第314回 2007年1月13日放送
ロボットにあこがれる子供は少なくない。そんな子供の頃からの夢を実現させてしまう人がいる。「サイボーグ009」が大好きだったと話す山海嘉之さんもその一人だ。山海さんは筑波大学大学院の教授で、大学発ベンチャー「サイバーダイン」社を起こし社長を務めている。
彼が作りだしたのは、ロボットスーツ『HAL(ハル)』。HALは人の動きをアシストする世界初のサイボーグ型ロボットで、これを身に付けると、例えば10キロの米の袋を4つ、つまり40キロを片手で楽々持ち上げられるようになる。持っている本人には3〜4キロくらいにしか感じられないという。
そんなHALの仕組みはと言うと…HALには8つのセンサーと8つのパワーユニットが備えられている。そのセンサーが脳から筋肉へと発せられる命令=微弱な電気信号を感知。その命令をコンピュータで解析して人の動作を予測。その予測に基づいてしてモーターユニットを駆動し人の動きをアシストする。
このHALを利用すれば、体力が落ちてきた高齢者や、体の不自由な人が、少ない力で体を動かすことが出来るようになる。例えば足腰が弱った高齢者が装着すると、立ったり座ったり、或いは階段の上り下りなどの動作が楽に行えるようになる。また、高齢者を抱え上げたり支えたりなど重労働が多い介護の現場での利用も考えられている。勿論、重い荷物の運搬など生産や工事の現場で使うことも可能だ。サイバーダイン社にはいま様々な問い合わせがあるそうだ。
現在の事業計画では、2007年秋につくば市内に量産工場を建設。2008年には400〜500セットを生産し本格的にレンタルを開始する。料金は、法人契約の場合、月額で16〜17万円。個人の場合は月額7万円を予定している。既に病院や個人などと約600件の契約を結んだ。
HALの事業化を進めるサイバーダインは大学発のベンチャー企業だ。大学発ベンチャーは年々増えていて、2005年には1500社を数えるまでになった。しかし山海社長によると「大学での仕事との両立は大変。二束のわらじを自由に動かすためのサポートシステム、大学のマネージメントが必要」とのこと。経営者であり研究者であることは、それぞれに負担がかかりたいへんなようだ。しかし、こうした技術系のベンチャー企業の育成は日本の未来にも関わる問題。大学発ベンチャーを支援する仕組みが求められている。
さて、サイバーダインが乗り出すロボット事業のこれからだが、こんな試算が出ている。2025年の産業用ロボットの市場規模は1兆4000億円。一方、介護や家事などの生活支援ロボットの市場規模はその6倍の7兆2000億円と見込まれている。今の主流は産業用ロボットだが18年後には大きく逆転。少子高齢化や人口減少といった環境の変化を追い風に市場は急速に拡大していきそうだ。
山海社長は超多忙だが、ご本人とお話しした限りではとても楽しそうだ。ここ10年、研究が面白すぎて、自宅のベッドで寝たのは数えるほどしかないと言う。そんな山海教授がロボットに魅せられたのは小学校時代。母親からもらったアイザック・アシモフの『私はロボット』という一冊の本。この話の中で山海少年は、ロボットよりもロボットを作り出した博士に心を引かれた。そして今やロボット工学・脳神経学・行動科学・心理学などを融合させた「サイバニクス$B$H$$$&?7$7$$3X=QJ,Ln$N@hF,$KN)$A!"$=$N6qBNE*$J@.2L$H$7$F#H#A#L$N3+H/$K@.8y$7$F$$$k!#
そんな山海社長は、これから社会に出てゆく人に対してこんなメッセージを送っている。「『夢・情熱・人を思いやる気持ち』がないと、新しい発想は生まれない。夢と志を持つのは一つの才能で、そんな人を育成しなければならない」と。
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