2001年5月19日放送 マーケット・ナビのポイント

1. ナスダックは「逆指標効果」?
ナスダック総合指数は足許堅調に推移している。FRBの度重なる利下げが奏効して、米景気の早期回復が可能となるとなるとの期待によるものであるが、ここ数ヶ月、経済指標に対し通常とは逆の反応をするパターンが目立つようになってきた。つまり、景気の悪化を示す指標が出ると、FRBの積極的な利下げを期待して株価が上昇し、経済にとって好ましいデータが出ると逆の予想で株価が下がるパターンだ。

最近のデータで見ると、先週末11日(金)に発表された5月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値は、前月が88.5、市場予想の平均が88.4だったところ、92.6とかなり高い数字が出た。また同日に発表になった4月の小売売上高は前月比+0.8%と、前月▲0.4%、市場予想平均値+0.4%を大きく上回った。この二つの指標を受けて、市場は5月15日のFOMCで、期待されている0.5%の利下げ幅が縮まるのでは、との見方が台頭し、ナスダックは20ポイントほどではあるが下落した。

逆に今週16日(水)に発表された4月の消費者物価指数が、前月比+0.3%(予想は+0.4%)と落ち着いたものである(現在の文脈では景気活動の低迷を示唆している)ことが分かると、追加利下げを期待して、株価は88ポイント近くも上昇した。

こうした現象は、FRBの金融政策頼みになっている株式市場の脆さを映し出していると考えられよう。

2. FRB、0.5%利下げ
5月15日(火)に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRB(連邦準備制度理事会)は、市場の大方の予想通り、FF金利誘導目標を0.5%引き下げ4.0%へ、公定歩合も同じく0.5%引き下げ3.5%とした。今年に入ってから5回目の利下げで、この間、FF金利は合計2.5%引き下げられた。最近の消費者物価指数は前年同期+3.3%だから、実質金利は0.7%前後と1%を割り込み、日本の0.4%と近い水準にまで下がってきた。市場金利が織り込んでいる次回6月27〜28日のFOMCの利下げ幅は0.25%となっている。

FOMC声明文の主要部分は以下の通り。

「過剰在庫の大幅な削減はかなり進展したとみられる。消費および住宅支出は、最近ではこの分野の活動が横ばいになっているとはいえ、まずまずの好調を維持してきた。ただし、設備投資は減少を続けている。現在および予想される企業の収益性の持続的な侵食は、業績見通しの不透明感増大と相俟って今後の設備投資抑制につながるであろうとみられる。この潜在的な抑制要因は、これまでの株式資産の減少が消費に与え得る影響や、海外の成長率が減速するリスクとともに、経済を圧迫し続けている。

労働および生産市場の圧力が緩和するなか、インフレは引き続き抑制されることが期待される。1 〜3月期の労働生産性の伸び率は失速したが、近年の目覚ましい基調的な上昇率の大部分は損なわれておらず、長期的な見通しを下支えしているようだ」

株式市場が近い将来の景気回復に期待を抱いている中、FRBの景気に対する見方は厳しさを増しているということが出来よう。

FRBは「インフレは引き続き抑制されることが期待される」としているが、ここまで金利が下がると、流石に市場ではインフレ圧力を心配する声が出始めている。16日(水)発表の4月の消費者物価指数が落ち着いた数字だったのを市場が歓迎したことの背景には、近い将来のインフレについて、市場が懸念を抱き始めていることを反映している。

3. FF金利誘導目標推移
1998年以降のFF金利誘導水準の推移。既に、LTCM危機後の水準(4.75%)を0.75%も下回っている。

4. ドル円相場
ドル円相場は足許で120円〜125円のレンジに膠着しつつある。連休の谷間までは、小泉新政権発足で、「構造改革」期待から、海外勢の日本株買いが活発になり、また米国の雇用統計や労働生産性指数等の経済指標が米国経済の減速を印象付けたことから、ドルは弱含みの展開を見せ、4日(金)には一時120.50まで下げた。しかし、ゴールデンウィーク明けは、小泉政権に対する期待がやや様子見に変わったのか、外国人の株買いは止まり、足許はやや円安の123円台で推移している。17日(木)には、4月上旬に当時の宮沢蔵相が事務方に「ドル売り介入すべき」と指示を出したとの新聞報道で、122円台半ばまで円買われたものの、週末金曜日は123円台に値を戻した。

とはいえ、ドルの上値を追う勢いは見られず、下値も買い需要が大きいと考えられるため、膠着状態は暫く続くだろう。今週の予想レンジは、120円〜125円。