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第312回 2006年12月23日放送 新日本様式協議会 福川伸次 座長

「MADE IN JAPAN」はかつて大変なブランド力があった。しかしそれも昔話になりつつあるようだ。中国ブランドや韓国ブランドも、単に価格が安いだけでなく、機能やデザインなどでも力を付け始めている。中国・北京の家電量販店で携帯電話売り場を覗くと、人気を集めているのはサムスンやノキア。日本製品について来店客に聞くと「あまり良く知らない」「価格が高い」「韓国製のものよりデザイン性が乏しい」等々、どうも評価が低い。日本国内では、メイド・イン・ジャパンこそ高機能でデザインが良いと多くの人が信じているのだから、かなり温度差があると言わねばならない。

こうした状況への危機感を背景に立ち上がったプロジェクトがある。それが「新日本様式協議会」。これは日本ならではの商品を選定し海外に積極的に紹介していくというメイド・イン・ジャパン再生プロジェクトで、新日本様式として認定を受けた商品にはJマークが与えられる。この協議会を取り仕切っているのが福川伸次座長。大平内閣の総理秘書官や通産事務次官を歴任。更に神戸製鋼副会長、電通総研研究所所長を経て今は機械産業記念事業財団の会長を務めている。

2006年、第一回の新日本様式に選ばれた商品は53点。その中には薄型大画面テレビ「ビエラ」や加熱水蒸気による健康調理器「ヘルシオ」、日本が開発した世界食「カップヌードル」、更には季節毎に色を変え四季の移ろいを楽しむ太宰府天満宮のおみくじが選ばれた。選ばれた商品に共通するコンセプトは日本人の和の心だ。こうした感性を製品に繋げる工夫が足りないのではないか、というのが福川座長の考えだ。

Jマークを勝ち取った商品には、日本が誇る匠の業が生きているモノもある。例えばキャノンの「イクシー・デジタル80」のデザインは日本刀をイメージしているが、それをそのまま製品に仕上げるには非常に高度な加工技術が必要だ。海外ではなかなか作ることが出来ないまさに日本の技術とデザイン力が生んだ商品と言える。

また、インテリア好きから支持を集めるブランド、プラマイゼロ社も注目を集めている。今回、同社の「プラスマイナスゼロ」シリーズが新日本様式に選ばれたが、ブラウン管を模したデザインの液晶テレビやドーナツ型の加湿器など個性的なデザインが高く評価された。

日本の強さは日本であること。お隣の韓国では韓国カルチャー・アイデンティティに力を入れ、映画などで韓国文化の再認識をしている。日本人も本来歌舞伎や着物など伝統的な文化を持ちながら、今の日本人はすっかりその心を忘れてしまっている。経済中心できた日本が取り戻すべきは、こうした感性なのではないか。イギリスはここ数年、「クールブリタニカ」という標語を掲げ、経済成長の柱としてミュージカルを始めとするコンテンツビジネスに注力。ハードからソフトへシフトし14年連続のプラス成長を達成している。こうしたイギリスの国家戦略に日本も見習うべき点があるのではないか。そして、そのとき問われるのは日本ならではの力。福川座長はこれをジャパナビリティ(Japan+ability)と名付けていた。

最後に福川座長に新日本様式のキーワードを挙げてもらった。それが『融知創新』。知識を合わせて新しいモノを作っていくという意味で、まさに今回のプロジェクトを表す言葉だ。日本人が本来持っている感性を生かしたものづくりにメイド・イン・ジャパンの活路がありそうだ。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 日本の強さは日本であること
  • 日本の製造業は今まで感性の工夫が足りなかった
  • ジャパナビリティ
  • 融知創新
亜希のゲスト拝見

日本人は日本の良さを見失いがち。先日、知り合いのインテリアデザイナーと話をしていたら、彼女はイタリアの村を日本で再現したいという。でも、日本にイタリア?日本の町家とか寄り合いとか、日本の風土にかつてあった暖かさを忘れてしまっているような気がしました。確かに欧米の良さはたくさんありますが、そこに住むのは日本人。何だかチグハグな感じです。文化は真似だけでは駄目なのではないでしょうか。西洋人が着物を着てもなかなか似合わないように。

私が数年前アメリカに住んでいたときに役に立ったのは、日本料理と茶道に折り紙。福川座長もおっしゃっていましたが「人は自分の国にない美しさに惹かれる」のは確かなようです。日本の文化は海外に行くとその強さを実感できますよ。中でもとても受けがいいのが名前に適当な漢字を当ててあげること。なんてったって、『青豆』と書かれたTシャツがNYで売られているくらいですから、相当感動してくれるでしょう。

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