第229回 2005年5月14日放送 ミズノは世界の一流スポーツ選手を支えている。水泳の北島康介選手、卓球の福原愛選手、ハンマー投げの室伏広治選手などが使っているスポーツ用具はミズノ製。海外に目を向けても、大リーグで活躍して いるイチロー選手や松井秀喜選手など144人の大リーガーがミズノの製品を使っている。野球グラブの市場シェアは、国内で40%、本場アメリカでも30%近くを誇っている。さらに、あのカール・ルイス選手が世界新記録を出した時に履いていた靴もミズノだ。シドニーオリンピックの水泳競技で、金メダリストの8割がミズノの水着を着用していたそうだ。 ミズノの創業は1906年。創業者の故・水野利八氏が運動服の注文生産から始めた。なかでも、水野利八氏が心奪われたのが18歳の時に偶然見た野球。実は今の実業団野球も春夏の高校野球も水野利八氏の尽力によるものだそうだ。今、数多くの大リーガーがミズノの野球用品を使っているのも、100年ほど前の水野利八氏の想いが伝わっているのだろうか。 現在、ミズノを率いているのが創業者の孫に当たる3代目社長・水野正人氏。子供の頃から「お前が跡取りだ」と言われていたという。「人柄・リーダーシップ・能力があり、みんなに認めてもらわなければトップにはなれない」など帝王学を学んでいった。そんな水野社長は「より良いス ポーツ用品とスポーツ振興を通じて社会貢献しよう」を企業理念に、世界的な『 ミズノ』ブランドの確立を目指している。 ミズノが力を入れる「高品質」「高機能」の新製品開発。その舞台裏では、一流選手と最新テ クノロジー、そして匠の技の連携が重要な役割を果たしている。例えば陸上の末續慎吾選手の新しいシューズを開発する場合、まず末續選手が走った時の足の裏の圧力などを科学的に分析し数値化する。ちなみに彼の足は土踏まずに筋肉がついている特徴的な足だ。しかし、一流選手になるほど、数値だけでは表現できない微妙な感覚が極めて重要になる。実際、末續選手は『私は100メートルを46〜47歩で走る。だからトラックのゴムをしっかり走っている感覚のものが欲しい』という。この漠然とした微妙な「感覚」と科学データをもとにして最終的な形にしていくのが「匠の 技」だ。ミズノでは、30年以上のキャリアを誇る職人が、選手と一体となって新しい商品の開発にあたっている。 しかし、スポーツ用品市場に目を転じると現状は甘くない。国内経済の低迷と少子化、さらにはスポーツする場所そのものが減っていることや、コンピューターゲームの影響などで、日本のスポーツ人口は減っており、その結果、ミズノの国内売上高も減少傾向が続いている。その国内市場の不振を補っているのが海外販売だ。1990年代から積極的に海外進出しており、なかでも2008年に北京オリンピックが開催される中国 は魅力的な市場だと言う。ミズノの中国における販売拠点数は600ケ所を超え、業界では最大規模を誇っている。特に、いま中国ではゴルフブームで、水野社長もビックリするくらい高価な ゴルフクラブが飛ぶように売れているそうだ。 もちろん、国内市場の掘り起こしにも力を入れている。スポーツ・ウエアでありながら、ファッション性に優れた新商品の販売に力を入れているほか、ス ポーツ人口そのものを増やすために、スポーツ振興団体を支援したり、スポーツ・イベ ントやスポーツ教室などを開催している。さらに高齢化社会の本格的な到来を迎え、スポーツを通じて健康をサポートする商品やプログラムの開発にも力を入れている。 最後に水野社長は「スポーツは身も心も健康にできるパワーを持つ。しかも文化や言葉を超えて交流できる」と語り、スポーツの持つ力の大きさを強調した。 |