横山秀夫サスペンス 陰の季節7「清算」
警察の警務課を舞台に、部長の無理難題を対処すべく組織と感情の間で揺れる人間模様を描くドラマ。
警察の警務課を舞台に、部長の無理難題を対処すべく組織と感情の間で揺れる人間模様を描くドラマ。
二渡にとって、最も忙しい季節がやってきた。定期異動の時期である。この忙しい時期に、二渡は大黒警務部長に呼び出され急な任務を言い渡される。犯罪の多様化かつ増加で慢性的に警察官が足りない状態が続き、二渡の県警でも、人員増を余儀なくされている状態であった。しかし、大黒警務部長が、自分では警察庁に呼び戻されて異動すると思いこんでいたため、青山本部長に呼ばれて、人員増の要求書を県議会議員から、県議に提出してもらうことを怠っていたのだ。その不始末を二渡に押しつけてきたのである。かくして、この多忙の折りに二渡は、県議会委議員の矢村徹の元へ、警察官増員の意見書を提出してもらうように要求しに向かうのであった。県議の元に到着した二渡は、思っていたとおりに矢村に拒否される。県警の不祥事が相次いでいる昨今、警察に味方するような意見書を提出するのは、議員としてはとても不利だから嫌だと…。諦めずに、再び頼むしかないと思いながら、家に戻る二渡。戻るとすぐに電話が鳴った。同期の丹羽からである。内容はタレコミ。この定期異動の時期のタレコミは、たとえ同期と言えども聞かないと一度ははね除ける二渡であったが、丹羽は、自分の所属する薬物特捜班の菊地班長が、本部の女と不倫していると話し始めたのだ。地位についている妻子あるものが、本部の女性警察官と不倫とあっては、ただならぬ事態である。二渡は丹羽と直接会って話を聞く。ところが、丹羽から事の詳細を聞いた二渡は愕然とする。何と菊地の不倫相手というのは、かつて自分が結婚まで考えたことのある女性、警務部情報管理課の光浦多恵であったのだ。