第294回 2006年8月19日放送
「このままでいいのだろうか」と転職を考えている人は少なくないはず。「その為に何か手に職を付けなくちゃ」と考える人も少なくないはず。そんな人たちの駆け込み寺の一つが専門学校やカルチャースクールだ。
数ある専門学校・カルチャースクールの売上高ランキングを見ると、英会話のNOVAが1位で国家公務員試験対策の東京リーガルマインドが2位。3位はヒューマングループの人材教育部門のヒューマンアカデミー。そして4位は、医療系の資格などを取り扱うニチイ学館となる。その中で、NOVAや東京リーガルマインドなど専門分野がはっきりしているスクールと一線を画し、幅広い分野で講座展開をしているのがヒューマンアカデミーだ。
その陣頭指揮を執るのはヒューマンホールディングスの佐藤朋也社長。1991年にご尊父が創業されたザ・ヒューマンに入社し、2001年に37歳の若さで社長に就任した人物。佐藤社長は、翌年、持ち株会社ヒューマンホールディングスを設立し、ヒューマンアカデミーを柱とする人材育成部門と、ヒューマンリソシアを柱とする人材派遣部門とを二本柱とするヒューマングループを率いている。〈売上高比率は人材育成が62%、人材育成32%〉。
まずは、人材育成部門だが、ヒューマンの人材育成のコンセプトは「時代に合わせた新しい職業を中心に講座を広げてゆくこと」。職業の多様化を背景に講座の数は増え続け、今や1016講座、18,000人が受講している(2006年8月現在)。内容は資格取得を目指したものがメインで、カラーコーディネーターや気象予報士、社会保険労務士、CADオペレーターにWEBデザイナー、医療福祉など幅広い。どんな講座を設けるかは、受講生のニーズはもちろんだが現場の声に押されて出来ることもある。例えば、ホテルの建設ラッシュの時、ホテル側から「ホテルマンが足りない」「インテリアコーディネーターが足りない」という声が挙がり、それに応える形でホテルマンやインテリアコーディネーターのコースが生まれた。
受講者の男女比率は男24%に対して女76%と女性が多い。ただ、コンピューター関連や通信教育では男性も多い。生徒の受講理由は時代と共に変化する。不景気の時は、就職に有利なように、と考えて入学する生徒が多いが、景気が回復基調にある今は、「好きなことを学びたい」というのが主流。たとえば『ホームヘルパー講座』の場合、この講座は即職業に結びつく講座ではあるが、その受講理由は「身内が倒れたときの基本的な知識が欲しい」という理由が増えている。また今年6月に開講した『フライトアテンダント講座』では、もちろん職業にしたい人も受講しているが、彼女たちのような身のこなしやメークの仕方を教わりたいと受講する人もいる。
これからの講座のキーワードは『きれい』『健康』『癒し』だと言う。スクール側には、仕事以外の部分をどれだけサポートできるかが重要になってきているのだ。例えば、昨年銀座にオープンしたセルフコンディショニングスタジオ。週に10回ほど行われるヨガのレッスンは女性限定で、「日ごろの仕事の疲れが取れる」「健康に良い」「体がキレイになる」などまさに『きれい・健康・癒し』で、経済的に余裕があり、生活を向上させたいというOLたちを中心に人気だ。また、新しい事業も展開している。今年5月にアメリカのネイルサロン『ダッシング・ディバ』を買収し、新たな女性限定ビジネスに乗り出した。これはネイルサロン経営だけが目的ではない。今年9月から、店を持つ技術やノウハウを学ぶことが出来る講座をスタート。ネイルサロンですぐに働ける即戦力の育成を始めた。佐藤社長は「この分野はこれから大きくなる。その入り口に我々がいる」と言う。しかし、「まだまだこの分野を教えられる人が少ない」と言い、だからこそ経験豊富なスタッフがいるネイルサロン買収に意味があり、大きなビジネスチャンスになると言う。
人材育成から始まったヒューマンだが、今では人材派遣(ヒューマンリソシア)も大きなビジネスに成長している。厚生労働省が2004年に集計した人材派遣の市場の売上高は2兆8000億円、派遣労働者は227万人と増加中。ヒューマンリソシアも2004年に18万人だったのが、今では2倍近いおよそ36万人まで増えていて、人材派遣市場の急成長振りが伺える。そんな人材派遣業界は今、「これ以上大きくなれるのかというくらい大きくなってきている」と言い、派遣するスタッフの数が不足しているという。終身雇用時代のように10年かけて教育し、それからその分働いてもらうほど企業側に余裕はなく、しかも、せっかく教育し育てた人材に転職されてしまうリスクもある。その結果、教育済の即戦力のニーズは高まっていると言う。
人材育成と人材派遣で成長をしてきたヒューマンが、今、最も力を入れているのがスポーツエンターテイメントだ。中でもバスケットボールは、日本で去年誕生したプロバスケットボールリーグ「BJリーグ」の初代チャンピオン・大阪エベッサをヒューマンは抱えている。バスケットボールに参入したのは、PR効果・CSR・そしてスクール展開という3つのシナジー効果が期待できたから。実は、ヒューマンは、バスケットボール選手の育成にまで乗り出しているのだ。今年、大阪に開講したバスケットボール・カレッジは、世界に通用するバスケットボール選手を育成することを目的とした全日制の学校で、年間授業料は110万円。コースは2年間。現在、全国から集まった53人がみっちりとバスケットボールに身を投じている。バスケットボール・カレッジは、選手だけでなくトレーナー専攻・コーチ専攻・ビジネスマネージメントの各コースがあり、プロ選手以外でも、バスケットに関わる職業への道が開けるように考えられている。ヒューマンは、この他にも全日制のフィッシングカレッジ(ルアー製作プロやつりのトーナメントプロ育成)やスノーボードカレッジも運営、スポーツ分野を開拓している。
時代の流れと共に、本当に色々な専門職が求められ、新たな職業が生まれているようだ。だからこそヒューマンのような会社が成長しているのだろう。
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