第245回 2005年9月3日放送
世界中で1日13億杯も飲まれており、世界で「Hello」の次に知られている英語とも言われる「CoCa- Cola」。コカ・コーラシステムは世界200ケ国以上で展開されている。米紙ビジネス・ウィークによると、ブランド価値は世界No.1の704億ドル(ちなみに2位はインテル、3位はIBM)。ディズニーよりもマクドナルドよりもGEよりも上である。
飲料のコカ・コーラが生まれたのは偶然の出来事だった。1886年、アメリカ・ジョージア州の薬剤師のジョン・ペンバートン博士が真鍮の大なべで煮込んで作り上げたシロップが原型だそうだ。それに水を混ぜて売っていたのだが、ある日誤って炭酸を入れてしまったら、それが実においしいと評判になった。それがコカコーラ誕生の瞬間だった。
そして、アメリカ・ジョージアのコカ・コーラが世界のコカ・コーラにまで成長した背景には『マーケティング』の力が大きな役割を果たした。コカ・コーラの味と、「コンツアーボトル」と呼ばれる独特の瓶は一貫して変わっていないが、その時代時代に合わせた巧みなブランド戦略とマーケティングで成長してきたのだ。
例えば、コカ・コーラの人気を世界に広めたのが1931年のクリスマスキャンペーン。それまでサンタクロースの衣装は白と青を基調としていたが、赤と白の衣装をまとったサンタクロースがコカ・コーラを持った広告を打ち出した。それ以来、サンタクロースの衣装といえば赤色が定着したというから驚きだ。
こうした巧みなマーケティング戦略は日本国内でも大成功を収めた。日本でコカ・コーラの一般販売が開始されてから僅か5年後の1957年、あの『スカッとさわやか コカ・コーラ』のキャッチ・フレーズがテレビCMとして流れた。高度経済成長に向かう日本人のアメリカ文化への憧れなどもあり、このキャッチ・コピーは大成功。日本コカ・コーラはアメリカのコカ・コーラ社も注目するほどの急成長を遂げた。それから50年、日本コカ・コーラは清涼飲料業界のトップの座を守り続けている。
しかし、清涼飲料業界では激しい競争が繰り広げられているのも事実。日本コカ・コーラとしても安泰とはしていられない状況にある。そこで招かれたのが現社長の魚谷雅彦氏だ。ライオンに入社し、アメリカ・コロンビア大学でMBAを取得、その後クラフトジャパン副社長を経て、1994年に日本コカ・コーラ社に移った。女優の飯島直子さんを起用して『男のやすらぎ』をキャッチフレーズに缶コーヒー「ジョージア」のコマーシャルを手掛けたことでも知られている。2001年に26年ぶりの日本人社長となった。
現在、魚谷社長が力を入れて取り組んでいるのが「ブランドの強化」と「史上例のない構造改革」である。
【ブランドの強化】
創業以来使用してきた『スカッとさわやか』というキャッチフレーズを40年ぶりに変えた。2001年には『NO REASON COCA-COLA』、そして現在は『つながる瞬間(とき)にCoca Cola』となっている。絶えず時代の流れを読んできたコカ・コーラが今の時代の人々、特に若者の感性や趣向を表現したものだ。
そして、何よりも新商品開発に力を入れている。全世界のコカ・コーラブランド飲料はおよそ400ある。そのうち日本では25種類と世界で最も多いという。『コカ・コーラ』『ジョージア』『爽健美茶』『アクエリアス』が4大ブランドだが、最近では『Coo(クー)』、緑茶『一(はじめ)』、機能性飲料の『アクティブダイエット』、健康飲料の『大豆ノススメ』など随分と多種多様な商品を展開している。なかでも今年、缶コーヒーの「ジョージア」を全面的にリニューアルした。あらゆる清涼飲料の中でトップの売上高を誇るビッグ商品の今後の展開が注目される。
【史上例のない構造改革】
コカ・コーラといえば独自のボトラー制度が有名だ。これは創業以来、全世界のコカ・コーラが採用してきたビジネスの大原則だ。もちろん日本でもその理念は守られ、日本コカ・コーラとは資本関係のない全国のボトラー会社が、原材料の調達から製造、物流までを独自の裁量で行い、地域に密着した活動をしてきた。
しかし、顧客であるスーパーやコンビニが全国チェーン展開するようになると、地域密着型営業だけでは対応しにくい面も出てくる。そこで今回、全国のボトラー会社と日本コカ・コーラの共同出資で新会社を設立、原材料の調達・製造・物流を一元管理する日本コカ・コーラシステムをスタートさせた。魚谷社長と各ボトラー会社が3年間にわたって話し合った成果だ。
一元管理によって工場や倉庫を整理統合、在庫日数の大幅な短縮も可能となった。世界に例を見ない大構造改革によって日本コカ・コーラは、2007年度までに約250億円のコスト削減効果を見込んでいる。「日本コカ・コーラの次の一手は?」・・・ライバル企業も注目する中、魚谷社長は「コスト削減分は、値下げには使わない。企業価値を高めるために使う。設備投資、商品開発、人材開発などだ」と攻めの姿勢を強調する。最後に魚谷社長は、「今後力を入れることは、商品だけでなく日本コカ・コーラという企業ブランドを高めていきたい。人と人を潤すブランドにしていきたい」と語った。
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