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第179回 2004年5月22日放送

安斎隆氏

イトーヨーカ堂から生まれたIYバンクは、設立から僅か3年で単年度黒字を達成した。金融ビッグバンで新規参入した新銀行の中で初の黒字化である。この快挙を「ラッキーだ。自画自賛したい」と満面の笑みを浮かべていたのが安斎隆氏。

安斎社長は、金融界の様々な場面を見てきたエキスパート。日本銀行で理事まで務め、その後、旧日本長期信用銀行の最後の頭取として一時国有化後の処理にご尽力された。そして現在は、3年前に設立した今までにない形の銀行、IYバンク銀行の社長として手腕を発揮されている。

5/22IYバンクは、コンビニエンス・ストアのセブンイレブンを中心にATMを設置し、24時間365日、「いつでも・どこでも・誰でも」利用できる新しいタイプの銀行だ。IYバンクのATMを通じて提携している全国310以上(2004年5月現在)の銀行やノンバンクなどのサービスを利用できる。このATMは、まだ全てセブンイレブンの店に置いているわけではないが、全国に1万店舗ある中で8260店舗以上(2004年5月現在)に設置されている。1日の利用回数は平均70件にもなり、いまではコンビニの売れ筋商品であるお弁当(全国平均で1日20個売れている)よりも多くの消費者に利用されているという。まさにセブンイレブンの隠れたヒット商品になっている。

利用者の8割は40才代以下で、しかも半数近くの人が、銀行の営業時間が終わった後の夕方6時以降だそうだ。ライフスタイルの変化にIYバンクのサービスはピタリと合った。またATMをセブンイレブンに設置したことにより、店舗自体の売上高も1〜2%増加するなど、シナジー効果は予想以上に大きい。ATMでお金を引き出したついでに買い物をして帰ったり、買い物のついでにATMを利用する人が多いとのこと。


5/22それではIYバンクは、どの様にして収益を上げているのだろうか?ビジネスモデルは意外とシンプルだ。ATMを利用してもらった回数に応じて、提携している金融機関からATMの利用手数料を徴収するという手数料ビジネスである。つまり利用してもらう回数が多ければ多いほど収益が増える仕組みである。通常の銀行が預金と貸出しの利ざやで儲けることが難しくなりつつある中、手数料ビジネスに特化したことがIYバンクを成功に導いたと言えよう。

当面の目標は、セブンイレブンの新規出店に合わせながら、とにかくATMの設置台数を増やしていくことと、機械の故障など不測の事態を徹底的に減らして「安心して利用してもらえるATM」を早く確立することだと安斎社長は言う。いずれは貸出しなど他の銀行サービスにも取り組みたいと考えている様子でしたが、その話はまだちょっと先のようです。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 民間銀行という商売の世界に入って、机上で考えていた日本銀行時代とはぜんぜん違うと思った
  • IYバンクの話があった時、無謀だが精一杯頑張る価値があると思った
  • 今期の単年度黒字は自画自賛したい
  • ビジネスは成功すると皆が喜んで動いてくれる
  • IYバンクのATMはセブンイレブンの隠れたヒット商品になっている
亜希のゲスト拝見
「民間銀行は机上で考えていた日銀時代とは全然違った」と安斎社長はおっしゃっていました。確かに、硬いイメージの日銀出身者が、全く新しい形の銀行のトップとなり、成功しているのは不思議でした。しかし、安斎社長は日銀時代から手数料ビジネスを考えていたそうです。先見の明ですね。

特に印象深かったのが、「競争が激化すれば、お客様のためになるからいいじゃないですか!」と笑顔で話されていた姿です。この前向きで明るい性格は安斎社長の大きな原動力になっているんだろうな、と感じました。

さてセブンイレブンは中国にも展開しています。「まだ中国には金融システムが確立していないので・・」とIYバンク銀行の中国進出は否定されましたが、果たして将来は?

いままでにない形のコンビニ銀行・IYバンク銀行が今後どのように広まっていくのか楽しみです。