天皇の料理番
少年時代に食べたカツレツの味がきっかけで西洋料理のシェフとなり、その後天皇家の台所を預かる程の料理人となった人物の波乱万丈の立志伝。
少年時代に食べたカツレツの味がきっかけで西洋料理のシェフとなり、その後天皇家の台所を預かる程の料理人となった人物の波乱万丈の立志伝。
明治36年(1903年)、福井・武生。ある日、秋山篤蔵(堺正章)が世話になっている禅寺の和尚のお供で鯖江の連隊へ出かけたときのこと。将校の集会場辺りからただよう香ばしい匂いが、篤蔵の鼻先をとらえた。今までかいだこともない素晴らしい匂いのもとを料理担当の田辺伍長(目黒祐樹)に尋ねる篤蔵。それは「カツレツ」という西洋料理の一種だった。篤蔵は一口御馳走になり、あまりの美味しさに驚きの声をあげる。この出来事以来、西洋料理への憧れが大きくなった。 東京へ出て、料理の勉強をしたいと願う篤蔵だが、両親はそれを許さない。その上、トシ子(檀ふみ)と否応なく見合いをさせられ、強引に祝言を挙げさせられてしまう。所帯を持った篤蔵は、初めはおとなしかったものの、その胸の内には「東京に出て、一流の料理人になる」夢がふくらみ続けていた。そしてついに、篤蔵は敏子をひとり残して夜逃げ同然で上京する。ときに、明治37年5月のことであった…。