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地球バス紀行

毎週火曜22時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2013年2月19日 O.A.

#96 ジョホールバル発マラッカ海峡北上

マレーシア

地図

今回の舞台はマレーシア。ジョホールバルを出発し、世界遺産・マラッカを目指します。インド洋と太平洋を結ぶマラッカ海峡は世界の文化が出会った海の道。さまざまな民族が暮らしています。宗教も言葉も違う民族が一つの街に暮らしているマレーシアの街。そこでは様々な出会いが待っていました!

ジョホールバル
気温34℃の暑い街を歩いていると、なにやらたくさんの屋台。電飾や花輪、お菓子が売られている。声をかけてくれたおじさんに話を聞くと、間もなくディーパバリというインドの信念を祝うお祭りなので、インド系住民のための市が開かれているとのこと。そういえば色とりどりのサリーやヒンズーの神様の額縁のお店がいっぱい。マレーシアは中華系やポルトガル系だけじゃなくてインド系の人も多く暮らしているんですね。ジョホールバルの街でどうしても行きたかった場所が「ランキンスタジアム」。サッカーファンならだれもが知っている、サッカー日本代表がワールドカップ本選出場を決めたあの1997年「ジョホールバルの歓喜」のスタジアムです!市内バスに乗ってスタジアムにつくと、今日試合はないみたいで静か。たまたま出てきた従業員さんに声をかけたら、誰もいないからと中に入れてくれました。そして観客席ではなくピッチへ!あのフィールドに、立ってしまいました…。この街からマラッカ海峡に面した町、ポンティアンに向かうためにバスターミナルへ行くのですが…、目的のバスを待つ乗客がたくさん!一度では乗り切れず、満員御礼となったバスは多くのお客さんを残して出発。残された人々は暴れたり叫んだりすることなく次のバスを待っていました。のんびりしてるというか、辛抱強いというか…。

ポンティアン
次に来たバスになんとか乗車できたけど、ぎゅうぎゅう詰め。なんでもシンガポールで働いてた人たちが週末、みんな家に帰るから混雑するんだとか。立ったまま到着したポンティアンの街。マラッカ海峡が見られる海辺をめざしていると、イスラム教式の結婚式を挙げたばかりの新婚さんが写真撮影をしていました。とっても幸せそうだけど、奥さんのほうが主導権を握ってる感じ。奥さんの尻に敷かれそうな旦那さんは、宗教なんか関係なさそうです。マラッカ海峡まで出てみましたが、あいにく曇り。きれいに沈む夕日は見られませんでした。海が見えるレストランで、夕暮れを見ながらごはんを食べているうちに日暮れ。今夜の宿を探したのですが、どこも満室!どうやら週末でなかなか空き部屋がありません。4件回ってやっと空き部屋を確保。なんとか泊まることができました。翌朝、朝食をとるために入ったのは、中国系のワンタン屋台。朝からアツアツをいただきました。

ムアール
最終目的地、マラッカへ行くには途中乗り継がなくてはいけません。というわけで中継地点のムアールまでバスに乗りました。バスを降りて次のバスが出るまで街を散策。赤道に近いマレーシアの日差しがあまりにもきついので、帽子を買おうと思い立ち、帽子屋さんを探すのですが、なかなか見つかりません。道を尋ねた女性がとても親切で、一緒に帽子屋探しに右往左往。いよいよお店を見つけたら、今度は帽子を選んでくれてなおかつ値切り交渉まで!ところどころで出会うマレーシアの人たち、本当に親切です。ムアールを後にし、最終目的地マラッカ行きのバスで出会った男性は、バスに乗っているのに「トラック運転手の仕事の途中」と言います。聞けば道の途中でトラックがガス欠、ガソリンを調達してトラックに戻る途中だとか!彼が下車したその先には、路肩に放置されたトラックが主人の帰りを待っていました。

マラッカ
マラッカの街に到着。市内バスに乗り換えて旧市街へ。世界遺産にも登録されているこの街は、その昔は貿易港として、洋の東西を結んでいた要衝の街。中国からの品物、ヨーロッパからの品物がここに集まり、売り買いされ、それぞれの国へ運ばれました。そのためここには、地元のマレー人のほかに中華系やポルトガル系インド系など、様々な民族と宗教が共存してきました。そしてそれらの文化が融合してマレーシアならではの文化も生まれました。街はいまでも様々なものを扱う店が多く並び、中でもアンティークのお店が多くあります。一件のアンティークショップで出会った店主のおじさんは、古いタイルを見せてくれてました「100年以上も前に建てられた家に使っていたタイルだよ。」裏にはMADE IN JAPANと刻印が。おじさんはそのタイルをプレゼントしてくれました。100年経って訪れた日本人の手に渡りました。この街には「ハーモニーストリート」と呼ばれる通りがあります。わずか200mの通りにヒンズー教、イスラム教、中華系の仏教の寺院が点在します。街の中心にはキリスト教会。いろんな文化が仲良く、まさにハーモニーを奏でているみたい。これが世界遺産・マラッカの街。最後にこの街で一番見晴らしのいいセントポールの丘に登りました。ここから眺めるマラッカ海峡に沈む夕日。世界中の船乗りたちが魅せられたのは、おおらかであったかい、この色だったのかもしれません。シンガポールとの国境・ジョホールバルを出発し、マラッカまでのバスの旅。マラッカ海峡の沿岸は、いくつもの文化が溶け合う不思議な場所。人種を超え、民族を超え、何世紀もかけて育まれたハーモニー。マレーシア、懐の深い国でした。