第202回 2004年10月30日放送 現2004年10月、中国企業として初めて、東京証券取引所・マザーズ市場に上場を果たしたのが新華ファイナンスである。中国企業の株式や債券に関する情報を証券会社や銀行、取引所などに提供する金融情報サービス会社で、アメリカにも金融情報会社4社を傘下に持つグローバル企業である。 1991年、中国国営・新華社通信のグループ企業として香港に設立され、CEOはアメリカ人女性のフレディ・ブッシュさん。そして、アジア地域を統括するのがジェイ・リー氏(43歳)。10歳まで日本で生活しアメリカの大学を卒業、日本語・英語・韓国語・北京語が流暢なグローバル人間だ。 新華ファイナンスが、ニューヨークや香港ではなく東証に上場した理由は次の通りである。 - 日本市場はアジアでもっとも大きな市場である
- 成熟した市場である
- 日本には中国に関心を持つ人が多い
- 今後、欧米の資本主義はアジアにシフトするだろうから、日本に拠点を置きたかった
事業は大きく分けて4つある。 - 中国株式や債券の価格指数を証券会社や投資銀行に提供する『インデックス事業』
- 中国企業の『格付け事業』
- 最新の経済情報を配信する『ニュース事業』
- 投資家向けに企業情報を配信する『IR事業』
例えば、格付けは、グローバルスタンダードで厳しく評価している。その結果、評価している175社のうちトリプルAの格付けを付けた企業は僅かに3社のみとなっている。ジェイ・リーさんは「中国当局が金融を引き締めた時、世界中の為替や株式市場に大きな影響を与えたことからも分かるように、今や中国情報なくして世界経済は語れない」と述べる一方、「中国国内には信頼できる情報を提供するところがなかった。それだけに新華ファイナンスの果たす役割は大きいしタイムリーである」と強調した。 さらに「新華ファイナンスは海外進出の動きが始まった中国企業にとっても大きな役割を果たすだろう」と言う。「中国国内ではまだ海外からの参入が一般的で、国内競争も激しいため国内での地固めに一生懸命だ。しかし大企業は海外市場を見始めており、3〜4年後には、積極的に海外に展開する動きが本格化するだろう」と予測する。既に中国企業が日本のアキヤマ印刷機製造や池貝などを買収しているが、今後、中国企業の日本展開が活発化するとなれば、新華ファイナンスが東証に上場した狙いも伺えよう。 では、中国企業にとって日本企業のどこに魅力を感じているのだろうか。リーさんによれば、「技術力だけでなく、中国企業が遅れている管理能力のノウハウにも魅力を感じている」また「日本に進出することはステータス・シンボルにもなる」とのこと。中国の大手電機メーカーのハイアールが東京・銀座に大きな看板を掲げているのも、そのような意味合いが大きいようだ。 一方、日本国内では依然として「日本の技術が中国に盗まれるのではないか?」といった中国脅威論が根強い。このことについてリーさんは「どちらかが損をするという考え方ではなく、どちらも勝つ『WIN・WIN』の構図と考えてほしい。中国と日本が良いパートナーシップを持つことで、お互いが利益を出せば国際的にも良いことだ」との考えを示した。そのためにも、「中国の正しい情報を日本の人に知ってもらい、中国と日本そして海外との橋渡しを新華ファイナンスが担っていきたい」と抱負を語った。 「何よりもまず日本の投資家に中国企業を理解してもらいたい。そして日本と良いパートナーシップを築きたい」というリーさんの日本での活動は始まったばかりだ。 |