2002年 1月19日放送 マーケット・ナビのポイント

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1月11日に、グリーンスパンFRB議長の米国経済情勢に関する講演がサンフランシスコで行われた。テロ事件以降、米国株式市場は比較的堅調に推移してきたこともあり、金融市場では米国の景気回復に楽観的な見方が支配的だった。しかし、グリーンスパンの講演内容は警戒的なものとなっており、議長は着実な景気回復には慎重な見方をしていることが判明した。このため1月30日のFOMCでは、FF金利を25BP引き下げるとの見方が急速に台頭している。

議長は、「企業の在庫調整は急ピッチで進んでおり、調整の終了は近い」と述べたものの、「財やサービスへの需要が本格的に上向かなければ、一時的な持ち直しに終わってしまうかも知れない」と忠告した。企業収益や投資の低迷、労働市場の悪化や長期金利の上昇などを例にあげ、短期的には重大なリスクに直面し続けていると述べている。

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グリーンスパン議長がこのような懸念を抱いているのは、米国が今後の展開によってはデフレ入りする可能性も高いと考えているからであろう。実際、デフレを「生産と物価の継続的な下落」と定義すれば、上のグラフにあるように米国は既にその状況に入りつつあると言える。16日に発表された12月の鉱工業生産は前月比ではマイナス0.1%の低下にとどまったとは言え、指数は136.7(季節調整値、1992年=100)となっており、2000年6月の147.2をピークに1年半もの間下がり続けている。また、同日発表された消費者物価指数(12月分)は前月比マイナス0.2%である。前年同月比ではプラス1.6%だが、昨年5月には3.6%の伸びを示しており、わずか半年で2%ポイントも急落してきている。

失業率も今後は一段と悪化する可能性が高いことを考慮すると、グリーンスパン議長としては「景気回復宣言」をするにはまだまだ時期尚早と考えざるをえないのだろう。

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1月30日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれる。グリーンスパン議長の講演以降、FF金利はあと25BP引き下げられ、1.5%となるという予測が増えてきているが、その議論のたたき台となるのが16日発表されたベージュブック(地区連銀経済報告)である。内容は一部地域での景気回復を認めつつも、全体としては慎重なものになっている。

特に印象的なのは労働市場に関する記載で、賃上げ凍結や地区によっては引下げの動きが見られることだ。クリーブランド、カンザス、サンフランシスコ地区で引下げ圧力が見られると言う。それに伴い付加給付(フリンジベネフィット)の削減も目立ち始めており、健康保険費用の負担増などを求められているところもあるようだ。また鉄鋼や航空産業では、企業が仕事の安定保障を免責されるeconomic duress clause(経済強迫条項)を発動させたという。

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いよいよペイオフ解禁が迫ってきた。小泉首相は「予定通り実施する」と繰り返し述べ、どうやら今度こそ実現しそうな雰囲気である。上は基本的な事項をまとめたもの。最近はやりの外貨預金は対象外となる。今回は“部分的解禁”となるので、対象は定期性預金だけである。決済性預金(普通預金、当座預金、別段預金)は1年先送りとなっている。

預金者にとっては銀行の選別が難しい。このため定期預金をやめて、普通預金に移す人が増えてきている。

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上のグラフは、そのような預金者の行動が起こす銀行経営への影響を見たもの。棒グラフは都市銀行の預金(一般法人・個人・公金)にしめる定期預金比率の推移。99年1月には62%あったものの、ペイオフ解禁に備え徐々に定期預金を普通預金などに移す人が増えている模様で、昨年11月現在では50%ちょうどにまで低下してきている。折れ線グラフの方は、長期貸出比率(=貸出金に占める証書貸付の残高比率)を見たもの。証書貸付であればすべてが1年以上の期間というわけではないが、基本的な趨勢はこれでとらえられる。こちらは過去30年間一貫して上昇しており、昨年11月現在で63%となっている。

これは、都市銀行において資金運用期間と調達期間のミスマッチが拡大していることを意味しており、決して良い状態ではない。期日の判明している安定調達資金(定期預金)が減少し、いつ引き出されるか不明の普通預金が増えることは、経営の安定度を低下させてしまう。どうせやるなら“部分的”解禁ではなく、“全面解禁”のほうが銀行のリスク管理上は良かったかもしれない。

ちなみに、地銀の定期預金比率は63%、第二地銀のそれは72%となっており、都市銀行ほど減少していない。

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14日(月)は、ダイエーが赤字事業の売却などにより150社ある子会社を半減すると発表したことから、円が売られる局面もあったが、その後積極的なドル買いも続かず、132円前半での引けとなった。
15日(火)は中国人民銀行総裁が、円安に対する不満を明確にしたことをきっかけにドル売り円買いが強まる展開となった。米小売売上高が堅調だったためドルの買い戻しも見られたものの、結局131円台前半で引けた。
16日(水)は、約1週間ぶりに131円台をつけたことから機関投資家等からのドル買いが活発化し、ドルは再び132円台へ乗せる展開となった。米鉱工業生産(12月)も予想ほど悪化しなかったことから、そのまま132円台での引けとなった。
17日(木)は、アジア市場では132円前後での推移が続いたものの、NY市場に入ると株価上昇や失業保険新規申請件数が予想より少なかったことなどを好感しドルが買われ、132円台半ばでの引けとなった。
18日(金)の東京市場では132円台半ばでのもみ合いとなっている。

今後について見ると、引き続きこれまでの急ピッチな円安の調整局面が継続するとの見方が多い。長期的な円安トレンドに大きな変化はないと思われるが、(1)グリーンスパンFRB議長の発言で、米景気の回復に懐疑的な見方が台頭しつつあること(2)本邦金融当局者は現状のレベルから一段の円安はあまり望んでいないこと、などを勘案すると当面はレンジ取引が続きそうだ。

G-SECドル円指数は50.0へ小幅上昇、前週の確定値比プラス4.5ポイントとなった。先週は調整局面から円高に進む、と見込む参加者が多かったが、今週いったん131円割れが示現したことでそのような見方も薄れつつある。中心レンジは130円~133円であまり大きな動きを期待していない参加者が多い。