第248回 2005年9月24日放送 新聞広告、ビルの壁面広告、電車内の広告など・・。世の中、広告写真で一杯だ。アマナはこうした広告写真の国内最大の制作会社である。国内最大というのも、他と比べようがない独自のビジネスを展開しているためだ。現在、売上高は約86億円、経常利益5億円、従業員数378人で、2004年にはこの分野として初めて東証マザーズに株式上場も果たした。 アマナの事業を大別すると以下の3分野に分けられる。 (1)写真制作・・・撮影スタジオは29面、所属カメラマンが46人、契約カメラマンは2000人もいる。各カメラマンはそれぞれ得意分野があり、食べ物をおいしそうに撮る人、宝石を撮るのが得意な人、ハウジングが得意な人、自動車などは車種によって得意な人が違うとのこと。 (2)フォトストック・・・アマナの写真在庫は国内No.1。アマナ独自で300万点、国内外の提携会社を合わせると7300万点以上のストックがある。風景画や動物写真、アートなど実に多種多様で、全て著作権あるいは使用権を持っている。これらの膨大な写真を貸し出したり、それを使って広告写真を制作する。 (3)デジタル画像処理・・・「デジタル処理されていない広告写真はもうほとんどない」と進藤社長が言うように、アマナでは早くからデジタル画像処理に取り組んできた。デジタル技術によって、天候や場所に左右されずに写真撮影が行え、制作効率がお大幅に向上したほか、表現できる世界も大きく広がった。進藤社長も「これまでの『写真』から『写心』への変化が重要だと説く。アナログの時代は「何が映っているか」が重要だったが、デジタル処理で何でも出来るようになると、「何を伝えたいのか」という制作者の想いが問われることになるわけだ。 進藤社長自身も、もともとはカメラマンだった。高校時代にカメラに魅せられ、親に頼み込んで大学4年分の学費をもらい、専門大学に通いながら残りのお金はすべてフィルム代に使ってしまったという。卒業後は、フリーのコマーシャル・フォトグラファーとして活躍していたが、1979年に27歳の若さで会社を起こした。それだけにビジネスとなった場合、職人気質のカメラマンの長所も問題点も十分に把握していた。そこで設立当初から取り入れたのが「プロデューサー制度」だ。 アマナにおけるプロデューサーとは単なる営業マンのことではなく、顧客との価格交渉から契約、日程調整、カメラマンの人選から手配など一切を担っている。芸術肌のカメラマンは、納得できる仕事をしたいという強い思いから、ややもすると納期がずれ込んだり、コスト意識が二の次になってしまいがち。そこで、カメラマンには写真制作に集中してもらい、プロデューサーは案件ごとに最適な流れをつくるという分担だ。このシステムが成功し、プロデュ―サーの増加とともに会社の売上高も増えてきている。現在、プロデューサーは90名ほどだが、来年には100名超、将来的には300人体制にしたいと進藤社長は考えている。 このように写真制作をビジネスモデル化することに成功した進藤社長だが、やはり広告写真で一番大切なことは、「あ!」とか「おぉ!」などといった感嘆詞が思わず口から出てしまうような作品だと言う。いかにして「財布の紐を弛めてくれるような広告写真」を提供できるかが腕の見せ所というわけだ。 消費者ニーズが多様化する中、もはや年齢や性別だけで広告を打つことは難しくなっている。そこでアマナでは、感性と写真の関係を分析してマーケティングに生かすという新しい取り組みを行っている。風景写真が好きな人、インパクトの強い写真が好きな人、穏やかな感じの写真を好む人など、感性はまさに人それぞれ。広告主が発信したいメッセージを消費者に的確に伝えるためには、どのような写真が最も効果的なのか。反対に消費者一人一人が好む写真の傾向を掴めば、どのような広告を打てば効果的かが分かるという。広告も『マス』から『個』の時代に移りつつあるようだ。 |