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2004年10月10日(日) テーマは
『アルツハイマー病』

(今週のテーマは2003年5月11日に放送したものです。)
今回放送分のドクターQ&Aは、こちら

今週のドクター
今週のドクターは、
浴風会病院
須貝 佑一先生



【略歴】

’80年 京都府立医科大学卒業。
国立精神・神経センターを経て
浴風会病院精神科へ移る
同病院精神科診察部長と高齢者痴呆介護
研究・研修東京センター副所長を兼務

【ドクターの一言】
医療はサービス業。この意識変革は特に現場の医者に必要。サービスも正確な医学的知識と識見に裏打ちされなければ患者さんや家族に不利益をもたらします。痴呆診察にはそれを心がけています。



【著書】
「新しい痴呆の介護読本」 新企画出版社
「心の医学事典」分担執筆 講談社
「よくわかって役に立つ患者と家族のための痴呆介護百科」 永井書店


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データ人間の知的な生活を司る脳。私達の記憶や判断、喜怒哀楽の感情などは、脳の働きによって成り立っています。その脳の活動に障害が起こり、記憶や感情にも、大きな影響を及ぼす病気がアルツハイマー病です。その主な症状は、記憶力の低下人格変化、そしてウツ痴呆といったもの。現在、痴呆の患者は、日本全国でおよそ150万人。そのうちの50万〜70万人が、アルツハイマー病による痴呆という、統計もあります。人間は誰しも年を重ねていくと、記憶力は低下します。老化による物忘れと、痴呆の違いはどこにあるのでしょう?データ通常の物忘れの場合は、本人が物忘れをした自覚があります。しかし、痴呆の場合は、何度も物忘れを繰り返し、また物忘れをしたこと自体、覚えていません。つまり物忘れした事を覚えているかどうかが、痴呆と物忘れの違いなのです。この痴呆の原因のひとつ、脳血管性痴呆の場合は、脳血管の障害であるくも膜下出血や、脳梗塞など、脳卒中が原因で脳の機能の一部が損なわれたことで引き起こされます。しかしアルツハイマー病による痴呆は、未だ原因が解明されていないのです。アルツハイマー病は、脳には記憶が蓄積される大脳皮質と呼ばれる部分があります。その大脳皮質の中でも、特に記憶と関わりが深いのが側頭葉です。アルツハイマー病の影響は、この側頭葉に強く出ます。脳の横側、側頭葉の部分が、萎縮して小さくなっているのが、よく分かります。データさらに症状が進むと、脳が全体的に萎縮してしまうのです。脳の萎縮、これこそがアルツハイマー病の特徴です。私達の脳は活動すると、アミロイドβというたんぱく質ができます。正常であればこのアミロイドβが溜まらずにしっかりと代謝されるのですが、アルツハイマー病にかかると、このアミロイドβが脳の中に溜まってしまいます。このアミロイドβの固まりが、問題の老人斑です。しかもこの老人班は、神経毒の一種で、脳の活動を支える神経細胞を壊していきます。実は単なる老化でも、この老人班は多少なりとも出てきます。しかし、それは脳の中で、記憶を司る部分の海馬に限られています。 老化によって物忘れが多くなるのは、海馬周辺の老人班が原因なのです。ところが、データアルツハイマー病にかかると、この老人班が脳全体に広がってしまいます。老人班は脳の神経細胞の外側にできますが、やがて神経細胞の内側にも異常なタンパク質が溜まり、神経細胞が変形してしまいます。それを神経原繊維と呼びます。この神経原繊維も、脳の神経細胞を破壊していきます。そして繊維化が進むと、大量の神経細胞が失われ、脳が萎縮していきます。このようにアルツハイマー病とは、脳の神経細胞が壊され、脳が萎縮することで、様々な症状が表れる病気なのです。アルツハイマー病は、進行具合によって、症状の変化があります。初期は、大事な約束を忘れてしまう、また食事した事を憶えていないなどの記憶障害が起こります。また意欲の減退、不安で落ちかないなどのうつ状態も現れます。中期は、知的機能障害がかなり進み、今日が何月何日なのか、そして昼と夜の区別さえも、わからなくなってしまいます。また、徘徊などを起こし、日常生活に支障をきたしてしまうようになります。さらにアルツハイマー末期になると、機能障害が更に進み、感情が失われ、無欲となり、動くこともあまりありません。いわゆる寝たきりの状態となってしまいます。しかしアルツハイマー病の発症原因は現在でも不明です。アミロイドβデータが私達の体の中でどんな役割を持っているのか、どうして代謝が上手く行かなくなるのかは、まだ解明されてはいません。このようにアルツハイマー病は、原因やそのメカニズムもまだ十分に分かっていない恐ろしい病気なのです。

アルツハイマー病
原因
老人斑・・・ 脳内にアミロイドβたんぱくが溜まり
この固まり(老人斑)が神経細胞を壊す
神経原繊維
変化   ・・
神経細胞の中に異常なたんぱく質が
溜まり神経細胞が壊れた状態
症状
初期・・・ 物忘れを繰り返すなどの記憶障害
意欲の減退などのうつ状態
中期・・・ 知的機能障害が進み、日付、昼夜が
わからなくなったり徘徊などが現れる
末期・・・ 感情の喪失、無欲、無動、寝たきり
EXAMINATION 検査
ポイントは痴呆によって日常生活の支障があるかどうか
問診
家族 患者の普段の生活態度を聴く
・いつ頃から物忘れが出てきたか
・物忘れしたことを覚えているか
・今まで使えた家電製品を使えなくなっていないかなど
患者本人 家族から得た情報を元に質問し
家族と患者本人の認識の違いなど丁寧に調べる
画像診断
MRI・CT 脳の画像から萎縮が起こっていないかどうかを調べる
EXAMINATION 検査
現在はアルツハイマー病のを完治する方法はないため
病気の進行を遅らせる事が治療の基本
薬物療法
  ドネペジル
神経伝達物質アセルコリンを分解してしまう酵素を阻害してアセチルコリンの活性を高める
服用は毎朝1錠

ただし効果が期待できるのは発病
初期〜中期まで
リハビリ療法 体と脳を使うことで刺激を与え
アルツハイマー病の進行を遅らせる
FRONTIER 最先端技術
データ2002年秋、ドイツのマックスプラン精神医学研究所から、アルツハイマー病と関係する、ある体内物質に関する発表がありました。その体内物質とは女性ホルモン、エストロゲン。元来エストロゲンは骨や筋肉、子宮、血管には影響を及ぼしますが、神経には作用しないと考えられていました。ところがエストロゲンを、脳の神経細胞に投与したところ、神経細胞を保護する働きが、確認されました。さらにエストロゲンの作用は、これだけではありませんでした。エストロゲンは神経細胞を保護するだけではなく、神経細胞を破壊して、アルツハイマー病の原因にもなる、老人斑、データアミロイドβタンパクが作られるのを阻止する役割もあったのです。現在、動物実験が行われ、アルツハイマー病の進行を抑える治療薬の一つとして、期待がかけられています。
FRONTIER 最先端技術
家族や他人を巻き込むことになる、辛いアルツハイマー病。この病気を引き起こしてしまうきっかけは色々ありますが、その一つに環境の変化があります。例えば、定年退職して、やる事が無くなってしまったなど、無力感がきっかけで、発症してしまうことも少なくありません。予防のためにも、人生を楽しむための趣味を持つ事は、大切です。
データデータ








データデータデータ

【趣味】
例えば、絵を書いたり音楽鑑賞をするなど、脳に新しい刺激を常に与えることが必要です。
【活性酸素】
アルツハイマー病の発症に深く関わっているといわれているのが、活性酸素です。活性酸素は本来、私達の体に入ってきた病原菌などを撃退してくれます。しかし、活性酸素が増え過ぎてしまうと、逆に自分の細胞を攻撃して、害になってしまうのです。そして脳の中でこの活性酸素が増え過ぎてしまうと、脳の神経細胞を壊してしまい、その結果、アルツハイマー病の進行を促進してしまうことになるのです。
【食事】
この活性酸素の増え過ぎを抑えるために大切なのが、バランスの取れた食生活。中でも重要な栄養素が、ビタミンEです。ビタミンEは活性酸素の攻撃から、細胞膜を保護してくれる働きを持っているのです。そして活性酸素対策に、もう一つ重要な栄養素が、ビタミンCです。ビタミンCは傷ついたたんぱく質を、修復してくれる効果があります。更に、このビタミンEとビタミンCを合わせて摂取すると、活性酸素によって傷ついたビタミンEをもビタミンCが元の状態に戻してくれるという、相乗効果が期待できるのです。

まだまだ解明されていない、アルツハイマー病
しかし、普段の生活のあり方を、少し気を付ける事で、
そのリスクを下げることはできます。

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