毎週火曜22時オンエア
人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。
今回はパリを出発し、フランス西部を目指します。 途中立ち寄るのは、ノルマンディー地方の世界遺産モン・サン・ミッシェル。その後は潮風が吹くブルターニュの海岸線を駆け抜けます。 最終目的地は、かつて伝説の海賊たちが闊歩したと言われる、港町サン・マロです。
パリ
旅のふりだしは、絵画のような街・パリ。
エッフェル塔やセーヌ川に別れを告げて、さっそくバス旅に出発します。
まずは海のピラミッドと呼ばれるモン・サン・ミッシェルに向かうことにしました。
ところがバスターミナルの案内所に尋ねたところ、モン・サン・ミッシェル行きの直通バスがないことが判明。
一旦レンヌという町まで行き、そこでバスを乗り換えることにしました。
レンヌ
パリからおよそ7時間。レンヌに到着したころには、すっかり日が暮れていました。
乗り換えのバスも終わっていたため、仕方なくユースホステルで一泊。
翌日、再びバスに乗り、モン・サン・ミッシェルへ出発します。
人気の観光地だけあって、車内は満席。乗り合わせた学生の話によると、今日は潮の満ち引きがとても激しい日で、特別なモン・サン・ミッシェルが見られるらしいのです。
モン・サン・ミッシェル
レンヌから1時間半。水平線の向こうにモン・サン・ミッシェルのシルエットが現われました。
海上にそびえ立つ姿はまさしく「海のピラミッド」です。
モン・サン・ミッシェルの島に登り、高台から下を眺めると、引潮で海が干上がってゆく場面を目撃できました。
さらに数時間後、日が落ちて島の外に出ようとすると、今度はなんと出口が水浸しになっているではありませんか。
どうやら潮が満ち、昼間と打って変わって深い海に変わってしまったようなのです。
ようやく島の外に出ると、ライトアップされたモン・サン・ミッシェルの幻想的な姿がありました。
昼と夜、そして潮の満ち引きのおかげで、モン・サン・ミッシェルの全く違う二つの表情を楽しむことができました。
カンカル
翌日。地元の人にカキで有名なカンカルという町があると聞き、途中下車してみることにしました。
海沿いには噂通り、カキの露店がずらりと並んでいます。早速1ダース購入し、その場で頬張りました。
プリプリとした食感とほのかに香る潮の風味が絶品です。
その後、地元の人の案内でカキの養殖場を見学させてもらうことになりました。
大きなトラクターに乗り向かった先は、一面の干潟に作られた巨大な養殖場。
カンカルはヨーロッパ一干満の差が激しい所なんだそうです。潮の満ち引きによって育まれたカンカルのカキ。
美味しさの理由がわかりました。
サン・マロ
カンカルからおよそ1時間、港町サン・マロに到着。
バスから降りると、港に停泊する大きな帆船を見つけました。
船上には海賊の格好をした人がいます。聞けばサン・マロは、かつてフランスの海を守るために特別に許可された武装集団、コルセールで栄えた町なんだそうです。
海の勇者、コルセールに思いを馳せながら町を歩きます。夜の帳が降りたころ、旅の締めくくりに酒場へ行ってみることにしました。
そこは、ブルターニュの海を愛する男たちの宴で夜通し賑わっていました。