第222回 2005年3月26日放送 『不良債権問題の象徴』、 『大きすぎて潰せない』と物議をかもしたダイエー。自力で再建したいダイエー側と産業再生機構の支援を仰ぎたい主力銀行との間の迷走劇は、我々のまだ記憶に新しい。この迷走劇は去年の10月に産業再生機構が手がけること落着し、今年3月にダイエーを支援する民間企業も決定した。30社の要請企業から選ばれたのは、中堅企業の事業再生に実績がある企業買収投資ファンドのアドバンテッジ・パートナーズと、食品流通に強みを持つ総合商社・丸紅。産業再生機構社長の斉藤惇氏はこの2社に決まった理由を「中立性と柔軟性があるグループ」と見なしたからだということだ。しかし、これだけではダイエーは再生しない。斉藤社長も「ダイエーは主婦からも市場からもNOを突きつけられた以上、今までのやり方では再生は不可能」と考えている。で は、どうすればよいのか? 三つの再建計画を掲げている。 - 総合スーパーから食品スーパーへの転換を図る・・・赤字を出していた食品以外の電化製品や衣類などからは撤退する。日本の消費者ニーズは非常に厳しいが、そんな顧客を満足する食材を提供する。
- 不採算の53店舗から撤退し、食品スーパーを100店舗出店する。・ ・・これは地元の反対もあり大変ではないかと思われるが、斉藤社長は「ダイエー再建にはダイエーとは関係ない人の税金も使う。しかも産業再生機構の債権が売却されるまでの3年間で再生させ、借りた分を国庫に返さなければならない。もしすべてを返せなくても国が保証はしてくれるが、それも国民の税金。私は納税者の立場に 立って仕事をしている。だから病気になってしまったダイエーを運営させ続けることは出来ない」語った。
- 外食やホテルなどのノンコア事業を売却する・・・もうすでにこれらの事業を買いたいという要請が多数きている。
以上が、再生機構が描くダイエー再建策の骨子だが、果たしてダイエーは再び、我々の身近なスーパーに返り咲くのか、今後の取り組みが注目されている。 産業再生機構がスタートしたのは今から2年前の2003年3月。今年3月に支援する企業の選定が終了した。当初の目標支援数は100社。しかし結果は41社と目標の半分だったが、これは110社余りの要請はあったものの70社は再生無理と判断し、結果的に41社になったためだそうだ。それでは、持ち込まれた案件の中で最も多かったパターンは何か?最も多かったのが、技術力も顧客もしっかりしているにもかかわらず、過剰債務・過剰投資で経営が立ち行かなくなったケース。この現状を見て、「優秀は社員が優秀な経営者とは限らない。もっとカネの借り方、カネの意味を考える経営術を見につけなければならない」と斉藤社長は企業側の問題点を指摘。また「銀行側も企業のフォローがしっかりとなされていない。企業の生産性や利益率ではなく担保価値ばかり気にしていた」と苦言を呈した。 それでは、どうしたら企業を再生できるのか?それは斉藤社長が度々口にした 『効率性』がキーワードだ。「日本はカネ余りといわれながらも、その使い方に無駄が多い。日本はカネ一単位が生み出す生産性は世界一低い。もっと効率よくできるはず」。例えば、国が産業再生機構に当てた予算は10兆円だったが、実際使ったのは1兆200億円 と予算枠よりはるかに低い。この差は機構側の効率性だという。「10兆円は国が作ってくれたもの。しかし、企業再生を分かっている人が計算したら、こんなにいらないと分かるはず。1兆円から2兆円あれば10社くらいの企業が再生できる」と考えていたそうだ。では、10兆円とは一体どうやって算出された数字だったのだろうか? また企業再生といえば最近注目されているのが企業買収。しかし、企 業再生のプロ・斉藤社長から見た日本の企業買収はまだまだ初心者で、大勢の人が少しずつ分かっている状況だそうだ。では、企業買収先進国のアメリカではどうなのか?M&Aブームのアメリカにはプロが数多くいる。そもそもアメリカでM&Aが盛んになったのは、アメリカ経済の先行き不安からだ。一から土地を買って工場を建てるよ り、出来上がった企業を買収して再生する方が手っ取り早いという発想だ。つまり、「M&Aはマネーゲームではなく産業政策」なのだ。日本でもM&Aの意味をきちんと理解し、プロを育てることが急務ということだろう・・。 最後に「この2年間、財務会計や企業再生のやり方を見せることが出来た」と自信を覗かせた斉藤社長。ただ、タイムリミットまであと3年。ダイエーやカネボウをどう再生させるか、斉藤社長の手腕が問われる。 |