第228回 2005年5月07日放送 お隣の国・韓国。今や韓流ブームですっかり身近な国になったのかと思えば、竹島問題などで反日運動が起きてしまう。そこで韓国経済の現状について、韓国経済研究の第一人者である深川由紀子教授に聞いた。 (1)『国内経済』・・・韓国の国内経済はジェットコースターのように激しく変動する。1997年のアジア通貨危機から大混乱に陥ったが、大胆な構造改革とITブームでいったんはV字型回復を果たした。しかし、ITブームの崩壊もあり、現在の国内経済は低調に推移している。失業率は4%台、とくに若年者の失業率は8%近くに達し、実に5人に1人は就職できない状況だ。確か に失業率の数値だけ見ると日本と変わらないのではと思えるが、実感としては韓国のほうが厳しい。それというのも、韓国では急激な構造改革の中で、中堅企業が姿を消してしまった。その結果、サムスンなど圧倒的なグローバル企業か、あるいは小さなIT企業、飲食店、サービス業とに2分化されてしまい、仕事の数が減ってしまった。さらに、仕事があっても安定的な形での非常用雇用者が圧倒的に多いという。 (2)『正社員への道』・・・現在、韓国では空前の英語ブーム。どの語学教室も一杯だそうだ。今、韓国女性の結婚したい男性の条件でNo.1である「勝ち組企業」に入るには英語は必要不可欠。例えばサムスンに入社するためにはTOEICで最低950点取らないとダメだそうだ。海外留学する学生も多く、MBAを取ろうとしている人も多い。しかし、それでも就職できない人も少なくない。このように勉強していても就職できない人のことを『韓国版ニート』という。 (3)『少子化』・・・韓国の少子化問題は日本より深刻だ。出生率は1.2%。最大の原因は国内経済の不安定さ。夫婦共稼ぎは当たり前になっているし、正社員になった人はその職を手放さないようにするばかりに生み時を逸してしまうそうだ。子供の教育費も負担が重い。少子化からの脱却の道は厳しい。 (4)『深刻なカード破産者』・・・内需拡大策の一環として政府はクレジットカードの普及を推進してきた。中学生までもが複 数のクレジットカードを持つこともあったという。大人の場合、一人で20枚も所有していた人もいる。しかし、結局、使い過ぎてカード破産する人が後を絶たず、カード破産者は400万人に達する。また予備軍も含めると国民の約20%の人がクレジットカードの支払いに苦しんでいる。 (5)『勝ち組企業の凄さ』・・・日本ではそれほど大きな存在感はないサムスンだが、インドや中国など世界各国でサムス ンの看板が掲げられている。今年1月、サムスンが2004年12 月の決算で純利益で1兆円を突破し、インテルを抜きITの世界トップレベル企業になったとの ニュースが世界を駆け巡った。サムスンを追うLGやヒュンダイ自動車など勝ち組企業のキー ワードは輸出に比重をおいたグローバル企業であること。世界の携帯電話の3台に1台が韓国企業の製品である。日本企業は使いこなせないほどの高機能・高付加価値製品で勝負しているのに対して、韓国企業は消費者が求めている機能にとどめ、デザイン重視で、低価格な商品を作り上げているのがグローバル競争で躍進を遂げている勝因なのだ。 (6)『日韓関係』・・・日本における空前の韓流ブーム。一方、韓国でも若者を中心に日本のアニメや漫画 が浸透している。しかし、依然として反日感情も根強い。これは、お互いへの期待感が大きくなっている分だけ、何かのきっかけで、がっかりする度合いも大きくなるからだ。例えば教科書問題の場合、「どのアジア諸国も日本が最も成熟した市場や社会であると思っている。それなのに、どうして歴史認識やアジア関係を見直そうとしないのか?日本は大変おかしな国である」という感じだ。 |