。マクロ経済指標が好調だったため、同社への投資家の期待が高かっただけに失望売りを誘った。シティバンクは、ワールドコム向け債権回収懸念が背景。粉飾決算を明らかにしたワールドコムは、45億ドルにのぼる銀行融資を返済できないとの懸念が広がったもの。

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マクロ経済指標は堅調だが、個々の企業はまだまだリストラに励むところも増えそうだ。今後注目されるのは家計部門だ。上はFRBが発表している、四半期毎の家計における債務負担比率(可処分所得に占める、消費者ローンと住宅ローン支払いの合計比率)。80年以降の推移を見ると、直近(2002年第1四半期)は14.05%となっており、86年当時のピークとほぼ肩を並べる高さとなっている。今後、株価の下落等で米国経済のデフレ化が進むと、家計の実質債務負担は大きく膨らむ。その場合は、GDPの3分の2を占める個人消費に深刻な影響が出てくることが懸念される。

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28日(金)の海外市場は、米会計不信を背景に一時118円台前半までドルは売られた。しかし、日銀が欧米当局を通じて委託介入を実施したためドルは急騰、120円台40銭近辺までドルは買い戻された。その後は本邦輸出企業や、海外投機筋からドル売りが持ち込まれ、結局119円50銭で越週した。1日(月)の東京市場では、日銀短観が改善したことで、円買いが優勢の展開となった。119円26銭までドルは売られたが、その後は介入警戒感からドルは下げ止まった。海外では、ISM製造業景況指数が予想より良かったが、反応は限定的。119円台での取引が続いた。2日(火)も東京市場では119円台での膠着が続いた。海外では、投機筋からのドル買いに120円75銭まで上伸。しかしその後は利益確定のドル売りなどが出てドルは値を下げ、119円90銭で引けた。

3日(水)は4日の米独立記念日を控え、小動き。海外ではショートカバーの動きに一時120円台に乗せたが、ISM非製造業景況指数が予想より下回ったことでドル売りが強まり、結局119円80銭で引けた。4日(木)の東京市場は、119円台後半でのもみ合い。ドルが対ユーロで買われたことから、対円でも堅調な展開となり、120円台前半までドルは上昇して引けた。海外はNYが休場のため、120円前後での小動きとなった。5日(金)の東京市場では、4日の米独立記念日を過ぎたことでテロ懸念が後退し、ドルは堅調に推移している。

委託とはいえ、28日(金)の海外市場で欧米当局によるドル円介入が行われたことで、いったんドル円は下げ止まった。しばらくは120円をはさんだ神経質な動きが続こう。米ドルの悪材料はかなり折り込んでおり、目先はドルが値を戻しやすいとの指摘もあるが、市場は巨額な米経常収支赤字を重視しており、ドル安調整の動きはまだ続こう。

G-SECドル円指数(5日、速報値)は47.1となり、前回とほぼ同じ水準。中立を示す50を下まわっており、やや円高を見込む向きが優勢となっている。