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2004年10月3日(日)テーマは『もの忘れ』

2004年10月3日 テーマは、『もの忘れ』
今週のドクター 今週のドクターは、
山王クリニック

山王 直子先生



【略歴】

研修後メイヨークリニック(USA)留学
日本医科大学脳神経外科講師、
付属多摩永山病院脳神経外科部長を経て、
今年4月より山王クリニック院長。脳神経外科学会専門医

【ドクターの一言】
痴呆には脳血管性、アルツハイマー病等があり早期であれば進行を遅らせる事ができます。原因によっては治る痴呆もあります。年のせいと諦めず早めに受診しましょう。ご家族の接し方が大切です。

【著書】

「アンチ・エイジングのための
女性ホルモンクリニック
― これからの肌・からだ・心のケア ―」
メタモル出版
「知っておきたい意識障害の診断と治療」 真興交易医書出版部

「内分泌疾患と意識障害」 (分担)

松本清編
「脳神経外科レビュー 2001年度版」 
(分担) 菊池晴彦監修
三輪書店

CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

Medical Topics『すやすや』寝付きが悪い!どうもぐっすりと眠れない! そんな方に朗報!ぐっすり眠るポイントは… なんと、入浴のタイミングにあったのです。お風呂に入るとよく眠れることは経験的に知られていましたMedical Topics足利工業大学睡眠科学センター、小林敏孝教授らは、普段から寝つきが悪いという学生に、入浴する時間や、入浴の時間帯を変えながら半身浴をしてもらうという実験を1ヶ月間行いました。すると、かなり寝付きの悪い学生でも、ある時間帯に入浴して体を温めるとわずか5〜15分という短い時間で深い眠りに入る事がわかったのです。ではその最も睡眠に適したMedical Topics入浴のタイミングとは?それは『夕食をとってから、1時間30分後』。いったいなぜ、1時間30分なのか?それは、このタイミングで入浴し、身体の芯まで温めると、体温の低下が促進されることがわかったのです。Medical Topicsこうして体温が低下し始めてから、2〜3時間後には強い眠気が起こり、眠りに入りやすくなります。さらに、眠ってからすぐに深い眠りに入り、寝ている途中で目が覚める回数が減るということが明らかになりました。夕食後、1時間半でお風呂に入り、身体の芯まで温める。試す価値はありそうです!
Medical Topics『小さな泡』胃・大腸・肺・肝臓・血液・皮膚と身体のあらゆる場所に発生するがん。その早期発見のため、幅広く使われているのが超音波エコー検査です。しかし、従来のエコー検査では、小さながんのMedical Topics発見や悪性のがんか良性の腫瘍かを、はっきりと判別するのが難しいという一面がありました。東京医科大学では現在、これまでのエコー検査では使われていなかった造影剤による、新しい検査法を研究しています。これがその検査の様子です。一見、通常のMedical Topicsエコー検査と同じように見えますが・・・よく見ると、このように造影剤を注入しながら検査を行っています。この造影剤の中に充満しているのは、「マイクロバブル」Medical Topicsといわれるおよそ1万分の1ミリメートルの空気の泡。空気が血管に入るなんて、危険なのでは?と思いがちですが、1万分の1ミリメートルとは、血液中の赤血球とほぼ同じ大きさ。危険はまったくありません。血管に入った気泡は、超音波を当てると、白く映し出されます。血液の流れと一緒に気泡が移動するため、Medical Topics血流がはっきりと分かります。では、なぜこの方法でがんが発見できるのでしょうか?がんの細胞は、正常な細胞より、とても速く増殖します。大量のエネルギーを必要とするがん細胞には、正常な細胞よりも速く、大量の血液が流れ込みます。つまりがん細胞の周りは血液の流れが速いのです。これは、Medical Topics肝臓がんのマウスの超音波映像です。血液の流れが速い所を探してみると・・・この赤い丸で囲んだ部分です。実は、ここに『がん』があるのです。血流の速度が速いという、悪性のがんのみに見られる特徴を発見すれば小さながんでも判別できます。今後は、発見が難しいとされる乳がん、前立腺がんなどへの応用が期待されています。そして定期検診でごく小さながんが発見できる日もそう遠くはないかもしれません

EXAMINATION 検査

Sign of Illnessあら!この人、なんていう名前だったかしら…。えーっと、どこに片付けたっけ…。あれあれ?預金通帳は?あぁ、思い出せない!こんなこと、よくありますよね。誰もが経験するもの忘れ!そもそも、このもの忘れはどうして起こるのでしょうか?われわれは、脳の中に様々な情報を記憶しています。Sign of Illness例えば、「田中さん」という人と知り合った場合、この人が田中さん、と、まずは顔と名前が脳の海馬に送られ、記憶として保存されます。この『覚えこむ』ことを“記銘”と言います。海馬で保存された「田中さん」の記憶は、ただちに側頭葉や頭頂連合野に送られ、長期間保存される体制に入ります。このように、覚えたことを、いつか必要になるまで保存しておくことを“保持”といいます。そして、Sign of Illness田中さんと出会った時、「ああ、田中さんだ」と思い出す。これを“想起”といいます。この時、海馬や側頭葉から、田中さんに関する情報が取り出されているのです。“記銘”・“保持”・“想起”この流れが正常に行われると、覚えた事をすんなり思い出すことができます。では、もの忘れとは一体何でしょう?年齢を重ねると、覚えこむ“記銘”と、思い出す“想起”が衰えます。“記銘”が衰えるというのは、覚えにくくなるということです。これは、海馬で記憶を処理している神経のつながりが、Sign of Illness老化とともに弱くなるのが原因。一方、“想起”の衰えは、記憶に関わる側頭葉の神経細胞の数が減ったり、記憶の信号が流れる神経が切れることによって起こります。たとえ側頭葉に記憶として残っているとしても、それをうまく取り出すことが出来ません。こうして起こるのが老化による「もの忘れ」Sign of Illnessです。この場合は、「忘れっぽくなったなあ」という自覚があります。例えば、昨日の夕食のメニューを思い出そうとしたが、何を食べたか、すぐには思い出せない。これは、誰にでも起こる、老化による「もの忘れ」。本人もちゃんと忘れたことを自覚しています。しかし、心配しなくてはいけないのは・・・?昨日の夕食を食べた事すら覚えていない…。自分が買ったことに気付かず、同じものをいくつも買ってしまう…Sign of Illness実はこれが、老化による「もの忘れ」と病的なもの忘れ「痴呆」との分かれ目なんです。老化による「もの忘れ」には自覚がありますが、しかし、「痴呆」には自覚がありません。ではなぜ病的なもの忘れ「痴呆」が起こるのでしょう?Sign of Illnessもの忘れに加えて、手にしびれがある…。これは、脳血管性の痴呆です。かくれ脳梗塞などが原因で、脳の機能の一部が損なわれることで引き起こされます。この場合、「痴呆」の症状は、かくれ脳梗塞を起こすたびに、ひどくなっていきます。Sign of Illnessかくれ脳梗塞は、脳の末端の細い血管が詰まって、そこから先に血液が送られなくなり脳の組織のごく一部が死んでしまう病気です。そのため、脳の機能が少しずつ損なわれます。人の名前は思い出せないのに、計算能力は衰えず、難しい計算ができる、といった「まだら痴呆」が起こることもあります。これは、血管が詰まった場所によって、失われる機能が違うからです。Sign of Illness50〜60歳以上の男性の発症が多いのも特徴です。「痴呆」を起こすもう一つの代表的な病気がアルツハイマー病。これは、脳全体が徐々に萎縮していく病気ですが、残念ながら、その原因は未だ解明されていません。Sign of Illnessごらんください。どちらも70歳の男性の脳。左の正常な脳と比べると、右のアルツハイマー病の脳は萎縮しているため黒い隙間が目立ちます。特に側頭葉を比べると、その違いが明らかです。症状が進むと、突然怒り出すといった性格の変化が起こったり・・・今日が何月何日か分からなくなる、通いなれた場所なのに迷ってしまうなどの症状が進み、ついには、徘徊などを起こすこともあります。アルツハイマー病は、徐々に、日常生活に支障をきたすようになります。いったい何故、脳は萎縮するのでしょう?そこには、Sign of Illness脳が活動する時に作られる、老廃物、アミロイドβというたんぱく質が関係していると考えられています。脳が正常であれば、このアミロイドβは、作られてもいずれ自然と解消されていきます。ところが、アルツハイマー病になると、なぜか、アミロイドβが脳の中に溜まっていくのです。アルツハイマー病の脳細胞を染色すると、このような染みがあるのが分かります。これは、アミロイドβが沈着したもので、老人斑と呼ばれます。老人斑は、Sign of Illness実は神経毒の一種で、脳の活動を支える神経細胞を壊していきます。ただし、老化によるもの忘れの場合にもこの老人斑は現われます。しかし、その場合、老人斑が現れるのは記憶を作る海馬だけ。一方、アルツハイマー病では、老人斑は脳全体に広がります。この老人斑によって、細胞が破壊され、脳全体が萎縮して行くのです。Sign of IllnessPET検査で脳の活動状態を色分けしてみると、正常な場合は、活発に活動している赤い部分が目立ちます。しかし、アルツハイマー病の脳は、ほとんど活動していないことが分かります。アルツハイマー病の末期になると、脳全体が萎縮するため、身体機能が低下し、寝たきりになります。アルツハイマー病は65歳以上、特に女性の発症が多い病気です。老化によるもの忘れと、何か病気が隠れたもの忘れには、大きな違いがあります!

Sign of Illness
EXAMINATION 検査

Self Medication

Self Medication

FRONTIER 最先端技術
The serious痴呆を起こす病気、アルツハイマー病は、未だすべてが解明されておらず、完治が難しい病気です。しかし、国立長寿医療センターの田平武教授らのグループが、その根本治療を可能とするワクチンを開発、現在、実用化に向けて研究中です。どうしてワクチンで、そんな夢のようなことが実現できるのでしょうか?The seriousアルツハイマー病で、脳が萎縮するのは、老人斑が脳全体に広がって脳の神経細胞を壊すからでしたね。その老人斑の正体は、脳が活動するときに作られる老廃物、アミロイドβというたんぱく質です。これを取り除くため、The serious人体に無害なウイルスに、アミロイドβの遺伝子を組み込みます。これがワクチンとなります。これを口から飲み込むと・・・十二指腸でアミロイドβが大量に作られ始めるのです。すると、体内で免疫反応が起こり、アミロイドβを排除するための物質、抗体が作られますThe seriousこの抗体が、脳へと移動し溜まったアミロイドβを排除するというわけです。アルツハイマー病のネズミにワクチンを与えると…およそ3ヶ月後には、沈着していたアミロイドβの量が減り始め、その効果は半年も続くことがわかりました。つまり、このワクチンが、アルツハイマー病の治療に効果があることが確認されたのです。現在は、まだ動物実験の段階。これから、人体への安全性や効果などを確かめなければなりません。アルツハイマー病が克服できる、そんな日がやってくるかもしれません

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