第194回 2004年9月4日放送 失われた10年と言われ低迷を続けてきた日本経済だが、2004年度はデジタル景気や中国特需などを背景に回復傾向を辿っている。その一方、アメリカ経済の減速懸念、中国の金融引き締めの動き、原油価格の高騰など不安要素もあり、今回の景気回復は短命で終わるのではないかとの声も聞かれる。 こうした現状を、大和証券グループ本社の原良也会長は「日本人は心配性。失われた10年のトラウマで、あまり良すぎると次の反動を怖がる。企業の好決算はあと2〜3年は続くだろう」と強気の見方を示した。 さらに長期的に見ても日本の株式市場は好調に推移するだろうと分析されていたが、その根拠として以下の6つを挙げた。 - 構造問題が解決する
- 成長投資が積極化する
- 第2次IT革命が到来する
- 中国・アジア経済が躍進し恩恵を被る
- 団塊・団塊ジュニア世代の消費が拡大する
- コーポレートガバナンスが強化される
中でも原会長が最も注目しているのが団塊・団塊ジュニア世代の消費動向だ。2012年に団塊世代が定年を迎え(60〜69歳)、団塊ジュニア世代も住宅や教育などの消費が盛んになる年齢を迎える(35〜45歳)。その際、団塊世代が受け取る退職金などは50兆円と言われており、この膨大なマネーが団塊ジュニアにうまく流れれば消費拡大の牽引役になると見ているのだ。この巨額のマネーをどう掴むか、そこに今後のビジネスチャンスが隠されていると言う。 一方、原会長が懸念しているのが、世界的なM&Aの流れの中で、日本企業がどのようにして敵対的な買収から防衛するかである。日米の主要企業を株式時価総額で比較すると、アメリカの企業は日本企業を大きく上回っている。例えば、三菱東京フィナンシャル・グループの株式時価総額はシティグループの4分の1しかない。欧米では一般的になっている株式交換方式によるM&Aが日本企業に対しても開始されれば、『敵対的買収』も可能になってくるといわけだ。 そのため日本企業にとっては株式時価総額を一段と高めることが極めて重要になってくるわけだが、企業の価値を高めるために、最近、企業経営者の間で注目されているのが『CSR』への取り組みである。CSRとは、企業も環境への配慮や地域社会との共生を通じて、社会的な貢献を積極的に果たすべきだという考え方だ。CSRに力を入れている企業は存続性の高い企業であると株式市場からも評価され、株価も市場平均を上回って推移しているという。CSRへの取り組みは、日本企業が敵対的な買収からの防衛策としても重要だと原会長は強調した。 |