第190回 2004年8月7日放送 三菱自動車のリコール隠し、ヤフーBBの個人情報の大量流出、六本木ヒルズの回転ドア事故など大企業の事件や不祥事が続発する中、インターリスク総研が開催するリスクに関するセミナーは毎回、満席になるそうだ。企業のリスク対策への関心の高さが伺える。 インターリスク総研とは、旧三井海上グループと旧住友海上グループのリスク・コンサルテイング会社1社が2001年10月に統合して設立された会社である。企業の抱えるリスクを発見し、解決するというリスクマネージメント・コンサルテイングの草分け的存在だ。保険会社のグループ企業としての強みを生かし、リスクマネージメントの豊富なノウハウを武器に、約100名のコンサルタントを抱え、10万件のデータベースをもとに、年間3000件の案件にあたっている。 「昨今の事件や不祥事が起きる根本的な原因は、目先の利益を見過ぎ、危機管理に対する考え方が甘い、従来の日本型経営だ」と語るインターリスク総研社長の安田正さんは、「企業の国際化、情報化社会、消費者の意識の高まりなど新しい環境に対応できない企業が多い」と指摘する。例えばセクハラなど、今まで「まぁまぁー」と部署内だけで済んでいたことが、今では経営そのものを揺るがしかねない大きな問題になるようになった。 こうした社会変化の中、企業を取り巻くリスクを予見し未然に防ぐ対策や、起きてしまった後の対処法などを行うリスクマネージメントが注目されている。インターリスク総研では、以下のような「実践」「現場」「第3者の視点」をキーワードに掲げ、企業と向き合っている。 (1)実践・・・例えば不祥事が起きたと想定して企業幹部の記者会見の訓練を行っている。記者役に扮したインターリスク総研のコンサルタントが、クライアントである企業の幹部に矢継ぎ早に質問を浴びせる。訓練とはいえ、企業幹部が冷や汗をかいている光景は何とも不思議だが、これは記者会見の訓練そのものよりも、導入したマネージメント・システムが機能しているかどうかを試す重要な役割を果たしているそうだ。 (2)現場・・・コンサルタントがクライアントの工場など現場に出向き、リスクを直接確認する。最近、メーカーの工場などではリストラや統廃の結果、設備も大幅に入れ替わったり、変更されているケースが多く、不測の事故が起こり易い状況にあるという。そのためインターリスク総研の専門家が、直接、現場を把握することはリスクを予見する上で極めて重要となっている。 (3)第3者の視点・・・コンサルタントがクライアントの様々な会議に正式なメンバーとして参加し、意見を交換し合う。社内の人間だけだと当然のこととして見過ごされがちな事も、第三者から見ると実に様々なリスクが浮き彫りになるという。 このように客観的に実践的に具体案を出す「知恵袋」がインターリスク総研の役割だ。安田さんは、「企業の価値は利益だけではない。リスクを管理し、社会に信頼を得ている企業こそが価値のある会社になっていく」という。危機管理が遅れているといわれる日本でも、これからはリスクをしっかりと認識し、不測の事態にも的確に対応できる体制を整える、まさにリスクマネージメントが経営の重要な課題となりつつある。 |