第191回 2004年8月14日放送 「世界最強の経営者」「モノを言う経営者」など様々な異名を持つ日本経団連・奥田碩会長に世界経済・小泉改革・教育改革など様々な問題について語って頂きました。 (1)世界と日本経済・・・国内経済は10年前に比べれば明るさが見えてきた。この回復は構造改革だけでなく、中国やアメリカの好調な経済を映した海外需要の拡大に起因しているところが大きい。しかし、日本企業は依然として同じような分野や製品で競争し、本来なら確保できる利益を確保できていないところがある。会社の理念をしっかり持たなければ育つものも育たない。 急成長を遂げている中国だが、技術のレベルが上がれば日本に変わる世界的な輸出基地に変貌するだろう。まだインフラ整備の不十分さなどもあり、そう簡単にはいかない面もあるだろうが、例えばトヨタでは100年ぐらいのスパンで物事を考え、中国に対してはブレーキをかけながら攻めているという感じだ。日本の人口と1ケタも違う中国を、1億や2億の市場と同じ視点で見てはいけないと考えている。 中国とともにブラジル、ロシア、インドはそれぞれの頭文字を取って「BRICs」と呼ばれており、今後、大きな経済発展を遂げると見られている。BRICsの人口を合わせると世界の半分以上を占めている。これら4か国の経済レベルが上がってれば、日本にとって大きな脅威になるだろう。だからこそ、こういう国々とうまく付き合っていくことを考えなければ日本の将来像は描けない。 (2)小泉改革・・・日本経済が回復傾向を辿っている理由としては、中国やアメリカ向けの輸出が拡大している面が大きいが、小泉構造改革の後押しもあったと理解している。経団連から政府の諮問会議に人を出しているのは、情報を得るためと実業界の実情を正確に伝えるためだ。経団連としては、小泉改革に対して、役所仕事だからと先延ばしせず、早く提言して早く実行していくが一番大事だと考えている。 そういう点では、やはり日本の大きな課題は公的セクターの改革だろう。景気は回復傾向にあるとはいえ、日本が沈滞しているムードがあるのは、社会制度の不完全さによるところが大きいと思う。将来に不安があれば人々は金を使わない。経団連としては、国民が安心できるような社会制度作りにも力を入れて行きたい。 (3)教育・・・今の日本の教育全般には、疑問を抱いているというよりも、大いに不満を持っている。ちょうど今、全国から選抜した高校1・2年生を対象に「次世代リーダー塾」が福岡県で開催されている。私はその塾長を務めているが、変革の時代にあって、これからの若者に、どう変わればいいのか知ってもらいたいと思っている。 知識や技術を教え込む画一的な教育の時代は終わった。これからは、一人ひとりが「多様性」と「自立心」を持つことが重要だ。企業も多様性を持つダイナミズムを発揮できなければ、21世紀は上手くいかない。とかく日本人は群れたがり、多様性に欠ける面があるが、これからの若者は海外にどんどん出て行って、「異質なもの」にぶつかってみることが一番大事なことだと思っている。 |