第208回 2004年12月11日放送 「今もまだオーバーバンキング状態である。こうした中で銀行が生き残るためには徹底した独自性を出すしかない」と力説したのは、りそな銀行の持ち株会社・りそなホールディングスの細谷英二会長だ。細谷さんは、国鉄の民営化に向け敏腕を振った『国鉄20人衆』の1人である。 そんな細谷さんが会長に就任した当時、りそなを取り巻く環境はきわめて厳しいものだった。2003年3月に誕生したりそなは、預金量34兆円、支店数600を超える国内5番目の巨大金融グループだった。しかし誕生から僅か2か月後の2003年5月、自己資本比率が4%を大幅に割り込んだことから2兆円の公的資金の注入を受け入れ、事実上の国有化に追い込まれてしまった。そして、りそな再建のために白羽の矢が立ったのが細谷会長というわけだ。 細谷さんは、『普通の銀行』『サービス業としての自覚』というキーワードを掲げ、様々な改革に取り組んでいる。 (1)バランスシートの是正 財務内容を見直しコストを削減。アウトソーシングできるものはアウトソーシングする。システムも2005年9月には統合して事務処理を簡素化し、効率を高める予定だ。「銀行員というホワイトカラーの目で見て分からないことも、ブルーカラーの目で見るとまだまだコストの削減はできる」と細谷さんは厳しい。 (2)霞ヶ関を見ず、顧客を見る りそなの目指す方向は、メガバンクでも地方銀行でもないという。両者の隙間を狙う銀行にしようとしている。メガバンクのようにボリュームを増やすことに注力し過ぎると顧客は離れてしまう。一方、地方銀行にはない全国ネットワークも持っている。そのため独自のサービスを提供できると考えているのだ。 実際に『現場主義』『地域発』『お客様の視点に立つ』などをスローガンに、ユニークなサービスを展開している。銀行の店舗内で音楽ライブを開催したり、地元の人気デザイナーにキャッシュカードをデザインしてもらったりと。さらに銀行の悪いイメージの1つである『待ち時間が長い』という批判の声に応えるために『待ち時間ゼロ』の店作りにも取り組んでいる。 (3)従業員の心の改革 細谷さんは「国鉄時代のブルーカラーの人より、ホワイトカラーの銀行員の意識を変える方が大変だ」と漏らした。ブルーカラーの人はいったん方向が決まれば全員が一丸となって動くが、ホワイトカラーの人は「本当に細谷会長に付いて行っても大丈夫かな?」などと考えてしまうのだろうと捉えている。 そこで細谷さんは、行員に刺激を与えるような取り組みをさせている。その1つが他業種とのアライアンスだ。例えば、提携した生命保険会社のアリコや牛丼の吉野家、さらには東京ディズニーランドに行員を派遣している。また銀行内にも様々な業種の人を中途採用し、行内に刺激を与えている。外の世界を見せることにより「もっと高いサービスの世界を体得させるのだ」と細谷さんは語った。 最後に細谷さんは「公的資金2兆円は10年以内に返済する」との意気込みを見せた。 |