2001年7月21日放送 マーケット・ナビのポイント

1. 日経平均株価指数
5月の連休中の14,500円超えをピークに、日経平均株価は下落基調を強めている。年初来の推移では世界の主要株価指数をアウトパフォームしていたが、ここ1ヵ月半でほぼ同じレベルにまで下がってきた。世界的なIT不況の煽りを受けたソニー(一時4年半ぶりの安値をつけた)や富士通といった主要ハイテク企業株の調整が指数下落を先導し、18日(水)には3月14日以来となる12,000円割れを示現した。東証の電気機器指数は、年初来騰落率で約▲20%となっている。

参議院選を来週に控え、株価の下落が小泉人気剥落に拍車をかける懸念もあり、その場合には構造改革期待から日本株を買っていた外国人からの売りが大量に出て、さらに株価を押し下げるという悪循環の可能性も見ておく必要があるだろう。

2. 東証銀行株指数
ハイテク株だけでなく銀行株も軒並み下落している。不良債権処理に伴う損失が各行の予想を大きく上回るとの思惑や、9月中間期決算で完全実施される時価会計に伴い、株価下落が銀行の自己資本を大きく毀損するとの懸念が出ていることが原因である。東証業種別指数で、銀行株は年初来21%以上も下げており、98年10月の金融危機時の安値をわずかだが下回ってきている。

3. 外国人日本株売買動向
グラフは東京証券取引所が発表している投資部門別株式売買代金のうち外国人のネット売買代金の推移を図示したもの(東証・名証・大証の三市場、一部・二部の合計)。5月まで外国人は大幅に日本株を買い越しており、年初来の累計は約3兆2千億円と2000年通年の売り越し額2兆3千億円を大きく凌駕している。因みに、1999年は9兆1千億円の買い越し。

5月までの大幅な買い越しは、小泉政権下での構造改革期待によるところが大きいが、改革の具体策が明示されないことに苛立ちが目に付き始めた6月には、4,900億円の売り越しとなった。7月第1週は約500億円の小幅買い越しとなったが、第2、3週は売り越しに転じた可能性が高い。

4. 電気機械生産(前年同月比)
グラフは経済産業省が発表している鉱工業生産指数のうち、ハイテクを含む業種である電気機械生産の動きをプロットしたもの。5月までは確報で、6月、7月は予測指数を用いている。

2000年中頃までの景気回復もその後の落ち込みも、ハイテクを中心とした輸出主導で起こった現象であり、非製造業部門や個人消費部門には大きな動きはなかった(低迷したままだった)といえる。実際、上のグラフを見ると、電気機械生産はピークには前年同期比20%を超える驚異的な伸びを見せたが、その後急速に軟化し、足許では15%近い落ち込みになるという、「ジェット・コースター」的な動きを見せていることが分かる。尚、予測指数を含めると、下落の角度が鈍化しつつあることが分かるが、これが実現するかどうかは予断を許さない。

5. 有効求人倍率
有効求人倍率は99年半ばを底に緩やかな改善を見せていたが、2000年末をピークに減少傾向になっている。比較的順調に伸びていた有効求人数(新規求人数に前月からの繰越し分を加えたもの)が足許伸び悩んでいるとともに、有効求職者数が増加傾向にあることが背景にある。求人はサービス業はまだ堅調であるものの、製造業における落ち込みが大きい。ITバブル崩壊の影響が雇用市場にじわじわと効きはじめている。

失業率は、今年の2月、3月に若干低下したが、5月には再び過去最高となる4.9%まで上昇している。

6. ドル・円相場
ドル円相場は、先週12日(木)にエマージング・マーケットの混乱を直接のきっかけに123円台半ばまで下落したが、週末の13日(金)にはアルゼンチンの混乱が一段落ついたことや同日発表された米国の経済指標がよかったことから、ドルの買戻しが入り125円近くまで値を戻した。今週はその流れを引き継ぎ、週初16日(月)は125円近辺で寄り付いた。同日発表された日銀の金融経済月報で経済情勢判断が下方修正されたことを受けて円売りの流れとなり125.50近くまでドルが上昇した。また、英国大手石油企業がドイツの企業を買収すると発表するとユーロ買い・ポンド売りが加速、ユーロ・円が連れ高になったことも、対ドルでの円売りの支援材料となった。

翌17日(木)には持高調整のドル売りが優勢になる中、英保守党の党首選挙の第3回予備選で、ユーロ導入支持派のクラーク蔵相が1位となったことから、対ドルでユーロが急騰し、また米国の6月鉱工業生産が前月比▲0.7%という大幅な落ち込みを見せたこともドル売りにつながり、ドル円は再び124円台に下落した。

18日(水)もユーロの対ドルでの上昇がドル円の下落につながる動きが続いた。同日発表された6月のユーロ圏消費者物価指数が前年同期比+3.0%と引き続き下落傾向を見せたことから、ECBの利下げ余地が広がったとの見方が出てユーロが急上昇、また、グリーンスパン議長の議会証言が景気のダウンサイドを強調するものであったことやブッシュ大統領が「強いドルは米国の輸出に悪影響を与える」と述べたことから、ドルは最初にユーロ、その後対円で急速に下落、124円台を割り込む展開となった。19日(木)もドル売りの動きは続き、123円台前半まで下落した。 

ファンダメンタルズから見れば円は買えないという状態は続いているが、ここのところ、ドル自体の要因がドル円の頭を抑えている。また、18日(水)に全米製造者業界(NAM)が農業団体と共同で、ドル高是正をジェノバ・サミットの最優先課題にするよう求める書簡をブッシュ大統領に送るなど、産業界を中心にドル高への不満が強まっていることも懸念材料だ。確かに製造業を中心に米国景気が大きく落ち込む中、実質実効ベースで15年ぶりのドル高水準であることを考えると、何らかの政策的な配慮が出てくることも全く否定はできないであろう。

今週のG-SECドル円予測指数は若干のドル安・円高方向を示す47.1(前週は60.0)。来週の予想レンジは122円~127円。