第207回 2004年12月04日放送 「27年ぶりにプロ野球が帰ってくる」として、全国の注目を集めているのが宮城県だ。現在3期目の浅野史郎知事は、突如舞い込んできた新球団の誕生に「ヨシ!」と大喜びしたそうです。 新球団の誕生はプロ野球界に新風を巻き込んだだけでなく、『東北楽天ゴールデンイーグルス』の球団名からも分かるように、人口1000万人を抱える東北全体への波及効果も期待されている。日本ハムの北海道への経済波及効果は200億円、楽天イーグルスのもたらす宮城県への経済効果は127億円以上と試算されている。浅野知事によると「他県からも試合をウチの県でもやらせて欲しいとオファーが来ている」。すでに球場のある仙台駅東口は不動産物件を求める企業が増えており、特に大手コンビニの対応が早いそうだ。 新球団の参入は、経済効果だけでなく宮城県の認知度向上にも大きく貢献している。「これまでは、宮城県への企業誘致を説明する際、東京から交通の便が良いとか、東北大学があるなどと熱弁をふるわなければならなかったが、今では『楽天イーグルスの来た宮城県です』と説明すれば十分分かってもらえる」。大変な宣伝効果だ。浅野知事は「球団と行政の新しい形を作りたい」と言う。「行政が出せる資金には限界があるので、資金面ではない形で協力し独自性を持たせたい」。そして「最も成功の鍵となる『地域密着型の球団作り』をしていきたい」と語った。 このように明るい話題のある宮城県だが、地方経済としては依然として厳しい状況が続いている。例えば農業の場合、独自性を出し頑張っている農家もあるが、宮城県の農産物全体の産出額は年々減少している。中でも『ひとめぼれ』『ササニシキ』などのブランド米を持つ宮城県は、東北の中で最もコメに偏重している(全体の45%)。これではリスク管理のうえで問題があると、畜産や野菜、漁業などの比率を上げ『食材王国・宮城県』にしていく計画だ。 また中小企業を非常に多く抱えており、倒産や失業などの問題も山積している。そこで『緊急経済産業再生戦略事業』を県独自で推進。2015年度までの期限付きの政策としたが、その理由は「スーパーの大売出しのように、期限内に企業が参入してくれれば特例がありますよ、というやり方です」と浅野知事。新事業を育成し、新しいモノづくりの芽を出していくのが目的だ。 浅野知事は、厳しい地方経済を打破するため、国に対して革命を起こそうとしている。その内容は『国からの地方の自立』。現在、国の予算の半分以上が補助金だ。これでは地方は自立できない。だから補助金を『削減』ではなく『撤廃』しなければいけないと考えている。 しかし明治時代から続く制度を変えるには「相当な政治的努力が必要だ」と実感している。なぜなら知事本人が東京大学卒業後に厚生省(現在の厚生労働省)に入省、補助金の分配業がいかに省内の仕事の大きなウェイトを占めているかを体験してきているからだ。地方への補助金を無くすということは、「霞ヶ関の人々にとっては仕事を失うことであり、地方への権益や権限がなくなることだ」と浅野知事は考えている。この長年積み重ねてきた霞ヶ関のDNAを壊そうとしているのだから、浅野知事はこの取り組みは『革命』だという。 こうした中、2004年11月に政府・与党が決めた「三位一体の改革」に、浅野知事は「今度こそ!」と期待を寄せたが、結果的には「総理の指導力がない。失望した」ものだった。削減額はもとより、最も削減しなければならない公共事業ではなく、義務教育費や国民健康保健の削減に手をつけている。そして「何よりも三位一体改革の大義が国民に伝わらなかった。ネーミングから失敗した。『地方自立改革』の方が分かり易かった」と悔しさを滲ませ、今回の改革に『落第点』をつけた。 |