今週のドクターは、 日本医科大学 第3内科 檀 和夫先生
【略歴】
日本医科大学第3内科に移り、血液内科創設に携わる
【ドクターの一言】 科学的根拠と適確な技術のもとで、患者さんが納得のいく説明と治療、そして全てのことに最善を尽くし、自分の行為に責任と誇りを持つプロフェッショナルとしての意識が医療には不可欠です。
白血病を完治させる治療法、「骨髄移植」。しかし、骨髄を提供するドナーの数が少ないのが現状です。その理由のひとつがドナーの負担が重いこと。そこで、考えられたのが、「末梢血 幹細胞移植」これまでは、ドナーには全身麻酔をして、腰の骨から専用の針を左右数カ所に刺し、骨髄液を採取していました。新しく考えられたのは、透析のように血液から造血幹細胞を集めるという方法です。これなら、全身麻酔を行わないため、ドナーへの負担が少なくてすみます。そして、患者さんにも朗報。骨髄移植を受ける患者さんへの負担を軽くするのが「ミニ移植」。「ミニ移植」は移植前に行なう抗がん剤の量を少なくして、白血球の一つ「リンパ球」の免疫作用を利用して白血病細胞を攻撃するという方法です。往来の骨髄移植は大量の抗がん剤を投与し、白血病細胞を破壊して、骨髄の中をからっぽにしてから、ドナーの造血幹細胞を移植します。最近の研究で、白血病細胞を死滅させる働きは、抗がん剤だけでなくリンパ球の働きも大きいことが分かってきました。ミニ移植ではドナーから移植された骨髄液のなかにあるリンパ球が白血病細胞を攻撃します。移植前に白血病細胞を攻撃するために使用する抗がん剤の量を減らし、患者さんへの負担が軽減されるのです。「骨髄移植」と同じ方法で移植。ドナーの骨髄液にいるリンパ球が白血病細胞を異物として認識し、こうげきを始めます。1〜2ヵ月後、患者さんの造血幹細胞は徐々にドナーの造血幹細胞と入れ替わり、正常な働きをします。往来の骨髄移植は抗がん剤の副作用が強く、高齢者などは移植を受けることができませんでした。抗がん剤による副作用が少ない「ミニ移植」は高齢者などの人にも移植を受ける道を開いた画期的な治療法なのです。