2001年4月7日放送 マーケット・ナビのポイント

1. 年初来のナスダック総合株価指数
年初来のナスダック総合指数は、1月こそは100bpsの利下げを受けて、「V字型回復」の期待が強まり上昇傾向にあったが、同月下旬よりほぼ一貫して下落、3月の半ばに98年12月以来の2,000ポイント割れを見せてからも、下落傾向は止まっていない。4月4日には1,600台前半まで下落した(98年10月以来)。5日には、デル・コンピュータが「業績見通しで予想通りの見方を維持する」という発表したことを材料に150ポイント近く上昇した。このような本来は材料とはならないニュースを市場が買い材料にするという現象については、企業の今後の業績について市場が相当弱気になっている証左と考えられよう。

今回の大幅上げが、ダウントレンドを底打ちさせたと見るのは早計だろう。来週・再来週と主要企業の第1四半期決算発表が目白押しであるが、予想以上に悪い業績発表が相場を下押しするということも十分予想される。

最近の経済指標(3月の消費者信頼感指数や同月の自動車販売等)が、市場の事前予想より悪くなかったということを材料に、「V字型」回復に再び期待をし始めた市場関係者もいるようであるが、極めて短視眼的な反応と言わざるを得ない。1月と3月の合計150bpsが心理的にプラスに働いている可能性も否定できないが、景気減速が雇用や個人消費に効いてくるのはむしろこれからであり、株価についてももう一段の下押しがあると考えるのが自然であろう。

2. 年初来のダウ平均株価指数
年明け以降のダウ平均の値動きは、ナスダックとは異なり、2月の中旬まで10,000台半ばで、比較的底固く推移していたが、3月上旬から下旬にかけて、大きく値を下げた。これはインテルやシスコ・システムズといったハイテク大企業の業績悪化をきっかけに、格付け会社フィッチ社による「邦銀19行を格下げ方向で見直し」という声明(3月14日)、大幅利下げを市場が期待していた20日のFOMCで利下げ幅が50bpsにとどまったことへの失望感等が重なったもの。V字型回復への期待が一気萎んできた過程と軌を一にしている。

4月5日に史上二番目となる402.63という大幅な上げを記録するなど、3月22日の9,300台を底に、足許落着きを取戻しているが、依然10,000を割り込んだ水準で推移。今後の企業の業績発表で悪材料が出れば、再び下押しする可能性が高い。

3. 年初来の日経平均
3月中旬まで、日経平均は、ほぼナスダックと連動する形で下落していたが、その後は相関関係を弱め、足許落ち着いた動きを見せている。これは、政府が金融システム問題の抜本的解決に乗り出すという期待、森首相の事実上の辞任宣言、外国人の空売りの買戻し等によるもの。しかしながら、4月6日に緊急経済対策が発表され、材料が出尽くし、また今後は市場が経済対策の中身を問う展開になると考えられることから、今後は弱含みの展開になると予想される。

4. 不良債権の最終処理
ポイントは、(1)主要行は、約12兆7,000億円の破綻先・破綻懸念先債権を、既存分は2年以内に、新規分は3年以内に最終処理(オフバランス化)する、(2)金融庁は主要行による不良債権処理の進捗状況をモニターする、(3)政府系金融機関も債権放棄に応じるための環境整備を進める、(4)中小企業の連鎖倒産などを防ぐために、金融面で政府が支援する。

最終処理は、債権放棄が中心となることが容易に予想され、淘汰されるべき企業の延命という本来的な構造改革に結びつかない可能性が高い。また、長銀や日債銀で典型的に見られた、破綻懸念先債権以上に位置付けられた債権が「突然」不良化する問題については、一切触れられておらず、更に主要行についてのみ目標が課せられ、主要行以下の金融機関については何も言及されていない。

5. 銀行保有株式取得機構
ポイントは、(1)銀行の株式保有制限を導入する(例えば、自己資本の範囲内等)、(2)銀行保有株式取得機構を、銀行等の拠出により設立する、(3)同機構設立の際には、預金保険機構の活用を含め、株式買取りに要する資金に対する政府保証等公的な支援を検討する、(4)株式の買取り先は銀行のみ(事法除く)、(5)買取りは時価とするが、上場投信組成も考えて、買取り対象銘柄に関するルールを作る、(6)二次損失の負担にかかる公的資金、機構の存続期間、機構の設立時期、売却株式への譲渡益課税など、事前に論議された点については、具体的な言及なし。

政府・与党間で十分な合意が見られなかった模様。今後、(1)市場メカニズムの阻害の可能性、(2)二次損失は公的資金で補填するという議論となったとき、納税者から銀行に所得移転が生じる点、(3)慎重な姿勢を崩さない政府側と、選挙対策としたい与党側との思惑の一層の食い違い、(4)そもそも、何故持合い株を市場で売却することが悪いのかという点、等が議論の俎上に上る可能性が高い。

6. 3月中旬からのドル円相場
ドル円相場は、前期末の最後の2日間で4円近く上がるなど、急速にドル高・円安が進行、期初の4月2日には98年10月以来となる127円手前まで上昇した。この背景には、麻生経済相が30日に「米政府内部で円安について話し合われていた」との発言、期末にかけての輸入企業のドル買い、日経平均の急落(29日に700円近い下げ)、ゼネコン破綻の噂、ECBの利下げ見送りでユーロが対ドルで売られたこと、等がある。しかし、急速な円売り進行に、通貨当局が懸念を表明するとの見方や、ドル買いポジションの利食い、輸出企業の為替予約等で、ドル円は急速に頭打ちとなり、4月5日には123円台半ばまで下落した。足許は124円台での商い。

足許は、速過ぎた円安への一時的コレクションと見るのが妥当であろう。特に米国のヘッジファンド等が、株式市場の低迷を受けリスク許容度を低めており、為替ポジションをキープする時間が短くなりつつあることが、早めの利食いに繋がっているという。しかしながら、4月24日の総裁選、26日の組閣、28日のG7等、日本に対する海外の見方が更に厳しくなるような結果を生み得るイベントが目白押しであり、再び130円台を目指してドル円が上昇する可能性の方が高い。レンジは120円~130円。