2002年 2月9日放送 マーケット・ナビのポイント

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6日、米労働省は第4四半期の非農業部門生産性(季節調整済み、前期比年率)の速報値を発表した。伸び率はプラス3.5%となり、予想を上回るものとなった。生産性は2000年第2四半期にプラス6.7%を記録して以来、低迷が続いていた。前年同期比ではプラス1.6%、2001年全体ではプラス1.8%となった。

米企業の生産性向上については、ITバブル崩壊後労働生産性が急速に落ち込み(2001年第1四半期では前期比年率プラス0.1%)、その後の行方については見方が分かれていた。しかし今回の伸び率が大きかったことで、米景気の先行きについても楽観的な見方が増えてきている。

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欧州委員会が発表した1月のユーロの景況感指数は2ヶ月連続で上昇し、99.0となった(前月比プラス0.1)。同指数は消費者2万5千人と企業5万社を対象に調査するもので、欧州景気の先行きを占うものとして最も注目されている指標のひとつ。テロ事件以降、100を切ったことで悲観的な見方も台頭していたが、今回の内容を景気が回復する兆候として受けとめる向きも出てきそうだ。一部には、昨年ECBが行った一連の金融緩和にも終止符が打たれるとの観測も出てきている。

同時に発表された企業景況感指数はマイナス14となり、12月のマイナス17から改善。しかし消費者信頼感指数はマイナス11と前月のマイナス10から悪化している。

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日本株の下値不安がまた高まってきている。年初、10631円でオープンした日経平均は1月7日に今年の最高値10979円をつけた後大きく下落、1月半ばから下旬にかけて10000円から10500円の間での取引が続いた。米株が軟調に推移したことや、持ち合い株の解消売り、財務悪化懸念による銀行株売りなどが株式市場全体を押し下げた。ファーストリテイリング(ユニクロ)が今年8月期決算を下方修正したことで、小売セクター全般に売りが広がったことも足を引っ張った。

2月に入ると本格的に10000円を割り込んだ。小泉政権の支持率低下による政局不安の台頭や、米格付け会社S&Pによる日本国債の格下げ観測などが外人投資家の日本株売りを活発化させた。主力ハイテク企業の相次ぐ業績下方修正も懸念材料となった。今週末にかけては、週末のG7で不良債権処理やデフレ阻止に向けた政策が議論されるとの期待感が広がり、若干反発に転じているものの、今年の最高値からは11%の下落となっている。

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上の表は、日経500種から年初来の業種別(全部で16業種)のリターンを比較したもの。今年最も下げているのは証券株。株式市場全体が下落した影響をもろにかぶった。 発表した10-12月期の収益が低迷したことや、4大銀行による持ち合い解消売りも株価を下げた。小売セクターは、ユニクロ神話に陰りが出た影響が大きい。景気低迷による個人消費後退懸念もセクター全体を押し下げている。陸運セクターは、テロ事件の影響で航空貨物や旅行部門が悪化したことが背景となっている。その他金融とは消費者金融が主体で、国内景気の悪化による資産劣化懸念が要因。大手消費者金融の不良債権残高は対前年比5社合計で3割近い増加になっているという。不動産セクターは、景気悪化による不動産価格下落懸念や賃貸需要後退懸念などが背景となっている。銀行は8位のマイナス13.4%となっている。

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株価が大きく下げていることで、インフレ政策を推奨するエコノミストが増えてきている。日銀はすでに昨年3月から緩やかな形でインフレターターゲットを導入し、年後半からはベースマネー(民間部門の保有する現金と民間金融機関の中央銀行預け金の合計)の拡大に力を入れている。その結果、1月のベースマネーは前年同月比でプラス23.4%と12月の同プラス16.9%から大幅に増加した。

しかし、マネーサプライへの影響は限定的だ。1月の伸び率(M2+CD)は、同プラス3.6%にとどまり12月から0.2ポイント上昇したに過ぎない。さらに銀行貸出に至っては、1月は同マイナス4.6%と縮小が続いており、12月のマイナス4.3%からさらに低下している。銀行の信用創造が本来の姿に戻らない限り、量的緩和の拡大による景気浮揚、インフレ促進は極めて困難であると言えるだろう。

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4日(月)は132円後半で寄り付き後、黒田財務官の「日本の為替政策は一貫して変わらない」との発言にドル買いが先行、133円前半まで上昇した。しかしその後は本邦勢のドル売りもありもみ合いの展開。海外では対ユーロでドルが軟化したことや、米株が下落したことなどを受け、132円前半まで戻して引けた。

5日(火)は久々の円高地合いにドル買い強まり、132円半ばまで上伸。海外では、日本株や債券の下落を嫌った円売りにドルは一時134円台まで続伸した。その後は利益確定のドル売りに133円後半に戻しての引けとなった。

6日(水)は133円後半で寄り付き後、本邦実需筋のドル買いに134円台まで上伸。S&Pが邦銀の再格下げの可能性について示唆したこともドル買いを加速させた。しかしその後はドル売り強まり、一気に132円台まで下落するも、海外では133円台に戻して引け。

7日(木)は東京では大口のドル買いの動きに134円台までドルは上伸、しかし海外に入るとドルが対ユーロで売られたことから対円でも弱含み、133円後半での引けとなった。

8日(金)の東京市場は、日銀の金融緩和期待から一時134円台までドルは上昇したが、結局金融政策決定会合では何も決まらなかったため、後場は再び133円半ばに反落して推移している。

今週のドル円は大きく上下したが、基本的にドルは対円で堅調に推移したと言えよう。日本の株式や債券についてもまだまだ下値不安は完全に払拭されておらず、その意味でも中長期的なドル高円安トレンドは不変と思われる。しかし、短期的には135円を大きく超える円安には時期尚早との声も多く、しばらくはレンジ内の取引が続きそうだ。G-SECドル円指数(8日、速報値)は57.7と前週比7.3ポイントの下落。大きな動きを予想する市場参加者はやや減少した。