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第173回 2004年4月10日放送

鈴木正一郎氏

今週のゲストは、1873年(明治6年)創業で130年以上もの歴史を誇る王子製紙の鈴木正一郎社長。1961年に東京工業大学を卒業後、王子製紙に入社。テイッシュペーパー「ネピア」の開発・販売などに取り組み、2001年に社長就任。業界の古い体質を打ち破り、徹底したコスト削減と新分野の開拓に取り組んでいる。

4/10 様々な産業の中で製紙業界は波乱の連続だった。鈴木社長が入社した当時、世の中は「三白景気」(紙・砂糖・セメントという白いモノが活況だった)と呼ばれ、王子製紙の初任給はどの会社よりも高かったそうだ。しかし、高度経済成長が終わり国内需要が伸び悩む中、製紙業界には合併・吸収など業界再編の嵐が吹き荒れた。1980年代には製紙会社が10数社あったが、現在は王子製紙と日本ユニパックホールディングの大手2強体制になっている。鈴木社長自身、5回の合併を経験しており、おかげで合併アレルギーは無いと言う。

4/10 業界再編が進む中、王子製紙が最も力を入れたのがコストダウンである。1996年の大合併では、2万7000人いた従業員を1万8000人にまで減らした。さらに「草の根コストダウン」と称して、小さな事、細かな事までコツコツと無駄を省いて70億円のコストダウンに成功したという。このように他の産業に比べていち早くリストラに取り組んだ結果、2003年度の決算では経常利益が約700億円と過去最高水準にまで回復、さらに2004年度には1000億円の目標を掲げている。

一方、王子製紙の攻めの戦略も注目される。紙で作った帽子や洋服の開発に成功。軽くて吸汗性にも優れ、もちろん洗っても破れないというのは驚きだ。また子供や女性への安全性に配慮して、テイッシュ・ボックスの角を丸めた新製品も開発・販売している。鈴木社長自身が「遅まきながら女性の意見を取り入れた新製品」と言うもので、「生産効率の向上やコストダウンだけを追求しがちな男性社員からは決して出てこないアイディアだ」と胸を張る。王子製紙の社内には確実に新しい風が吹き始めているようだ。

今後の課題は経済成長が著しい中国への進出だ。5年後には中国の紙需要は日本の3倍以上になると予測している。王子製紙は付加価値の低い製品では勝負せず、高い技術力と最新の設備が必要な高級紙で巨大市場に挑む考えである。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 合併を成功させる秘訣は、互いの優れた水準に合わせるべく努力すること。
  • 「紙とはこういうものだ」といった既製概念を捨てたら、可能性が一気に広がった。
  • 新製品開発で重要なことは、顧客ニーズに合わせるだけでなく、顧客に対して「このようなものはどうか?」と積極的に提案していく姿勢だ。
  • 中国市場の成長には非常に期待しているが資源不足も懸念される。今後、古紙のリサイクル技術がいっそう重要になる。
亜希のゲスト拝見
紙は紙だと簡単に捉えていたが、アイディア次第でいくらでも付加価値を高めることができるのだと改めて実感させられた。「紙は薄いが奥は深い」。コマーシャル中も、身振り手振りを交えて紙の世界を熱く語って下さったのがとても印象的でした。また「企業が生き残るためにはこうしなければならない」という言葉を何度も口にされた鈴木社長。勝負をかけている!――熱意と自信の深さを感じることができた1時間でした。