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第282回 2006年5月27日放送 オーケー 飯田 勧 社長

日本チェーンストア協会がまとめた全国のスーパーの売上高を見ると、1996年度をピークに減少傾向に歯止めが掛からない。しかし、その反面、店舗数は増えている。つまり、減り続ける売り上げを、以前より多くの店舗で取り合う大競争時代なのだ。こうした厳しい環境の中で、安定した成長を遂げてきたのが『オーケーストア』。1996年3月期と2005年3月期を比べると売上高は2倍以上、経常利益は6倍近くも伸びている。

その最大の理由は「オーケーで買われた客に絶対に損をさせないという姿勢」だと言う。掲げる標語は「Everyday Low Price」、毎日が低価格。実は、他のスーパーにあるような特売日というものがオーケーにはない。特売日を設けると、それ以前に買った客に損をさせることになるからだ。オーケーの各店舗では毎朝、競合店のチラシをチェックしている。他店よりも高い商品があれば即座に対抗値下げを実施する。更に、その商品のPOPに『競合店に対抗して値下げしました』と表示する。特売日はないが、競合店には価格で負けない、ということを徹底しているのだ。

そのオーケーの創業者が飯田勧社長。もともと酒問屋・岡永商店の三男だった飯田社長は、1945年の終戦の年に海軍兵学校を卒業し、実家の常務になる。そして1958年、その岡永商店の小売部門としてオーケーストア1号店を東京・板橋にオープンした。このころの日本は「アメリカにスーパーというすごいものが出来ている」と言われ始めていた頃で、ダイエー(1957年創業)、イトーヨーカドー(1958年)、西友(1963年)、サミット(1963年)なども、この時期に次々と創業している。実は、飯田社長がスーパーに目を付けたのは、もう一つ別の理由があった。実家の酒問屋で売掛金の回収に苦労を重ね、現金収入のビジネスをしたいと思っていたのだ。しかし、いざ始めてみると商品の仕入れ一つとっても分からないことだらけで試行錯誤の連続だったそうだ。

その飯田社長が、オーケーの基本理念として徹底してこだわる「Everyday Low Price」。何時でも何処でも誰よりも安いというポリシーは、様々な努力と工夫の積み重ねで成り立っている。その一つがメーカーの絞り込みだ。醤油やパスタなどの主力商品は、一つのメーカーからしか仕入れない。醤油はヤマサ、パスタはオーマイに限定することによって大量発注が可能になり、仕入れ価格が下がるのだ。

二つ目の努力と工夫は経費削減。その方法はユニークで、普通のスーパーではタダで渡される買い物袋がオーケーでは1枚6円と有料。折り込みのチラシも2週間に一度と抑えている。また、私がオーケーにお邪魔したとき、店舗以外のオフィス部分は照明をかなり抑えていて電気代の節約もしていた。地味だが、こうした一つ一つが大きな成果に結びついているのだ。そして三つ目の努力と工夫は、オーケー独自の自動発注システム。これは、コンピュータが過去の販売実績、天候、曜日などから最適な仕入れ量を予測して、メーカーに対して自動発注を行うというもので、商品の在庫ロスが半分になったという。ちなみにこのシステムはアメリカ、オーストラリアなどで特許を取得している。客は2割以上安くないと「安い」と感じないと言う。Everyday Low Priceは容易ではない。

「客を裏切らない」というのもオーケーの重要な姿勢だ。それを象徴するのが、客に要望や意見を記入してもらう『ご意見カード』。週に投函される数はおよそ400通!飯田社長はこれらの全てに目を通す。更に、週に一度、社長以下の経営陣や全店の店長、仕入れ担当者などが一堂に会して会議を開く。『ご意見カード』で寄せられた客の要望やクレームについて全社を挙げて検討するためだ。飯田社長は「これは生きたマーケティング。お客様にマーケティングしていただいている」と話す。もう一つ、オーケーならではのモノがある。店頭に張り出される『オネストカード』だ。「明日から値上げします」「今野菜が高騰していますから、冷凍野菜のほうがお得です」等々、隠さず正直に確かな情報を客に知らせようというものだ。買い控えを誘発するような店側に不利な情報も載せるため、売り上げが減ってしまうのではないかと心配になるくらいだ。

今、オーケーが目指している経営目標は「新規借り入れなしで年率30%成長」の達成だ。高度成長のまっただ中にあるインドのIT企業並みの成長率だ。この目標達成には売り上げを伸ばすだけでなく、客数も増やさなければならない。飯田社長は「熱烈なオーケーファンを毎年10%増やそう」と社内に号令をかけている。「総経費率15%」も重要な目標だ。売上高に対する経費の割合を15%以下に抑えられれば、ライバル店を圧倒する低価格が実現できるというのだ。オーケーでは今14%台を達成、これを維持していくという。因みに、一般的なスーパーの総経費率は30%(推定)。オーケーが欧米の大手スーパーの経営を分析したところ、総経費率が15%を切ったときに急成長しており、この数字は「次への大きなステップ」なのだ。

「我が家の近くにもオーケーストアがあったらいいのに」と思った方々も多いのでは。ご意見カードにも、よくそうした要望が入っているのだが、これだけは立地や資金などの問題があってすぐには返答できないそうだ。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • Everyday Low Price
  • オーケーで買われた客に損を絶対させない姿勢
  • 客を裏切らない
  • ご意見カードは生きたマーケティング
  • 新規借り入れなしで年率30%成長
  • オーケーファンを毎年10%増やそう
  • 総経費率15%
亜希のゲスト拝見

飯田社長は若かりし頃、遊び過ぎて、父親に比叡山のお寺に半年間入れられたことがあったそうです。そんなエネルギーいっぱいだった頃と変わらず、今もエネルギッシュな飯田社長は御年78歳。とても温和で、謙虚でゆっくりお話されるような印象はあるものの、その内容は竹を割ったように明快で、「この人にはかなわないな」と思わせるオーラを持っていらっしゃる。

例えば、飯田社長は毎日、本社ビルの下の階にあるオーケーストアで買い物をされる。(私も一日同行させていただきました)「お客様と同じように買い物をしなければ売り場のことは分からない」と自らカートを押して店内を回る。その光景は日常的なことのようで、お客様から声を掛けられたりもしていました。なんだか昔ながらの商店街のような雰囲気でしたが、ただ買い物をしているわけではありません。商品の名前に誤りはないか、賞味期限は大丈夫か、傷んだものはないか、と常に気を配られ、時には商品の陳列を直しながら買い物をされていました。これが毎日ですから驚きです。

そんな飯田社長の商売の原点が、商売の先輩である御尊父の「曲がったことはするな」という言葉。五人兄弟の飯田家は、そんなお父様から商売に関する様々な教えを毎晩聞かされていたそうです。その成果でしょうか、長男は家業を発展させ、次男はテンアライド、三男の飯田勧社長はオーケー、そして五男はあのセコムを創業しました。

「オーケーストアが理想の店」という飯田社長は「130歳まで社長をする」とおっしゃっていました。お体に気をつけて下さい。そして、いつか我が家の近くにもオーケーストアをつくってください!