2002年 5月25日の放送

< 1 >

  130円を切って以来、財務省からの円高懸念発言は頻繁に続いていたが、22日についにドル買い円売り介入に踏み切った。介入規模は約30億ドルと言われている。翌日の23日も124円を割り込む水準から介入を行っており、どうやら124円が金融当局のマジノラインとなっているようだ。介入後の当局者発言は上のとおり。とりわけ円高の動きが急ピッチで続いた点について、当局は不満だった模様。塩川大臣は「急激な円高は迷惑」とはっきり述べている。
  当局関係者はいずれも、今後も市場を注視していくと述べており、当面は124円以下の円高を阻止する姿勢を見せている。

< 2 >

  円高要因のひとつが、日本の貿易黒字の増加。上のグラフは通関ベースの貿易バランス(黒字額)の推移。23日に発表された4月の貿易黒字は8367億円となり、前年同月比でプラス26.6%の増加となった。貿易黒字は米景気減速などの影響で、 2000年6月以来最近まで前年同月比でマイナスが続いていたが、今年3月に21ヶ月ぶりにプラスに転じた(3月はプラス39.5%)。
  このところのドルの頭の重さは、本邦輸出企業を中心としたドル売りによるところが大きく、当面は円高に振れやすい地合いが続きそうだ。

< 3 >

  またモノの輸出による円買いだけでなく、海外投資家からの証券投資も今月に入り活発化している。上のグラフは、財務省が毎週発表する対内及び対外証券投資の状況(週間・約定ベース)。5月13日~17日の週は、対内証券投資(外人投資家による国内株式・債券投資)が5416億円の買い越しとなる一方(うち株式が3592億円、債券が1824億円それぞれ買い越し)、対外証券投資(国内投資家による対外株式・債券投資)は2157億円の買い越しにとどまったため(うち株式1903億円、債券254億円)、ネット(対内外合計)では3259億円の流入超となっている。
  今年度以降の資金の動きを見ると、4月22日~26日の週に大幅な流出があったものの(対内証券投資が公社債の処分を中心に約8100億円の流出となる一方、対外証券も1兆円を超える大幅買い越しとなった)、その後は反転し、ネット流入の状態が続いている。特に、外人による国内株式投資は5週連続で流入超となっている。

< 4 >

  日本株では、このところ銀行株に資金が集まっている。上のグラフは4大グループ(東京三菱、三井住友、UFJ、みずほ)の平均株価推移。昨年の終値を100として、指数化した。株価は2月6日に77まで下げたものの、その後は徐々に回復。特にこの1週間ほどは上昇ピッチを強めており、23日終了時点では118と年初来最高水準を更新している。
  基本的な背景としては、不良債権問題がほぼ市場価格に折り込まれたこと、利ざや改善のために銀行が本腰を入れ始めたこと、国内景気に底打ちの気配が出てきたことなどが挙げられる。

< 5 >

  17日(金)の海外市場は東京市場でのドル安の流れを受け、ドル売り優勢の展開となった。特に河合副財務官が「日本は円を人為的に引き下げる意図はない」と述べたことが報道されるとドルは急落、一時125円53銭まで下落した。引けは125円95銭。20日(月)は126円14銭でオープン、その後当局による円高牽制発言などを受け、125円台半ばへドルは下落。海外でも125円台での取引が中心となり、125円40銭で引けた。21日(火)の東京市場は125円台での動きが続いた。海外では、外国人投資家による円買い観測が高まったことなどから、米系銀行を中心にドル売りが強まり、一時123円71銭までドルは急落した。引けは124円15銭。22日(水)は124円台前半でオープン、その後輸出筋や海外勢からのドル売りが強まり、123円51銭まで下落。このため午後2時半過ぎに、当局がドル買い円売り介入を実施、ドルは一気に125円台に乗せた。しかし同レベルでは、本邦輸出筋のドル売りが厚い上、米財務副長官の発言でテロ再発懸念が高まったことなどから、再びドル売りが強まり、124円20銭での引けとなった。23日(木)の東京市場は124円台での小動きが続いたが、海外に入ると、日本株の上昇やテロ懸念などを材料にドル売り優勢となり、一時123円台へ下落。しかし前日に続き、再度日銀が円売り介入を実施、結局125円で引けた。24日(金)の東京市場は125円台での小動きが続いている。
  123円台でついに当局が介入に踏み切ったことで、市場はいったんドル売りを控えた格好となっている。今後も124円近辺では介入が断続的に入ると予想されることから、新たなドル売り材料が出ない限り、目先直近の最安値(123円51銭)を大きく下回る展開は見込みにくい。一方、125円より円安の水準では、本邦輸出企業を中心にドル売りが強まろう。しばらくは125円を中心としたレンジ内の取引が続く可能性が高くなったといえよう。
  G-SECドル円指数(24日、速報値)は57.1となり、ふたたび50を大きく超えた。前回はドル安円高を予想する市場参加者が多かったが、介入が実施されたことで、しばらくは横ばいからややドル高に見る参加者が増えている。