第184回 2004年6月26日放送 「中古本の革命児」といわれる坂本孝社長率いるブックオフコーポレーションが大躍進している。毎年、全国各地に60の店舗をオープンさせ、1991年の設立から僅か13年で全国に760店舗を展開。売上高もここ5年で倍増、今年3月には東証2部に上場を果たした。
新風を巻き起こしているブックオフの事業は、客から本を買い取り、それを売るという、いわゆる中古本ビジネス。しかし私たちがイメージする古本屋とは違う。まず店内が新刊本を売る本屋のように明るくきれいで入りやすい。本もきれいで、ジャンル別に整理整頓されている。暗く、埃っぽく、入りづらい雰囲気のある従来の古本屋とはまったく違う。「目指すのは神田の古本屋ではなく、新刊書店に99%近づけて半値で売る店」を目指している坂本社長の戦略だ。
古本屋といえば必ずいる本の“目利き”がブックオフにはいない。一人前になるためには10年はかかるという本の目利きが必要ない、ブックオフ独自のシステムを作り上げている。 (1)買い取りルール 本の内容ではなく、本の状態で値を決める。そのため仮に価値の高い本であっても、汚く使われていたら買値は安くなる。反対に、きれいな状態の本ならば定価の1割ほどで買い取る。 (2)売り出しルール ・買い取ったばかりの本は定価の半分で売る ・同じ本が5冊以上入荷したら、1冊は105円にする(一物二価が存在) ・3ヶ月以上たっても売れ残っていたら一気に105円に値下げする
このような分かりやすいマニュアルを作成したため、アルバイトの人でも本の買取ができるようになったとのこと。また、この方法により若い店長を次々と誕生させている。(店長の平均年齢は24歳!)。半年経験したら店長にしてしまうそうだ。「店長という肩書きができると、彼らに風格が出てくる」と坂本社長は言う。中には店長の経験を生かし、起業する人も出てきているそうだ。
しかし古本は古本。抵抗を感じる人もいそうな気がするが、買い取った本は全て売れてしまうそうだ。「レンタルビデオ店の普及により、人が使ったものをまた使うことへの抵抗が薄れているため」と坂本社長は分析する。やはり客層は20代前半を中心に、若い人が多いとのこと。
国内で着実に認知されつつあるブックオフは、海外にも進出して売上高を伸ばしている。現在、NYとLAに各2店舗、ハワイとパリに1店舗ずつ展開している。ターゲットは在住の日本人。「海外に住む日本人は日本の本を必要としているので需要は確実にある。だから日本人が5000人以上住んでいる都市であれば、十分ビジネスチャンスがある」と坂本社長は考えている。そして将来は、古本市場が発達していない欧米で、日本語以外の古本も売り出し、顧客を日本人以外にも広げ、事業を展開していきたいとのこと。「手ごたえはある」という。
ブックオフは中古本以外の分野にも進出している。子供服、インテリア、スポーツ用品などのリサイクル品を扱う「中古劇場」だ。本のように買い取り価格が分かりやすいものではないが、基本コンセプトは本の買い取りと同様に「きれいな状態のものほど価値がある」というコンセプト。動作・安全確認のチェックマニュアルを作り、誰でも買い取り価格を計算できるようにしている。
「中古本の人気が高いうちに、次を考えなければならない」との考えで事業展開している坂本社長。もはやブックオフは国内の中古本だけの会社ではなくなっている。 |