第205回 2004年11月20日放送 『ヒロタのシュークリーム』といえば、手みやげの定番の1つだ。創業80年の老舗メーカーだったヒロタが突然、経営破たんした。バブル時代にカフェやオフィス経営など事業を拡大し過ぎたためだ。 そのヒロタを買収し再建したのが21LADY社の広野道子社長だ。2002年にヒロタが民事再生法を適用した時、10数社が再建に名乗りを挙げた。その中から、会社設立2年、年商2億円の小さな会社が選ばれた理由を広野さんは、「ヒロタのブランド、事業、社員全てを存続させたまま再建するという案が高く評価された」という。 2002年6月、広野さんはヒロタを100%子会社化した。「早く実績を出すことが重要」と考える広野さんは、女性の視点を生かすという新しいやり方で改革を進めた。その改革とは以下の通りだ。 - 9割もあった赤字の直営店を建て直し、150種類もあったアイテムを半分に減らした。
- 日本の個人消費280兆円のうち「8割は女性が決定権を持つ」と考えて いる広野さんは女性の集客力向上に力を入れた。かつては古くて暗いイメージだった店内を明るくし、ロゴも白と青のさわやかなものにした。商品作りも、かつて生産部門の意見をもとに商品化していたのを、「消費者の目線でのモノづくり」に方針転換。従来のシュークリームを残しつつも、女性の好きな限定モノやパッケージ などに変えた。その結果、それまでは男性客が多かったヒロタの店舗に女性客が増えた。
- 働く人の意識を変えた。未経験であろうと年齢が若かろうとも、 頑張って工夫し、実績を上げた人に責任を持たせていった。例えば、ヒロタで一番大きな新橋店の店長は21歳の女性だ。
こうした改革によって、21LADYはヒロタを半年で黒字化することに成功。しかも、「早く実績を上げたことで、老舗ヒロタの古くからのファンも付いてきてくれた」と振り返る。21LADYの会社再建事業はヒロタだけではない。かつてダイエーの100%子会社だった英国式パブ・チェーンの『HUB』、目の前でシュークリー ムを作り販売するフランチャイズの『シューファクトリー』などを手がけている。将来は100億円規模の事業を10社ほど展開するのが目標だと言う。なぜ1つの事業規模が100億円かというと、広野さん自身の経験からベンチャー企業としてスピード感が出せるギリギリの規模が100億円と考えているからだ。これ以上大きいと、組織が硬直化し社内の元気も失われていくとのこと。 また事業数を10社ほどにまで増やすことで経営面でのリスク分散が図れる。手掛けたい業種は食にこだわらず、「ライフスタイルが豊かになる、あらゆる分野のもの」を考えている。「たとえ業種が『食』でなくても、フランチャイズ経営のノウハウは同じなので、経営は大丈夫」と広野さんは自信を覗かせた。 「女性の能力は大企業では生かされない。大胆で柔軟性がある女性はむしろ起業に向いている」という広野さんは、女性起業家支援にも積極的に取り組んでいる。それがシューファクトリーのフランチャイズ事業だ。フランチャイズは未経験の人でも起業しやすいと言う。その理由は、 - マニュアルが徹底されているので、一から会社を作るよりも始め やすい
- 小規模なので初期投資が1500万円程度とマンションの頭金程度で開始可能
- 作るのはシュークリーム1種類なので経営しやすい
- システムが出来上がっているので、アルバイトでも対応可能で人件費が抑えられる
- 店頭で必要な分だけ作るので、材料面でコストダウンが図れる
現在も参加者を募集しているが希望者の9割は女性だそうだ。このように次から次へと再建に挑む広野さんは、今の日本企業を見て感じることがある。「外から見ると1分で分かる変化や要望が、内にいると何年経っても分からない。そんな会社が多い」と。買い物の決定権を握る女性の心に、いかに近づくことが出来るかが勝負の分かれ道になっているようだ。 |