2001年6月16日放送 マーケット・ナビのポイント
1. 日経平均株価指数
グラフは3月以降の日経平均株価の推移。3月の中旬に11,000円台の年初来安値をつけたが、その後、実質ゼロ金利政策の復活、構造改革進展への期待、小泉内閣人気等の追い風を受け、5月の上旬には14,500円を越えるまで上伸した。しかしながら、ピークをつけた後は株価は再び弱含みに転じ、6月11日(月)に発表になった1〜3月の実質GDP成長率が前期比▲0.2%(年率換算▲0.8%)と市場予想に反してマイナスになったことをきっかけにして、株価は13,000円を割り込む水準まで下げている。
ここ数ヶ月間、外国人投資家の動向が株価を決める最大の要因となっている。外国人は4月に1兆円超、5月に8,000億円超と大幅に日本株を買い越したが、5月の第5週に11週ぶりに売り越し(1,000億円超)に転じ、6月の第1週は3,000億円超と大きく売り越している。
ここのところの外国人の売り越しの背景にある心理としては、(2)不良債権の抜本処理こそが構造改革の最大の柱であるはずなのに、処理策の具体像がなかなか見えてこないことに対する苛立ち、(2)GDP統計をはじめとして経済統計は日本経済のリセッション入りを強く示唆していることに対する嫌気、等があげられよう。特に前者については、銀行株がマーケット全体よりも大きく下げている点に表れている。
2. 東証株価指数/銀行株指数
グラフは東証株価指数(TOPIX)とそのサブ・カテゴリーである銀行株価指数を、今年の3月初を1として指数化したもの。両系列ともに5月上旬にピークをつけているが、銀行株の方が3月中旬の底からの回復が弱く、かつピークから足許にかけての落ち込みが激しいことが見てとれる。TOPIXのピークからの落ち込み幅が▲13%であるのに対し、銀行株指数の落ち込みは▲23%にも及んでいる。銀行株の中でも4大金融グループの下落が際立って大きい。現状の銀行株指数のレベルは金融危機の真っ只中にあった98年10月の大底の水準にほぼ等しい(98年10月1日:275.07、今年6月14日:281.64)。
三菱東京フィナンシャル・グループは5月下旬に、貸出債権の資産査定を厳しくした結果、金融再生法基準の不良債権残高が約1兆6千億円も増えたと発表した。発表当初こそはこれを前向きな処理と捉える市場関係者も多かったが、結果としては、不良債権問題の根深さと最終処理への道程の険しさを印象づけることになり、その後の株価続落を後押しすることになった。
結局のところ、不良債権最終処理の具体的な道筋が示されない限り、真の構造改革はスタートしないというのが外国人投資家の標準的な見方であろうが、逆にそれが(市場参加者が「満足」するようなレベルで)示された時に、強烈なデフレ圧力を目の前にして、構造改革への期待感から株式市場が底入れするかといえば、それは大きな疑問といわざるを得まい。
3. 日本・鉱工業生産指数
6月13日(水)に4月の鉱工業生産の確報値が発表された。前月比は速報値の▲1.7%から▲2.0%、前年同月比は▲3.9%から▲4.2%とリバイズ・ダウンされた。グラフは4月時点での5月、6月の予測指数(ピンクの部分)を含めたものであるが、4〜6月の生産の動きは1〜3月よりも大幅に落ち込むことはほぼ確実と見られる。
14日(木)に閣議提出された6月の月例経済報告は、景気の基調判断を5ヶ月連続で下方修正し、「景気は悪化しつつある」と踏み込んだ判断をした。その理由として、
・個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。失業率は高水準で推移している。
・輸出、生産が引き続き減少している。
・企業収益の伸びは鈍化し、設備投資は頭打ちとなっている。
をあげている。先行きの見通しについては、「在庫の増加や設備投資の弱含みの兆しなど、懸念すべき点がみられる」としている。竹中経済財政担当相は「景気は後退局面に入った確率が高い」と率直に語り、小泉首相も「景気については注意する必要がある」とした。秋の臨時国会における補正予算の取扱いが注目される。
4. ドル円相場
ドル円相場は、週明け121円前後で寄りついたが、11日(月)に発表になった本邦第1四半期実質GDPが予想に反してマイナスであったことを嫌気し、また日銀の追加金融緩和期待もあり、同日中に122円近くにまで上昇した。122円近辺では本邦輸出企業の為替予約がドルの頭を抑えたが、12日(火)にヴェルテケ独連銀総裁・トリシェ仏中銀総裁がユーロ安を強く懸念するコメントを出したとでユーロ買い介入期待が高まり、ユーロが対円で強含んだことから、ドル円も上伸し13日(水)には122.42をつけた。また、日本の政府高官から景気の見通しの暗さや追加金融緩和を求める発言が相次いだこともドル円を下支えした。
14日(木)には、全米製造業者協会(NAM)のジャシノフスキー会長が、現在のドル相場は25〜30%過大評価されており、ブッシュ政権に「製造業界との協調姿勢」を求めると述べたことから、ドルが対主要通貨で下落、ドル円は121.22まで下落した。
120円割れの局面でドルを売り遅れていた輸出企業のドル売りがドルの頭を抑えているが、ドル円は徐々に下値を切り下げる展開となっている。景気の見通しが悪いことが明らかになるにつれ、外国人の日本株売りが膨らみ、これがドル円の買いにもつながっていると見られる。また、タイミング的にECBによるユーロ買い介入が視野に入ってきたことも、ドル円の下支えになっている。来週の予想レンジは120円〜125円。