第177回 2004年5月8日放送 中国・上海に「うどん」が上陸した。半導体でもない、鉄鋼でもない。あの白くてコシのある麺とかつおだしの汁で作られる日本のうどんだ。しかも、この純和風な食べ物が上海市民に受けているというから不思議だ。
2004年2月、上海でうどんを中心とした和食1号店をオープンしたのがサガミチェーン会長の杉村和則さんである。サガミチェーンは、中京地域を中心に全国で約180店舗の和食チェーン店を展開しているが、国内は依然として外食不況が続いており、中国に活路を見出そうとしている。
「もともと麺は中国のもの。だから麺の需要はあると思った」と確信を持って臨んだが、日本のうどんが、どこまで上海市民に受け入れられるか心配な面もあったようだ。しかし、オープンしてみると昼食時には80席の店内がビジネスマンやOLで一杯。しかもお客の8割が現地の中国人で占められており、上海うどん1号店のスタートは予想以上の成果と胸を張る。
それにしても今なぜ、上海で和食が人気なのだろうか? まず、上海市民の暮らしが急速に向上していることが挙げられる。平均賃金はここ10年で5倍、年間約38万円にまで上昇している。そのため、上海での平均客単価が20元(およそ300円)のところに、サガミでは2倍の40元(およそ600元)でもお客が入っている。しかも一番良く売れているのが一番値段の高い海老天(39元)だそうだ。そこで小鉢も合わせて43元のものを売り出したら、今度はそれに人気が集まっているとのこと。杉村さんは「上海の人は生活が豊かになり、美味しい食事にはいくらでも高いお金も払う」と分析している。
さらに注目されるのは上海市民の間でも健康ブームが高まっていることだ。日本のうどんはヘルシーなイメージが強く、上海女性の間で人気を呼んでいるとのこと。そして何よりも、今の上海では日本のものは「おしゃれ」というイメージが強まっているようだ。日本のファッション雑誌が上海で売れているのと同じ感覚だろう。高いものほど良く売れるという今の上海と比べ、国内の外食産業は依然として厳しい状況が続いている。BSEなどの食の安全問題や激しい価格競争などで、サガミチェーンも2003年度には初の赤字に転落した。
少子高齢化の進展という構造変化も考え、サガミチェーンが選んだ戦略は「高級路線」だ。実は様々な外食産業の中で、平均客単価2000円以上の市場というのは意外に少ないとのこと。また少子高齢化の進展で構造的に客数は減っていく上に、高齢になると1人の食べるボリュームも減る傾向にある。しかし一食は一食。その一食の単価を上げることによって売上高を確保するしかないと考えているためだ。
現在、サガミチェーンの平均客単価は約1300円だが、これを3500円〜4000円まで引き上げる計画である。もちろんターゲットは女性客。女性はグループでの来店が多いし、昼食のピーク時を避けて来てくれるので店側としてはとても有り難い存在だという。 |