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2004年1月11日
テーマは、『冬の皮膚のトラブル』


今週のドクター 今週のドクターは、
桑原皮フ科クリニック
桑原 京介先生



【略歴】

日本大学医学部大学院卒。
横浜社会保険病院勤務を経て、
'80年西東京市に皮膚科を開業。
本年より白斑、乾癬に有効と思われるエキシマレーザーを本邦で初めて導入しエキシマ白斑センターを設立

【ドクターの一言】
引き出しの沢山有る医療機関を目指しています。言い換えるならば患者さんの希望に沿うのはもちろんのこと病気に対して多角的にアプローチ出来る体制、構築出来る可能性を持ち続けたいと思います。


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

いよいよ冬本番。寒さが激しくなると肌に起こるもの。たとえば、正体不明の痒み。不快なカサカサ肌ザラザラ肌。皆さん、経験はありませんか?乾燥してしまうと...。肌のきめが失われたり、白く粉を吹いたようになったり・・・。あなたの肌は荒れ果ててしまいます!仕方がない、年のせいだわと諦めていらっしゃる方、多いんじゃありませんか?乾燥してしまった冬の肌には、一体どんな事が起きているのか、皆さんはご存知でしょうか?すね全体に刻み込まれた無数のひび割れ!これも乾燥の仕業!!果たして、冬でも健康で瑞々しい肌を保つ方法はあるのか?カサカサ肌には、どんな治療法があるのか?冬の皮膚に起こる様々なトラブル。そのメカニズムから最新の治療法まで徹底解明!本日の健康DNAはあなたのお肌に忍び寄る恐怖、冬の皮膚のトラブルです!
冬場に下がるのは気温ばかりとは限りません、夏に比べて、湿度もはるかに低くなっているのです。でも実際に、冬の湿度はどのくらい低くなってしまうのでしょうか?冬場の平均湿度は40から60%。夏場の60から80%と比べると、かなり乾燥している事が分かります。
更に、暖房が効いた部屋では、湿度は20%以下!!この乾燥こそ、皮膚のトラブル最大の原因!乾燥が始まるとカサカサになり、肌のきめも失われます。この状態を放っておくと...やがて、ひどいかゆみを引き起こす、 「皮脂欠乏性湿疹」という病気を発症します。更に悪化すると、かゆみの上に痛みを伴う、「貨幣状湿疹」に至り、場合によっては手の平全体が乾燥する、「進行性指掌角皮症」という病気まで招くのです。でも何故、乾燥は皮膚のトラブルにつながるのでしょう?
私たち人間の体は70%が水分。その大切な水分が身体から失われないように、保護してくれているものが何か、皆さんはご存知ですか?


それは皮膚の一番外側、角質層と呼ばれる僅か10から20ミクロンの薄い膜。この角質層の主な役割とは、身体からの水分の蒸発を防ぐことです。そして、様々な有害物質の侵入を防ぐバリアの働きもしています。ではこの角質層は、どんなものなのでしょう?私達の皮膚は、細胞分裂を繰り返しながら、常に生まれ変わっています。新しい細胞によって古い細胞が押し上げられ、死んだ細胞が層となっているのが角質層。角質は、1日にほぼ1層ずつ垢となって剥がれおち、約25日かけて、皮膚全体が生まれ変わります。実は、この角質層が、皮膚の水分を保つ大きな役割を果たしています。角質細胞の一つ一つは、お互いの間を埋める「セラミド」という脂肪によって固定されています。「セラミド」は層になっており、水分をその間に挟んでいます。こうして水分を常に保持する仕組みになっています。「セラミド」によって保たれている水分は、尿素と結合し、皮膚に柔軟性と滑らかさを与える元になります。尿素には一度水分を捕まえると放さないという性質があります。
そして更に、皮膚の表面にも水分の蒸発を防ぐ物質があります!
それは皆さんもご存知の皮脂!元々、皮膚には、皮脂を分泌する皮脂腺と汗を分泌する汗腺が備わっています。そして皮脂は汗の水分と混じりあうと、クリーム状の膜と成って角質の表面を覆います。この皮脂膜こそが、皮膚の角質から水分が失われるのを防いでいます。更に皮脂膜は、皮膚の表面を弱酸性に保ち、雑菌の繁殖も防いでいます。こうして様々な物質が組み合わさり、皮膚の潤いは一定に保たれているのです。なのに、どうして皮膚の水分は失われ、乾燥が起きるのでしょう?その最大の原因。それは老化です。20歳から25歳以後は年齢を重ねると共に、様々な原因で肌からは瑞々しさが失われて行きます。最も大きく関わっているのが、皮脂の減少です。皮脂腺は20歳から25歳で発達のピークを迎えた後、次第に衰え始め、皮脂の分泌も低下して行きます。その結果、皮膚から、水分が蒸発するのを防ぐ皮脂膜も、次第に作られにくくなってしまうわけです。
この皮脂の減少こそ、皮膚の乾燥を引き起こす最大の引き金!また、冬場は汗をかく量も減少するため、皮脂膜はますます薄くなってしまいます。この状態で、外気の湿度が50%を切ると、肌の水分は蒸発して失われます。こうして、皮膚の乾燥が起こります。しかし、皮膚を乾燥させるのは低温・低湿だけではありません。カサカサ皮膚の原因の70%を占めているもの、それは日常の水仕事!すでに皆さんもご存知なのでは?お湯や洗剤の使いすぎによって皮膚の水分を保つために大切な皮脂や角質が洗い落とされてしまうのです。では水分が失われると、皮膚では何が起きるのでしょう?健康な皮膚には、セラミドがぎっしり詰まっているため、皮膚に隙間がなく、肌のきめも保たれています。しかし、セラミドの水分が失われると、角質の間に隙間ができて、そこからさらに水分が失われます。角質もはがれやすくなります。乾燥した肌がカサカサ、ザラザラしているのはこうして角質が剥がれやすくなってしまったため。更に、角質が剥がれてしまうと、白く粉を吹いた状態になり、肌のきめも失われてしまいます。では、乾燥肌につきものの痒みはどうして起こるのでしょう?乾燥した肌は、角質が剥がれかけると共に、実は浅いひび割れを起しています。表皮と真皮の境目には、痒みを感じる感覚受容器があります。浅いひび割れがあると、この感覚受容器が刺激を受け易くなり、痒みを感じるのです。

ひどくなると「皮脂欠乏性湿疹」となり、皮膚の乾燥とひび割れは見た目に分かるまでに進行。また、夜中に目が覚めるほどの痒みが襲ってきます。こちらは「貨幣状湿疹」を起した皮膚。患部を掻いたため、皮膚から雑菌が入り、炎症や化膿といつた症状に陥ったものです。また、見た目には特に異常がないのに痒みが起こる。そんな経験をお持ちの方はいらっしゃいませんか?これも実は乾燥によってできた見えないひびわれが原因。特に高齢者によく見られ、「老人性皮膚掻痒症」と呼ばれています。ところで、乾燥による痒みが起こり易い場所があることご存知でしょうか?乾燥による痒みがおこりやすいかどうか?それは皮脂の分泌量によって決まります。身体の中で皮脂の分泌量が最も多いのは額と胸反対に少ないのは足特にすねは、身体全体の皮脂分泌量の僅か5%以下。また、腕も皮脂の分泌量が少ない部分。特に手のひらには、皮脂腺がありません。その結果、冬場に増えるのが「主婦湿疹」。水仕事を繰り返して行う事が原因であるため、この名前で呼ばれています。その大きな特徴は、あかぎれや肌の傷。そして湿疹。水仕事で頻繁に使われる、利き手の指3本に出やすいのも特徴です。これをウッカリ放置しておくと、「進行性指掌角皮症」を招く危険性が出てきます。手のひら全体が乾燥して指紋が無くなったり、皮膚がカチカチになるのが特徴。このように、「たかが肌の乾燥」と放っておくと、厄介な病気を招く危険性あり!注意しましょう。

EXAMINATION 検査

EXAMINATION 検査

FRONTIER 最先端技術

皆さんはある日突然、皮膚が白く変化する「尋常性白斑」という病気かあるのをご存知でしょうか?体のあちこちで、皮膚の色が白く抜けてしまうため、心理的な重荷となることも少なくありません。
本来、皮膚の肌色を作り出す成分、メラニン色素は、「メラノサイト」という細胞によって作られています。「尋常性白斑」は、何らかの理由で「メラノサイト」がメラニン色素を作らなくなってしまうために起こると考えられています。
これまで、白斑に対する治療としては、ビタミンDやステロイドの軟膏を塗る方法、紫外線を患部に照射して、メラノサイトの活動を活発にして皮膚の色素を再生させる、といった方法が採られてきました。とはいえ、どちらも、白斑の確実な治療法とはいえませんでした。
現在、新しい白斑の治療法がドイツを中心に、世界で注目を集めています。それが「エキシマレーザー療法」。この治療では、様々なガスを圧縮して作られる特殊な「エキシマレーザー」を患部に照射します。早速、実際の治療の様子をご覧にいれましょう。治療の目安は週三回です。白斑にレーザーを軽く照射します。治療回数は紫外線と比べると1/10.1回およそ1秒〜3秒と、照射時間が短いのも特徴です。欧米のデータでは、70%から80%の患者さんに関して、色素の再生が確認されています。
昨年、2003年10月からは日本にも導入されており、現在、白斑の最新治療として「エキシマレーザー」は大きな注目を集めているのです。

FRONTIER 最先端技術
皮脂の不足によって起きる、冬場の皮膚の乾燥や痒み。
それらを防ぐには、日常生活でどんなことに気をつければよいのでしょう?冬の皮膚を乾燥から守るためのちょっとした工夫をご紹介しましょう。
冬場、皮膚の乾燥を招きやすい水仕事。素手のまま水仕事をしたり、冷たいからと、熱いお湯を使っているとしたら要注意!熱いお湯や洗剤で大切な皮脂の膜や角質が洗い落とされてしまいますよ。

面倒でも水仕事をする際には必ずビニールの手袋を使いましょう。
但し、手袋をしていても、皮膚がほてると痒みを招く場合あり。使うお湯は三十度前後のぬるま湯にしましょう。

次はお風呂場での工夫。身体を洗うに気持ちがいいからと、ナイロン製のタオルでゴシゴシ洗っているあなた。それはかなりのイエローカードです!
ナイロンタオルは水仕事同様、角質層を剥がしてしまいます。普通の身体の汚れは、スポンジで軽く洗うだけで十分落とせます。更に、もしあなたが高齢で皮膚の乾燥も進んでいるとしたら、手で石鹸の泡を作って、身体を洗うことをオススメします。更に、風呂上りに痒みを感じやすい手と足に関してはこんな一工夫も。

お風呂から上がる直前、ぬるめのシャワーなどを使って部分的に冷やせば、肌のほてりを抑え、痒みが起こるのを防ぐことが出来ます。
また、入浴の直後、皮膚がまだ水分を保っている間に、保湿クリームを塗るのも効果的です。最後は睡眠中の工夫。皮膚に痒みが起きると、睡眠中はどうしても、無意識のうちに掻いてしまいがちですよね。その結果、知らないうちに皮膚を強く引っ掻いて気づいたら炎症を起していた!なんて事になったら一大事です。
その予防には、寝る時、必ず木綿の手袋をする事をおすすめします。手袋を着用していれば、もし引っ掻いても、刺激が和らぐというわけです。ただでさえ、皮膚を守る水分や、皮脂のバリアが弱くなっている冬場。皮膚をイタズラに傷つけないようにする。その工夫が大切です。

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