第216回 2005年2月12日放送
みずほコーポレート銀行は、みずほフィナンシャルグループの中で、大企業向け取引に特化した銀行として位置づけられる。社員4700人、2004年度の当期利益は5121億円で、みずほグループ全体の約80%を稼ぎ出している。
しかし、他のメガバンクと同様に不良債権問処理は最大の課題だった。敢えて過去形にしているのは、斉藤頭取曰く「もうほとんど終了している」からだ。斉藤氏は各営業所に散らばっていた不良債権を一か所に集め、150人の専門家を集結し処理させた。その結果、2002年9月の時点で5.4兆円もあった不良債権を、2004年12月には1.9兆円まで削減。不良債権比率も2.8パーセントにまで低下した。今年3月には2.1%まで下げる目標だ。「メガバンクの中で一番低いと自信をもって言える」と斉藤頭取は、これまでの成果に胸を張った。
「もう守りは疲れた」という斉藤頭取は、新市場への攻めの戦略に力を入れている。その1つがシンジケートローンだ。シンジケートローンとは、複数の金融機関がシンジケート団を組んで行う協調融資のこと。このシンジケートローンでみずほコーポレート銀行は、国内市場でのリーディング・カンパニーとなっている。あの六本木ヒルズもみずほコーポレート銀行が実施したシンジケートローンの代表例の1つである。事業者側にとっては複数の金融機関が参加することによって巨額な資金調達が可能になり、一方、金融機関側にとってもリスクを分散させられるメリットがある。
既にアメリカのシンジケートローン市場は100兆円を超えており、国内市場でも、今年度は5年前の6倍以上の25兆円が見込まれる有望市場だ。みずほでは、この分野の専門家が20人しかいなかったが、斉藤頭取は6部・200人体制に強化した。現在、この分野でみずほコーポレート銀行は4割のシェアを誇っている。
また、みずほコーポレート銀行は、企業が抱えている諸課題を、財務面だけではなく事業戦略に関しても解決するソリューション・ビジネスにも力を入れている。こうした新ビジネスに共通していることは、情報提供の対価となる手数料を得ること。日本の伝統的な銀行業務では利鞘収入が全体の8〜9割を占め、手数料収入は僅か1〜2割であった。既にみずほコーポレート銀行では、手数料収入の比率が43%程度まで高まっているが、斉藤頭取は、近い将来、利鞘収入が全体の5割、残りの5割を手数料収入で稼ぎ出す考えである。
もちろん、この手数料ビジネスでは、外資系金融機関が先行しているが、斉藤頭取は外資と同じような手段は取らないという。外資型のソリューション・ビジネスは、1回実施して巨額の手数料を徴収するケースが少なくないが、みずほコーポレート銀行ではビジネスを実行した後も次々と提案していき、企業を手助けする『deal after deal 営業』。つまり資産回転型ビジネスを中核ビジネスとしていく考えである。
斉藤頭取は、グローバル・ネットワークの構築にも力を入れている。みずほグループは資産規模では世界一だが、株式時価総額でみると世界15位。企業価値を上げるにはグローバル戦略が不可欠。特に中国・インドを中心としたアジア市場に重点を置いている。中国には支店と事務所合わせて10か所、インドには2か所の拠点を構えている。業務内容も国内と同様に全ての分野を展開する予定だ。
「メガバンクは、ただ大きいだけではダメ」と語る斉藤頭取。金融機関も他の業種と同じように、独自性を発揮してグローバルに競走する時代に突入しつつあるようだ。
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