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第200回 2004年10月16日放送中小企業金融公庫 水口弘一総裁

現在、政府系金融機関は8つある。そのうち中小企業向けの融資を行っているのは、中小企業金融公庫・商工中金・国民金融公庫の3つ。それぞれ融資先の規模などに違いはあるが、2002年、政府が政府系金融機関を統廃合する方針を決め、2005年度から組織の見直しなどに取り組むことになっているため、これら3つの機関にとっては、独自性と存在感をアピールすることが重要になっている。

中小企業金融公庫の水口弘一総裁も「この半年が非常に重要だ」と社内に喝を入れているそうだ。これまで政府系金融機関の総裁といえば監督官庁からの天下りが通例だったが、水口さんは東京大学を卒業後、入社した野村證券で副社長まで務めた異色の存在だ。

民間から初の中小企業金融公庫総裁が誕生として話題を呼んだが、2004年1月に就任すると、「驚くべきことがたくさんあった」と言う。窓口があまりにも細分化され、とても多いこと。稟議書に捺印しようと思ったら、自分の前に20個も印鑑が押してあったりなど・・・。「これでは分かりにくく時間もかかる!」として公庫内のあり方を思い切って簡素化した。

さらに『理念』も10年ぶりに刷新した。

  • 量から質へ・・・その企業の担保能力ではなく、企業の内容を優先する
  • 顧客第一主義・・・顧客とFace to Faceで対話し、信頼関係を構築する。
  • クイック・レスポンス・・・今の時代にはスピードが重要である。

中小企業金融公庫は、中小企業向けに主に長期の融資を行っている(75%以上が5年以上の融資)。融資残高は7.5兆円、取引先は5万社、民間金融機関も合わせた融資額の3%を担っている。『民業圧迫』という批判の声もあるが、中小企業金融公庫の役割はあくまでも『民業補完』だと強調する。貸出残高を見ても、民間が増えると中小企業金融公庫の残高は減り、民間が減ると公庫からの融資が増えている。しかも、件数としては少ないが、『中小公庫が貸し出しをしたならお墨付きだ』と、民間金融機関が融資に応じたケースもあるそうだ。

今、中小企業金融公庫が一番力を入れているのが、中小企業や地方の活性化策である。例えば、大型量販店の撤退で商店街が閑散となってしまった岩手県宮古市の商店街のケースでは、商店街の人たちが自らの手で大型ショッピングセンターを再生することを決断。中小企業金融公庫も資金面から全面的に支援し、町の活気を取り戻した。「地方に行くと、夕方には店を閉めてしまったり、土日を休日にしている店をみる。もっと街全体を見て、顧客のニーズをマーケティングし、アイデアを出していけば、様々な可能性があるはず」と水口さんは考える。

その一方、「中小企業全体を見ると構造改革はまだまだ進んでいない」とも指摘。そこで中小企業金融公庫では、異業種交流会を開催したり、これまでの成功例と失敗例で参考になる事例を具体的に紹介、さらには無料で経営診断を行うなど、中小企業の活性化に向けて積極的に取り組んでいく考えである。まさに勝負時の水口さんは「有限実行あるのみです!」と意気込みを語られた。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 民業圧迫ではなく民業補完である
  • 「質から量へ」・「顧客第一主義」・「クイックレスポンス」
  • 中小企業・地方の活性化こそカギ
  • 一般的に中小企業の構造改革は遅れぎみ
  • 中小企業にも国際化が必要な時代が来ている
亜希のゲスト拝見

「野村證券時代は朝8時前には出社していたが、実は夜型人間です」と早朝番組に笑顔で登場された水口さん。

野村證券と言えば大企業ばかりが取引相手だったと思いますが、今は毎週、あちこち地方に行き、ご自分の目で中小企業の現状を把握しているとのこと。新聞で『「空前の好景気」などの記事を見ても、「大企業だけの話だ」として、ピンとこないそうです。

金融機関のトップの呼び方は『頭取』『社長』『総裁』の3パターンがあるそうですが、その呼び名で歴史などの重みを感じませんか?

ちなみに、大変僭越ながら、水口さんの耳はとても良い形の福耳でした。