第183回 2004年6月19日放送 有名ブランドの在庫品を格安で購入できるアウトレット。ここ4、5年の間に全国各地に25か所もできている。なかでもチェルシージャパンが運営している静岡県御殿場市の「プレミアム・アウトレット」は、35万平方メートルの広大な敷地の中に国内外の有名ブランド165店が出店している国内最大級のアウトレットセンターだ。週末や祝日ともなると約5万人もの人が訪れる。なかには名古屋から4時間かけて、3〜7割引のブランド品を求めやってくる団体ツアーまである。
もともとアウトレットは1980年代にアメリカで誕生。メーカーが在庫品を処分する場として発展してきた。チェルシージャパンは、1999年にアメリカのアウトレットセンター運営会社が、三菱地所と当時の日商岩井との合弁で設立した。現在では、御殿場を含め全国4か所に巨大センターを展開している。来春には新たに岐阜もオープンする。
チェルシージャパンの指揮をとるのは三菱地所で国際畑を歩んできた加藤拓男社長。一見、不動産業とアウトレットは関係が薄いように思えるが、加藤社長は「ビルにテナントを入れるのとアウトレットに店舗を集めるのは同じこと。ともに家賃収入という点で共通している。しかもアウトレットの場合は店の売り上げに応じてマージンをもらっている」と笑顔で答えた。ということは、アウトレットセンターに出来るだけ多くの人に来てもらい、店の売上高が増えることは、店にとってもチェルシージャパンにとっても重要なことになる。そのために加藤社長は明確な戦略を立てている。
まず、どこに作るか? (1)都市部の商業圏から90キロメートルほど離れた場所につくる。都市部にある正規価格のブランド店との競合が避けられるほか、広い土地を確保しやすく駐車場もつくれるので車によるアクセスが良くなるからだ。 (2)車で来場しやすいように、高速道路や幹線道路に近く、かつ道路から施設が見えること。 (3)温泉などの観光地が周辺にあること。例えば、御殿場の場合は富士山や温泉が近くにある。そのため、観光・温泉・ショッピングを目的に日本にやってくる香港の観光客にとても好評だそうだ。
人が来たいと思う場所にすることも重要だ。そのため施設全体をアメリカの町並みをイメージした非日常的な空間にし、家族連れが来ても飽きないように子供の遊び場も設置。また旅行会社を回り団体客を集めたり、パンフレットなどのPR活動にも力を入れている。巨大アウトレットセンターの華やかさの裏には、ありとあらゆる地道な集客努力がある。その成果もあってか、1日平均50台の観光バスが立ち寄り、リピーター率も75%を実現している
こうしたアウトレット、実はメーカーにとってもブランドイメージを守る上で重要な役割を果たしている。以前は在庫品を海外に売っていたが、これらが日本に逆輸入されて別のチャンネルで売られるようになったり、偽者が出回ったりと、メーカーが自社製品をコントロールすることができなくなってしまった。しかし直営のアウトレットならば、商品の動向を把握でき、ブランドのイメージを保つことができる。しかも在庫品を効率良く販売することもできる。メーカーにとっても理にかなったシステムとなっている。
加藤社長は、将来、日本でのアウトレットセンターの数は現在の2倍〜3倍に増えるだろうと予測している。そうなれば旬のブランド品を正規価格で買うか、もう少し待ってアウトレットで格安価格で買うか、私たちのショッピングも選択の幅がさらに広がりそうだ。 |