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第253回 2005年10月29日放送

宮里藍選手、横峯さくら選手など若手女性プロゴルファーの活躍で人気が復活してきているゴルフ。しかし、まだまだ『高額なゴルフ会員権』『接待ゴルフ』や『バブル崩壊の象徴』『ゴルフ場の破綻』などのイメージも根強い。このゴルフにインターネットを使って新しい風を吹き込んでいるのが『ゴルフダイジェスト・オンライン』(以下GDO)。日本国内にある2400か所のゴルフ場のうち半分以上の1300か所と提携しているGDOは、会員数65万人に対して、ネット上でゴルフ場の予約サービスを行っているゴルフ専門の総合サイトである。

GDOが誕生したのは2000年。三菱商事の金融部門というゴルフと全く関係ない部署で働いていた石坂信也氏(39歳)が起業した。アイデアは石坂氏が1997年にアメリカのハーバード・ビジネススクールに留学した時に築いたようだ。当時のアメリカはちょうどITブーム。その時、インターネットを使えば小さな力でも世の中を変えられると感じた。なかでも不良債権を抱えている日本のゴルフ場を見て「これだ!」と思ったそうだ。何故なら、ここまできたらゴルフ場も構造改革をせざるを得ない。それにはインターネットの力が生かされると考えたのだ。「問題がある時こそチャンス」なのだ。

GDOのビジネスモデルは、ゴルフ場予約(E-booking)・ゴルフ用品販売(E-commerce)・ゴルフトーナメントなどのゴルフ情報の配信(E-media)を3本柱に、これらの3つのサービスを融合させ循環させている。例えば、初めてゴルフ場を予約した人が、新しいゴルフ用品が欲しくなっても、ちょっと上手になってゴルフ情報に興味を持っても、全てGDOで賄えるのだ。こうしてゴルフファンの世界を立体的に展開し、つなげている。収入は広告も一部あるが、大半はゴルフ関連用品のネット販売と、GDOを通じてゴルフ場予約した顧客から徴収する手数料だ。

GDOの特徴は、これらのサービスをインターネットの中のみで展開するのではなく、徹底した顧客主義に力を入れているところだ。例えばゴルフ用品の場合、ネット上で見ているだけでは実際に手にするのとは違い分かりづらい。そこでプロゴルファーに実際使ってもらい感想を聞き、それを映像で配信している。また実際の商品を顧客が試し打ちできることもできる。

また在庫を持たないのが特徴のオンラインショッピングの中では珍しく、専用の物流倉庫を備えている。人気商品を多めに確保して在庫切れの心配をなくしている。こうすることによって、注文の翌日には配送できるようになった。さらに、質の高い商品も提供できるようGDO専用の工房と職人がいて、ゴルファーオリジナルの商品も提供している。「オンラインが在庫を持たないのは過去の話。これだけ普及し特別なものではなくなった今では、在庫を持つのは当然の流れ」と見ているのだ。

ゴルフ場予約でも、顧客のニーズや声が集まっているGDOだからこそ、「ご飯が不味い」「駐車場が遠い」などの顧客の意見をゴルフ場にも伝え、より顧客のニーズを理解してもらうようアドバイザリー活動も行っている。このきめ細かいサービスが、顧客だけでなくゴルフ場をひきつけているのだ。

GDOの売り上げは55億円、経常利益1億円、従業員162名。2004年にはジャスダック市場に上場した。もちろん、楽天GORAやソフトバンク系のイーゴルフなどライバル企業もあるが、GDOのようなゴルフの総合サービスは展開していない。「ゴルフに特化はしているが、ゴルフ専門店ではなくゴルフ総合店にしたい」と石坂社長は強調した。

とはいえ、ゴルフ場を取り巻く環境は決して良くはない。趣味や娯楽が多様化する中、スポーツ人口は減少傾向を辿っている。ゴルフも例外ではない。しかもバブル時代に計画していたゴルフ場が、今頃になって次々と完成しており、過剰感が解消したとは言えない。経営破綻しているゴルフ場があるのに、ゴルフ場の数は増え続けているのだ。

このようにゴルフ場の供給過多だからこそ、「ゴルフ場の構造改革が必要だ」と石坂氏は考えている。例えば、法人重要から個人需要に転換させたり、接待用だけでなく女性やファミリーが楽しめるゴルフ場を作ったり、ハーフが終わったら必ず食事を取るということをやめたり、プレー代を値下げするなど、様々な層の人に来てもらうことをもっと考えなければいけない時代が、ゴルフ業界にも訪れている。「気軽で、楽しく、明るく、安いゴルフのイメージを広げるのが大切」と石坂社長は協調した。

将来的にGDOは、ほかのスポーツ分野にもビジネスを広げるのであろうか?石坂社長は「同じビジネスプランを採用できれば考えるかもしれないが・・」と述べるにとどまり、今はゴルフを大切にしたいようだ。ただ、海外市場にも注目している。東アジア、特にゴルフ場の数が規制されている韓国ではゴルフファンが日本のゴルフ場を利用するケースがある。また急速に経済成長し、高いゴルフクラブが売れているという中国でもビジネスを展開したいと考えている。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • インターネットビジネスは小さな力で世の中を変えられる
  • 問題がある分野にこそチャンスがある
  • ネット販売は在庫を持たないというのは古い考え方だ
  • 気軽で、楽しく、明るく、安いゴルフのイメージを広げたい
  • 注目市場は韓国と中国を中心とした東アジアだ
亜希のゲスト拝見

実は石坂社長のことはアメリカ留学時代から知っています。知り合いが活躍しているのを見るのは嬉しいような不思議な感覚です。当時の印象は日に焼けていて、流暢な英語で友達に囲まれ、英語名が『マイク』だったこと。

留学後は三菱商事を辞めるのだろうな、と言うのがもっぱらの噂ではありましたが、本当に帰国から僅か1年で辞めてしまったので大変驚いたのを覚えています。確かに当時のアメリカはインターネット大ブーム。どんな広告よりドットコム企業の広告が多かった時代です。その時に、石坂さんは色々考えていたのですね。感心します。

そして今やゴルフ総合サイトの社長と色々と変わってきているのですね。私は打ちっ放しには行くものの、なかなかコースに出る勇気がないまま時が過ぎています。そんな私のような人がゴルフを始めた時に、きっとゴルフ人口は増えていくのでしょうね。私の中のゴルフのイメージを一掃する時期なのかもしれません。

マイクさん、ぜひ頑張ってください。