今週のドクターは、 山王病院皮膚科 佐藤 佐由里先生
【略歴】
山形大学医学部卒
【ドクターの一言】 日本皮膚科学会最新の治療指針及びEvidence based medicine(EBM)に基づき患者様のライフスタイルに合わせた生活指導を中心に皮膚疾患全般の診療にあたっています。
人体の設計図とも言われるDNA。そのDNAには、私たちの体を作っている全ての情報が、詳細に記録さています。DNAを解析することで、治療薬の効果や副作用を調べ、一人一人に適切な治療を行うことができるオーダーメイド医療。オーダーメイド医療実現のため、現在注目されているのがこのDNA検査装置です!この検査装置は、幅、奥行き共に50センチとかなり小型。価格も従来の装置の10分の1以下という優れもの。検査も非常に簡単です。では、結核の患者さんに対して結核薬の効果と副作用を調べる検査を見てみましょう!まず患者さんの血液を一滴採取。その白血球の核からDNAを取り出します。これが、そのDNAの入った溶液。この溶液をチップに入れます。チップには予め、結核薬の効果を調べるために作り出された、人工のDNAが入っています。患者さんのDNAと、チップ内のDNAが結合するかどうか?そこから、結核薬の効き具合や、副作用の可能性までが測定出来るのです。チップを検査機に挿入、これだけで準備はOK!この検査機の操作は、繋いであるパソコンで行います。約50分で、患者さんに対する結核薬の効果や、副作用がでるかどうかの測定結果が表示されます。この結果から、医師は治療の方針を決めていくこととなるのです。これまで2、3日〜1週間かかったDNA検査が1日で行なえる。そんな時代がすぐそこまで来ています。 食べ物を噛み続ける時、リモコンのボタンを押す時、この2つの動きのうち、どちらが脳の働きを、より活性化させると皆さんは思いますか?正解は、リモコンのボタンを押す時!京都の国際電気通信基礎技術研究所・脳情報研究所と、アメリカ・南カリフォルニア大の共同研究によって解明されました。実験では連続する動きと、単発の動きを比べて脳がどれくらい活性化するかを測定しました。連続する動きは、手首を連続して曲げます。単発する動きは、手首を曲げた時に止めて、自分でタイミングを取って動かす、この動きをします。この時の、脳の働きを測ってみたところ、連続する動きよりも、自分でタイミングを取る単発の動きの方が、脳がより活性化していることが分かりました。連続して動かす場合でも、脳は活性化します。しかし単発で動かした場合は、さらに頭頂連合野をはじめ活性化する所が増えたのです。自分でタイミングを取る単発の動きは、手首を動かす度に、その都度脳から指令が送られます。その指令が脳をより活性化していたのです。つまり、何も考えずに、同じ動きを繰り返すより、動かす時に考える単発の動きの方が、脳はより活性化されるのです。この単発の動きは、リモコンのボタンを押す方に当たります。従ってこちらの方が、食べ物を噛み続ける時より、脳の働きが、より活性化する訳です。こうした脳の活性化を高める動きとしては、例えば何か物を取ったり、お箸で食べ物をつかんだりする動きが当てはまります。こうして、体の動きと、脳の働きには、どのような関係があるのか?新たな解明がされました。
北風が体に吹きつけてくるこの時期、どうもお肌が乾燥して、カサカサする!顔だけでなく、手や足もカサカサして、かゆくなる!そう、肌荒れです!肌荒れした皮膚を拡大すると、ご覧のようにボロボロ。やがて症状が進行すると、こんな状態にまでなってしまいます。このような肌荒れの原因、それは冬の湿度の低さにあります!夏と冬では、平均湿度が20%も違います。特に冬場、暖房のきいた部屋だと、湿度は20%にまで下がっています。この湿度低下による乾燥こそ、肌荒れの一大原因!私たち人間の体は、ご存知のように、70%が水分です。そして、この水分を失わないよう、常に保護するのが皮膚の役割。私達の皮膚は、何層にも分かれています。湿度の低下の影響を受けるのが角質層です。角質細胞の1つ1つは、セラミドという脂肪によって固定されています。そのセラミドは水分を挟み込むようにして蓄えています。この水分量は、湿度によって変化します。周りの湿度が高ければ、角質層の中に水分が入り、逆に湿度が低くなると水分は、蒸発して出ていってしまうのです。そのため、湿度が低い冬場は角質層が乾燥し続けることとなるのです。すると、角質からは柔軟性と滑らかさが失われ、全体に細かいひび割れを起こします。このように、角質がひび割れた状態を乾燥肌と言います。さらに、この乾燥肌に追い打ちをかけるものがあります!それは皮脂の減少!私たちの皮膚には、皮脂を分泌する皮脂腺と、汗を分泌する汗腺の2つがあります。この2つから出る皮脂と汗は、混ざり合ってクリーム状の皮脂膜となり、皮膚からの水分蒸発を防ぎます。しかし、皮脂腺は20歳〜25歳で、発達のピークに達すると、後は次第に衰え、分泌力が低下していきます。そのため、水分が蒸発するのを防ぐ皮脂膜も、次第に作られ難くなって行きます。特に冬場は、汗の量も減るため、乾燥に拍車がかかるのです。こうして、湿度の低下と皮脂膜の減少が重なる冬場は、乾燥肌になりやすい訳です。但し、単なる乾燥肌ならば、保湿クリームなどで、十分に補う事が出来ます。しかし、もしも乾燥肌に痒みが加わってきたら・・これは注意が必要!特に、痒みが1週間以上 長引くようなら・・。皮膚掻痒症という病気の可能性があります。これが皮膚掻痒症の皮膚の画像です。一見何も起きていないように見えますが・・皮膚の表面を電子顕微鏡で見ると、角質がボロボロに痛んでいるのです。でも、なぜ痒みまで出るのでしょう?皮膚の下には痒みを感じる感覚受容器があります。肌荒れで角質が痛むと、温度の変化や、衣服による擦れなどの刺激がこの受容器に伝わり易くなり、痒みが生じるのです。この皮膚掻痒症は、高齢者に起こりやすい病気なのです。また、乾燥肌と痒みが悪化して、皮膚を強く掻くと、そこに湿疹の出来る場合があります。それが「皮脂欠乏性湿疹」という病気。これが「皮脂欠乏性湿疹」。見た目にも乾燥とひび割れが はっきり分かります。こうなると激しさを増した痒みで、夜寝ていても目が覚める程。では、なぜ湿疹が出来るのでしょう?その詳しいメカニズムは、まだはっきりと分かっていないのですが、現在考えられているのがリンパ球の増殖!皮膚を掻いて傷ができると、その部分には炎症が起こります。すると、リンパ球が集まり、リンパ球は角質の間から盛り上がることとなります。これが湿疹です。皮膚掻痒症も皮脂欠乏性湿疹も、実は出来やすい場所があります。それは、スネと腰。スネと腰には、皮脂腺が少なく皮脂膜が作られにくいため、乾燥しやすくこれらの病気を引き起こすのです。理由は腕と足には、元々皮脂を分泌する皮脂腺が少ないため、特にスネには僅かしかなく、最もできやすい所なのです。また一方、肌荒れは、湿度の低下や、老化による皮脂の減少以外でも起こります。冬場に多いもう一つの肌荒れ、それは・・主婦湿疹!主婦湿疹の原因。それは、主に炊事や洗濯など、水仕事を繰り返して行う事。主婦がなりやすいために、この名前が付けられました。実は私たちの掌には、皮脂が少ないのです。元々少ない皮脂を、水仕事で使う洗剤が奪ってしまうため、乾燥が酷くなって行きます。その皮膚に刺激が加わることで、皮膚は一種のかぶれを起こします。やがて、指先はカサカサに乾き、ひび割れた所は傷となって、ヒリヒリと痛みはじめます。湿疹も現れます。ついには、指や掌全体が腫れてしまったり、水疱が出来ることもあります。この主婦湿疹にも、実は出来やすい所があります。それは、利き手の親指と人差し指、中指の3本。この3本は水仕事の際、よく使うため、発症しやすく、症状も酷くなります。そしてこの時期、追い打ちをかけるのが、水仕事にお湯を使う事!冬場の洗い物に、冷たい水は辛いですよね。 だからついつい、お湯を使ってしまいがち!しかし、このお湯が、手の脂をさらに落としてしまうのです。辛い冬の肌荒れ。その原因の大半は空気の乾燥や老化、そして家事。それだけに、お肌のケアには注意を払うようにしましょう!