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第198回 2004年10月2日放送ヤッパ 伊藤正裕社長

17歳で起業し、3年後に年商5億円を実現した社長がいる。ヤッパ社長の伊藤正裕氏だ(1983年生まれ・21歳)。ヤッパという会社は、世界で唯一、どんなパソコンからも三次元画像を見ることができる3D技術の会社である。

もちろん3Dの技術は以前からある。しかし、これまでは特別なソフトが必要だったり、コストが高かったり、操作が難しかったりと制約が大きかった。これに対してヤッパの技術は、専用ソフトが不要で操作も簡単、さらに作成コストが従来の10分の1とケタ違いに安く、作成時間も大幅に短いという大きなメリットを持っている。現在、取引先は200社を超え、日本国内の大手自動車メーカーや電機メーカー、住宅メーカーのホームページ上で商品説明用に採用されている。

この技術は、メーカー側にとっても消費者にとっても便利である。例えば自動車のセールスの場合、消費者はわざわざ営業所に行かなくても自宅のパソコンからメーカーのホームページを開けば、クリック1つで新車の画像を360度くるくると回転させたり、車体の色を瞬時に変えてみたり、ルーフウィンドウなどのオプションを加えたりと、自由にシュミレーションできる。また、税金まで含めた見積もり金額も自動的に計算し表示するという、まさに『21世紀のパンフレット』と言えるかもしれない。

この画期的な技術は、実は伊藤さんが高校生の時、『3D』という言葉をインターネットで検索していたら、偶然に見つけたイスラエルの3Di社が基本技術を所有していることを知った。当時、3Di社はこの技術の応用に行き詰っていた。そこで17歳だった伊藤さんは「欠点もあるが、専用ソフトも要らず、基礎もしっかりしている技術だ」と考え、早速、交渉を開始。相手は50歳代と自分よりはるかにベテランだったが、日本国内における独占販売契約の締結にこぎつけた。伊藤さんによれば、「恐らくイスラエル企業側は『なんだこの若造は?』と思っていたと思うが、この技術は売れるんじゃないかと勝手に思い、ガンガン交渉した」と当時を振り返った。そして2002年、ヤッパは3Di社を買収してしまい、すべての知的所有権・特許権・株式を取得したのである。

しかし全てが順調に進んだわけではない。ただでさえベンチャー企業は信用されにくいのに、伊藤さんはとても若い。法律上は15歳から会社を作れることになっているが、金融機関に融資を申し込んでも、「保証人の保証人のまた保証人がいなければ運転資金を集めることもできない。企業に売り込みに行っても、年齢ばかり気にされて製品の技術を見てもらえず、イライラすることが多かった」と振り返る。高校生起業家として話題を呼んだ伊藤さんだが、「若くて得したことはあまりない」と言った。

現在、ヤッパの従業員数は、設立当初の3名から50名にまで増えた。2004年4月にはパリ支店をオープンさせ、ヨーロッパ展開もスタートさせた。2004年10月には、パリで開催された自動車ショーにも出展したが、欧州自動車メーカーの反応は上々だったそうだ。「IT業界は、国内でNo.1では意味がない。世界のトップを目指す」。伊藤さんの世界への挑戦が始まっている。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • いくら技術が優れていても、それをビジネス化できなれけば意味がない
  • IT業界では世界No.1でなければダメだ
  • 若くて得したことはほとんどない
  • 社名『ヤッパ』は特に意味はない。世界中の人の印象に残る社名にしたかった
  • 好きな言葉は『Pressure makes Diamond』
亜希のゲスト拝見

110度に最敬礼してスタジオに入ってこられた伊藤さん。年齢のことばかり言うのは申し訳ないのですが、21歳には見えない落ち着きとキチンとした言葉使い、上下ダークスーツにネクタイという正装。ITベンチャーの社長によく見られるような、ラフな服装に、フランクな言葉使い、ぎらぎらと自信をみなぎらせている・・・といったイメージとはまるで正反対でした。新しいスタイルのベンチャー経営者なのかも知れません。

「学校の成績は普通でした」という伊藤さんの好きな言葉は「Pressure makes Diamond」。すごいプレッシャーに打ち勝ってこそ新しい発見や発想が出来るという意味なので、伊藤さんも相当プレッシャーに強いのでしょうね。その強さがなければ、17歳でイスラエルの会社と交渉したり、20歳でパリ支店をオープンさせることなど出来なかったでしょう。

「10代は学校と遊びだけ」ではないのですね。私も、もう一度17歳からやり直したい気分です。ちなみに、社名のヤッパは『やっぱり』の若者言葉から来ています。伊藤さんと同じく10代で起業したビル・ゲイツ氏のようになって、「やっぱ、すごい人」になる日もそう遠くないかもしれません。