第297回 2006年9月9日放送
1971年に1号店をオープンさせたすかいらーくは、今や日本の外食産業を代表する存在にまで成長した。全国に展開する店舗は、すかいらーくをはじめ、ガスト、バーミヤン、藍屋、ジョナサンなど4400店舗余りに達し、そこではパートも含め10万人もの人が働いている。
今年3月、すかいらーくの会長に創業者・横川4兄弟の3男、横川竟氏が就任した。2002年には、4兄弟が揃って経営の一線から退いていたが、今回、再び創業家からの会長就任となった背景には、すかいらーくの業績の停滞に加え、35年前に構築したビジネスモデルの再構築が必要との危機感があった。
自らの構造改革に挑もうとするすかいらーく。その第一弾として今年9月にMBOを実施した。市場からすかいらーくの発行済み株式の94%を集めるという大がかりなモノで、費用は総額2500億円余り。この結果、すかいらーく株は上場廃止となったが、なぜこんな荒療治が必要だったのか。
横川会長は「今までの30年間を大きく変え、これからの30年間で成長するため」と説明する。「改革をすれば今年と来年は大幅な減益を覚悟しなければならない。しかし5万5千人の株主はそれを納得してくれるだろうか?しかし、改革をしなければ店や従業員はどうなる」
つまり、たとえ一時的に業績を悪化させても、今こそ改革に踏み出さないといけない、そんな差し迫った危機意識を横川会長は抱いていたのだ。MBOはそのための環境整備だったと言える。
すかいらーくは、創業以来35年の間に、100を超える業態を開発してきた。中でも1992年にオープンさせたガストは、日本経済を襲ったデフレの波に乗って急成長。15年足らずの間に1000店を超える規模にまで成長してすかいらーくの主力業態となった。
こうして新業態への進出と撤退を繰り返して、時代のニーズを捉えてきたすかいらーくだが、横川会長は、今のファミレスは「客の変化に追いついていない。このままでは未来がない」と指摘する。もはやデフレの時代は終わり、消費の二極化や少子高齢化などの変化に対応した店作りが求められていると言うのだ。
すかいらーくに代わってグループの主力となっているガストもその例に漏れない。デフレを意識して低価格路線を追求してきたが、逆に単価の高いメニューへの対応力が落ちている。店舗の立地も、これまでは郊外への出店が中心だったが、これからは都心回帰、駅への出店が必要になると見ている。すかいらーくグループの既存店舗は4400、その再生を目指した改革がこれから本格化する。
外食産業の市場規模は、ここ10年間、縮小傾向が続いている。しかし、どれだけ日本人が「食」を外に求めているかを示す「食の外部化率」(外食+中食)は年々増えていて、今では42%に達している(数字が高いほど外に食を求めていることになる)。アメリカの食の外部化率は50%を超えていて、「日本も50%を超えるのは時間の問題」とも言われている。ここに外食産業の成長の鍵があると横川会長は見ている。
すでに、すかいらーくグループでは、ガストやバーミヤンで宅配事業を始めると共に、お弁当や惣菜を扱う業態を開発。更に持ち帰り寿司の小僧寿しをM&Aによってグループに取り込むなど中食市場への進出を本格化させている。「アメリカでは買ってきたピザを家で温めたものでも家庭料理になるなど、家庭料理の概念さえも変わってきている。女性の社会進出も更に進むことを考えれば、中食に入っていかないと外部化の流れの中で生き残れない」と横川会長は話す。
「再上場も考えている」と言う横川会長。それが実現するとき、新すかいらーくはどこまでパワーアップしているのだろうか。
|