第181回 2004年6月5日放送 「脱臭炭」(ダッシュウタン)、「ムシューダ」、「消臭ポット」・・。これらの商品名を耳にしたことがあるだろう。こうした独創的なヒット商品を次々と生み出して業績を伸ばしているのがエステー化学である。
鈴木喬社長は、子供の頃からオンリーワンになるのが好きだったと言う。大学を卒業後、日本生命に入社した時も、トップ・セールスマンになったほか、富士山のゴミ掃除隊長、野球部の応援団長を努めたりと様々なオンリーワンを経験した。そして兄(鈴木誠一・元社長)の要請でエステー化学に入社、98年に社長に就任してからも「世にない商品をやる会社」を経営理念に積極的な事業展開を進めている。
もちろん会社が現在のような状況に至るまでには様々な苦難があったそうだ。社長就任当時、エステー化学は拡大路線が裏目に出て業績は低迷していた。そこで会社の無駄を徹底的に削ぎ落とし、「筋肉質な会社」作りに力を入れた。なかでも「死に物狂い」で取り組んだのが取り扱い商品数の削減だった。860以上あった商品数を、およそ3分の1の300以下まで絞り込み、在庫を43億円超から30億円近くまで一気に減らした。当然、自分の作ったものをなくすのは嫌だと言う社員も多く、現在の水準まで削減するのに6年かかったという。「新しいものを作り出すより、やめる方が大変」と鈴木社長は当時を振り返った。
エステー化学の強みは「世にない商品」であること。しかし、世にない物を作り出すのは容易なことではない。「頑張るな。頑張るとよいアイディアが浮かばない」と常に社員に言う鈴木社長は、社内に観葉植物や絵画を置き、屋上にテラスを作った。全て肩の力を抜き、自由に発想できるための工夫だそうだ。商品開発・企画・デザイン等、部署を超えたメンバーが参加し様々な観点から知恵を出し合っている。
「他にないものであれば、多少値段が高くても消費者の関心を集め、価格競争に巻き込まれることもない」。鈴木社長は「社内の反対が多いほど世にないものだ。だから反対が多いものは絶対商品化する価値がある」と強調した。「聞いて分かる・見て分かる・使って分かる」がヒット商品作りの絶対条件だそうで、商品のネーミングには特に力を入れているという。あのユニークな商品名はすべて社長自身が名付け親だそうだ!また「見て分かる」ということも非常に大切にしている。例えばヒット消臭商品「脱臭炭」は、ゼリー状にした備長炭が徐々に減っていくことで、消臭効果を確認してもらおうというのが狙いだが、見事に的中した。分かり易いというのはヒット商品の重要な要素だという。
こうした自由で大胆な発想によって、2割ヒットすれば大成功という業界にあって、エステー化学は5割の高いヒット率を誇っているという。週末にはご夫婦で日用品店を散策しているそうだが、「世に無いものは、そこらじゅうに転がっている」という。次は一体どのような新商品を店頭に並べ、私達をビックリさせてくれるのか楽しみです。 |